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カテゴリ: Book Review
長沢樹の名前はどこかで聞いたことがあるな、程度の感じで本作が初読。しかし…私の好きな作風にまた出会ってしまった。

主人公は映像制作の専門学校に通う夏目行人。ある日渋谷駅近くで不思議な少女・香砂に出会う。彼女曰く、自分は武者修行中の身で、人に宿る”悪意”を退治しているのだとか。悪意が人に憑依するとその人を犯罪行為に走らせる。それを防ごうとしているのだ、と。折しも渋谷では連続暴行事件が発生中。しかしそんなオカルトめいた話、いきなり信じられるだろうか?

勿論、これら事件に関しては警察も警戒を高めている。中でも、防犯カメラの映像解析だけで(つまり、足で稼ぐことなく)犯人を挙げた実績を持つ女性警官・水瀬は、とある独自の視点から事件現場近辺に常に香砂がいることを突き止める。が、彼女を襲う謎の体調異変・記憶喪失。彼女は複雑な家庭に育った過去を持つのだが、それと関連があるのだろうか?

一方、夏目は学校の「夏課題」(いわゆる卒業制作)にも取り組まなければならない身。グループではなく単独での制作を決め、他班の制作状況のドキュメントを作ることにする。その中で出会った会田という男に影響され、徐々に自分の作りたいものを見失っていく。

という3本立てで話が進んでいく。特に香砂のパートは、彼女の持つ能力は一体何なのか、ということが伏せられたまま、ただ淡々と彼女の主張と起きた出来事だけで構成されている。ミステリなので、ミステリアスなのはいいが、オカルトが過ぎると何でもアリになってしまい、ミステリが崩壊する感じがして、危なっかしい(実際、香砂がやっていることは危なっかしいのだが)し、「本当に大丈夫か?」と思ってしまった。

しかし、終盤に至ってこれら3つの流れが合流し、できるだけ合理的・論理的・科学的に香砂の能力について検証しようとする夏目のとある実験的試みに辿り着く。物語はきちんと着地する。こんな複雑に絡んだ3本の糸をどうやって編み出し、どうやって解き、どうやって合流させたのか、作者の頭の中が見てみたい。

それだけではなく、夏目をはじめとする学生たちの「心の成長」もきちんと描かれていて、青春小説としてもかなり質の高い作品になっていると思う。全体としてかなり面白かった。

以下、印象的だった箇所の引用。

「それでもこっちは信念持ってやってるし、それなりに研究も苦労もしてるってのに、努力も何もしてない奴が前走ってる人の足引っ張るって、もう最低」

ただ、本能が、ここは一度壊れておけと叫んでいた。壊れなければ、再構築はないと。





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Last updated  2019.08.27 08:34:42
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