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カテゴリ: Book Review
「15時17分、パリ行き」(アンソニー・サドラー、アレク・スカラトス、スペンサー・ストーン、ジェフリー・E・スターン、ハヤカワ文庫NF)を読む。

例えばTVCMや映画館での上映前のCMなどで「この映画、面白そう」と思っても、結局観ないという作品が多いのはある意味不思議だ。この小説を図書館の書架で見つけたとき「ああ、あの時ちょっと観たいと思った映画の…」と思ったのは、TVCMの印象が残っていたからだ。因みに私はタイトルだけCMで見たときミステリかと思った。

2015年はフランスにとって受難の年だった。1月には風刺週刊誌社シャルリー・エブドがテロリストに襲撃され、11月にはパリ同時多発テロが起きた。本作はそれらに挟まれた8月、アムステルダムからパリに向かう高速鉄道内で発生し、たまたま乗り合わせていた3人のアメリカ人(うち2人は軍人)によって未遂に防がれたテロ事件を描いている。

一夜にして英雄となった3人は幼少期を共に過ごし、長じて別々の道を歩み始めるが、ひょんなことから一緒にヨーロッパ旅行をすることになる。その旅程で会う人会う人に「パリには行かない方がいい」と言われるにも関わらず(それは危険だという意味ではなく、フランス語を話さない者に対して冷たいとか、大して見るものはないとかいう理由だ)、結局パリ行きを決め、テロリストと同じ列車に乗ってしまう。そこでテロリストと対決し結果制圧するのだが、その対決という極限状況における人間の生理的反応などの描写も「本人談」なので生々しく迫真的でスリリングで興味深い。

それだけでなく、3人の生い立ちからテトリスと側の言い分、事件後に3人を待ち受けていた新たな運命など、ひとつの事件が如何に人を変えてしまうのか(あるいは変えないのか)といったところも面白い。元々幼少期に3人を結びつけたのはエアガンなどを使った「戦争ごっこ」や戦争映画、学校では他の教科に興味はなかったが、「戦争」を扱っている「歴史」だけは好きで、歴史の授業に登場した戦跡を訪れることを目的に件のヨーロッパ旅行を計画し、おまけに3人のうち2人は軍人になっているという流れがあり、「歴史」が本作を読み解くひとつのキーポイントになっているのも面白い。

その他にも、テロを防げたのはホントに様々な偶然の一致が重なったからだとされている。本書ではそれを「神」の差配だとしている。実際ここまで偶然が重なると「ポアソン・クランピング論者」の私も、単なる偶然と安易に思っていいのかどうか判らないが…。

因みに、スティーヴン・キングの「トウモロコシ畑の子供たち」の名前がチラっと登場する。

以下、印象的だった箇所の引用。

大使館でアレクたちはCIAにも会ったが、採用条件の中に容姿の項目が絶対に含まれているとアレクは思った。そうでなければ、ふたりにひとりの割合で若い美人がいるわけがない。

これは個人の信条の問題だ―シャンパンがただで飲めるなら、何はなくとも飲むことだ。

人は身近に感じる重要な場所を訪れようとしない。





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Last updated  2019.11.13 15:49:23
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