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カテゴリ: Book Review
「増補改訂新装版 COMPLETE STEPHEN KING」(奥澤成樹・風間賢二編著、白夜書房)を読む。

この年末年始の「課題図書」の2冊目をようやく読了。キング作品の翻訳も多く手掛けている風間氏が編著に携わっており、内容的にもボリューム的にも読みごたえの非常にある1冊(図書館で借りて呼んだのだが、手元に置いておきたいくらいだ)。

内容は、いろんなジャンルの人が語るキングの作家論、キングのインタビュー2編、長編から中短編、映画やTVなどの映像化作品の解説、その他資料の紹介という感じで、分析性・網羅性どちらの観点からも申し分ない。

作家論については、キング翻訳でお馴染みの深町眞理子氏から荒俣宏氏に至るまで様々なジャンルの人がそれぞれの視点で分析している。まぁ中には知識をひけらかしまくっているだけの分析とは呼べない代物も混じっているが、これだけの分析がなされるということ自体、キングが「文学」であり時代の寵児であることの何よりの証左である。キングの小説の解説については、個々の作品の分析もさることながら、作品間のつながりを(単に登場人物が…という話ではなく)同じテーマを扱った作品群としてひとつの連なりとして分析している視点が鋭い。特に短編は「キャリー」以前に書かれたものも多く、後の長編のベースになっていたり、キングの変わらぬ興味の対象や描きたいテーマを詳細に知るキーになっていたりするものが多く(その割に私は読むとすぐ忘れてしまうのだが…)、初期の短編をまた改めて読みたいという気持ちにさせられた。

で、本書の凄いところはここから。映画やTVなどの映像化作品の解説では、あくまで小説とは別個の作品として、映像化の経緯(映画化権をどこが買ったか等)から、具体的な映画化の手順、映画としての完成度、原作忠実性、興行成績などをあくまで「映画の専門家」の視点で分析している。勿論、原作忠実度が高ければいいというわけではなく、例えばキング映画の金字塔「スタンド・バイ・ミー」は、プロモーション時点からホラーのキング原作であることをひた隠しに隠し、タイトルさえ元の小説から変えた結果が大ヒットになった。これは勿論監督ロブ・ライナーの手腕によるところが大きいのだが。

失敗作の代表例は言わずもがなの「シャイニング」。でもキング映画の多くは「映画としてはかなりいいのに興行的には何故か失敗」と「そもそも映画としてもボロボロ」のどちらかという感じ。あと、読んでいて「なるほど」と思ったのはシュワルツェネッガー主演の「バトルランナー」が、原作忠実度がかなり低くて単なるシュワちゃんのバイオレンス・ムービーに成り下がっている(私も観てそう思った)にもかかわらず、それはそれで(それなりにだが)面白いという話。ストーリーやキャラクタの忠実度は低いんだけど、キング原作の「空気感」が映像化されてるという指摘には思わず首肯してしまった。

この映画解説の章には各作品の映像の数カットの写真が掲載されている(それは嬉しい)のだが、白黒の画質の荒い写真で特にキャプションもないので判りにくいのが残念。

それ以外では、巻頭にある原作本の表紙のカラー写真一覧、資料編にはキング関連書籍、通信紙、稀少本、タビサ夫人の作品、「キャリー」のミュージカル、「霧」のコンピュータゲーム、カレンダー、カセットブック、はたまたキング出演のアメックスのTVCM、キング作品における重要地名(実在・架空)をプロットした地図などなど資料性とマニア性を十分満たすだけの情報が盛り込まれている(だから手元に欲しいのだ)。

そういえばキングの筆名がリチャード・バックマンになった経緯って、「江戸川コナン」の名前の誕生とほとんど同じだそうで。あと、ジョン・スウィゼンなるペンネームを1作だけに使ったことも。

さて、では印象的だった箇所の引用を幾つか。

”子供たちよ、怖がりなさい。だって怖がることがたくさんあるんだから。恐怖心の否定は良くないことだよ。現実を否定するってことがいちばん恐ろしいことなんだ。(中略)とりわけ、暗闇の中を歩かなければならない時、自らも盲目になってしまってはいけない。無知は無邪気なんかではなくて、ただ愚かさと怯懦にすぎないんだ。だから手をつないで、夜でも目が見えるように期待しよう、そして闇の中のお話に耳を傾けよう。”
(タビサ夫人が語るキングの作品の中にある教訓)

”Hope Springs Eternal”(春は希望の泉)
(「刑務所のリタ・ヘイワース」のサブタイトル)

「長編小説は永く続く情事のようなものであり、短編は暗がりで見知らぬ人から受けるキスのようなものだ」
(短編集「骸骨乗組員」の序文より)


(下の写真右側が本書)










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Last updated  2020.01.08 09:22:31
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