山形達也85歳の心理学

山形達也85歳の心理学

2019.01.15
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カテゴリ: AI
昨日は、久しぶりに東工大の頃の研究室の学生たちに会って、食事をしながらおしゃべりをしてきました。皆、いまは大学にいたり会社の研究所などで働いている研究者なのです。



 昨日会った人たちは現役の研究者として、コンピュータがどんどん進歩して、研究の背景を調べるのに大いに役立つどころか、いまやAIに進化してそのAIに研究が支配される時代になってきたというのです。

 「どういう病気のどういうところが治療研究の良い対象になりますか」と訊くと「これこれです」と答え、「そのように研究を進めたら良いですか」と尋ねると「ここを、こうやって攻めると良いです」と教えてくれる時代になったということです。

 AIが研究のターゲットを指示しても、AI自身はそれを確かめる実験はできないので、研究の仕方を研究者に指令して研究者はその下請けになってしまう時代が近いみたいです。

 以前わたしは「研究者ほど素敵な商売はない」 と若い人たちに向かって言い続けていました。例えばいい例として、音楽で一流になる( あるいは人並みになるのでも) 毎日の長時間の鍛錬を重ねないといけないことを例に挙げることができます。私自身、 クラリネットを吹いて大学のオーケストラにいましたし、 その後アメリカにいたときはフレンチホルンを習いました、オペラを聴いているうちに大好きになりとうとう自分でも先生について習って歌うようになりました。 それでも、もちろん私を含めて、ほとんどの人は一流にはとてもなれません。

 一方研究者には、その研究領域に入ると決めた瞬間、 すべての先人の業績はその人の目の前にすべてが揃っているのです(つまり研究は論文という形で出版されて、誰でもそれにアクセスすることができます) 。これには先輩、後輩の区別はないのですよ。 もちろん初心者には最初は大変ですが数ヶ月で同じ土俵に立ってい るのです。 そして、研究の成果をインターナショナルの雑誌に投稿して採用されるというのは、 その仕事が新しいものであることですから、 その人はその分野では最先端の研究者なのですよ。つまり研究者は誰でもいとも簡単に、研究の第一線に立つことができるのです。他のところでは、こうはいきませんよね。

 でも、 それらの先人たちの研究成果の資料がコンピュータの進歩のおかげで使いやすくなるどころか、AIが「 あれをこうしろ」 と研究者に指示を出すような時代になったら、研究者が一番いいなん て言えなくなりますね。 私は自分が集めて読んだ文献の整理にいつも悩まされていたので、 PCの発達のおかげでそれが整理できるようになり、 さらに全てがインターネットで検索できる時代の良さのおかげで、 私自身は研究者生命を77歳まで長引かせることができたと思っていますが、 時代の進歩は、 もうその研究者の良き時代にも幕を引こうとしているのが驚きです。

 昨日は、皆といろいろと話しをしながら、AIに人生を支配されないようベストな解をどうか見つけてほしいと、彼らを励ますことしかできませんでした。研究者は気楽で良い商売という良い時代は去ってしまったのですね。激動の時代を生きてきたのだということを、しみじみと感じました





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最終更新日  2019.01.15 06:51:05
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