獺 祭

さて、無事に肘を卒業した３号を診察室の外に出して、診察交代です。

「いかがですか？」「えーと...（アタマ切り替えないと）...えーと、アタシですね」

床に仰向けに寝た状態で、腕を足の方から頭の方にあげて行くと、真横から上の位置で肩甲骨の床につく感じに左右差がすこしあります。

「まだそういう差がありますか。痛みは？」
「…（思わずＳ田先生の顔を見つめてしまって）…肩はともかく、腕は痛いですよ」
「…ペインは通ってるんですよね」

えーと…通ってるんですけど、もう注射してもあんまり効果がない感じで…ペインに通い始めたころの痛みを10とするなら今は２とか３なんですが、でもその痛みはもう注射してもとれないで、腕に張り付いているんです。もうソレは取れないだろうから、後は薬を飲んで痛みをコントロールしながらうまく付き合って行くしかないんじゃないかなー、っていう話になってます。

「薬って…リリカですか？飲んでます？」
「いえ、リリカは飲んだことないです。頓服でトラムセットを」
「頓服でトラムセット、ですか？（カルテに書きこみながら）」
「ええ、我慢できないくらい痛みが酷くなってしまった時に飲んでます。副作用がきつくって、もう今日は何にもすることない！っていう夜にしか飲めないですよ、アレ」
「え？副作用、キツイですか？吐き気とか？」
「吐き気は…ナウゼリンを一緒に飲んでいるのでソレは気にならないんですが、めまいとか痺れとかが酷くて、へろへろになりますね。でもって気絶するように寝てしまいます」
「寝ちゃうんですか？」
「ええ、眠剤か？っつー感じで寝ちゃいますよｗ」
「吐き気は聞いたことありますけど、トラムセットでめまいとか眠気とかあるんですか…」
「あるんですよｗ」

もー、Ｓ田君ってば経験ないなー、ってのが露呈するねぇ。まあね、副作用なんて人それぞれだから、出ないかもしれないけどさ、いっぺん自分で飲んでみりゃいいじゃん（←乱暴）

「痛みはどの辺に出るんですか？上腕のあたり？」
「……全部（笑顔）」
「ぜんぶ？」
「腕ぜぇぇぇんぶ、です。動かすと痛みが強く出るので、肩関節の動きは悪くないのに腕の痛みでリハビリがつらいという…せんせー、コレって何科にかかってればいいんですか？」
「え？いや、ペインでいいんですよ。ペインにかかっててください」
「えーでもペインは、もう注射が効かないので、痛みをコントロールして生活の質を上げて行こうっていうのがメインで、積極的に治療をして行くという感じではないんですけど…」
「リハビリしてって言われます？」
「ええ、薬で痛みがコントロールできてるうちにリハビリなさい、って言われます」
「治療と言っても、教科書的にはひたすらリハビリするしかないんですよね」
「えー、でも動かすと腕痛いから、正直リハビリやだー」（←ワガママおばちゃんｗ）
「腕、左右に開きます？（外旋）」
「（肘を腰につけた状態で手首を横に開く）まーここまで開きますけど、でもこの状態で左腕は上腕筋が痛くて、もう動かしたくない…」
「動かすと痛いんですか？」
「うーん…基本、動かすと痛いんですが、痛くなりだしちゃうと何しても痛いし何もしてなくても痛いんです」
「どんな痛みですか？」
「えー。結構痛いですよ。ロックやってる人の着ている服についてるみたいな、とげとげした金属の鋲が骨からにゅーって出てくる感じ」
「えー、そんな痛み…じゃあ、たとえばこうやって触られて痛いですか？（って、アタシの左上腕にさわった！！！）」
「…っ…痛いですけどっ…！！つか、アタシの左側には触んないで！！！って感じですっ！！！！」

あーのーなー、Ｓ田よぉぉぉぉおおお！！
ペインのＯ崎先生は、いきなり触ったりはせんのじゃ。
触るとしても、筆でそっと刷くくらいの触り方なのじゃ。
こういう目に会うと、ペインの先生は優しいなーというか、痛みを抱えてる人の触り方に慣れてるなーって思うわ。
本当に、急に触られると身構えていない分のダメージも大きいよね。
痛み倍増です。

き　ゅ　う　に　さ　わ　ん　な　！！！

ゴルゴ13だっけ？「オレの後ろに立つな」って言うのは？
あんな感じで、「アタシの左側にさわんな！！！」って感じですね、ええ。

「表面がピリピリしたりするのはありますか？（カルテに上半身の絵を描いて、左腕に斜線を書きこみながら）」
「あーるーあーる。それこそ、シャワーのが当たっても風が吹いてもお風呂のお湯の波が当たっても痛い時は痛いですよ」
「知覚過敏もあるんですね…」
「ええ、全部がいろいろに痛むんです。あ、でも肩は痛くないんですよ。ソレは救いですねｗ　腕を動かしていると上腕が痛くなることが多いんですが、それでも我慢して無理に動かしていると前腕から指先とぜぇぇぇんぶに痛いのが広がって、イヤになっちゃいますねー」
「イヤですよねぇ…」
「ｗまた先生、そんな他人事的なｗｗｗ」
「いや、そんな風に思ってないですよｗ　大丈夫です、治ります！！（キリッ）」
「ｗｗｗまーいいや。そんな感じなので、リハビリもどういう方向に向けて進めて行けばいいのか、今日きちんと先生のお言葉を賜ってくるように言われてまいりました」
「ｗそーすか」
「肩関節の動きに関しては、本当に何の問題もないんだそうです。正直、おめーもうリハビリ来なくってもいいんじゃね？くらいの言われ方してますよｗ」
「いやいやいや、そんなこと言わずに、手術後１年くらいまでは週一くらいのペースで頑張りましょうよ！！」

えええー？せんせー、こないだリハビリは２月まで頑張ってって言ったじゃんｗｗｗ
「２月まで」が、「手術後１年」ですか？ｗｗｗｗｗ

なに、アタシってばまるでニンジン目の前にぶら下げられた馬？ｗｗｗｗｗ

「できるだけリハビリ通って、マッサージとかしてもらってください」
「リハでマッサージですかぁ？（ＰＴのマッサージ受けるくらいなら、治療院の鍼とかマッサージを受けに行った方が効果ある感じだよね）」
「電気治療でもいいんですよ」
「電気…アレって、効果あるんですかねぇ？（ハナから信用してない）
「そういう神経系の痛みには、効果ある…はずですよ…多分」
「また、せんせーｗｗｗ　結局は他人事ですもんねｗ」
「ｗｗｗそんな風に思ってないですってばｗｗｗ（勘弁してくれー、的に）」
「じゃー、まーテキトーにやってみます」
「ええ、いろいろヤってみてください。肩の痛みはないんですよね？」
「はい、肩は痛くありません。強いて挙げれば…烏口突起部分が、前屈みになって仕事している時間が長いと痛くなる程度…」
「ああ、前かがみで烏口突起…そうですね、そういう姿勢だと痛みが出やすいですね。では、次はまた２ヶ月後くらいに…」
「２ヶ月後ですか…（入学式終わって４月半ば？ＧＷ前ね）オッケーです。その頃また参ります」
「（ぼそりと）ホント、いろいろすみません…」

アタシ、こういう風に言ってくれるとこがＳ田先生の好きなとこなんだよね。
なので、「一日早いですけど」って、チョコレートをお渡ししてまいりました。
うん、人の良さが出てなかったら、医者にチョコレートなんかやんねーよｗ
まーアタシの手作りじゃないですけどね。
神戸のチョコレート職人の手作りですけどね。

つか、アタシ一般家庭の女の子が作った手作りチョコなんて、正直食べたくないですけどね。
手作りしてくれる子には悪いけど、どんな作り方してるかわかんないじゃん。
きちんと加熱処理してるならともかく、生チョコなんて「生」だもん。
ええ、毒吐きますよ。
あたくし一応、調理師ですからね。
マニキュア塗ったまんまの爪や、指輪したまんまの手で調理したようなものなんか、絶対食べたくないって、そう思わない？
いままでに人にあげたチョコよりもらったチョコの数の方が多いという（笑）、おっさんみたいな女の立場から言わせていただければ、「気持ちだけ」で十分です、ええ。