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主人公の蓮という少年は、最初から狂言回し的な役回りだったけれど、ここに来てそれにますます拍車がかかり、なんかもう黒子状態に。雨柳堂の店先もほんの数ページしか出てこないし、おじいさんに至ってはご存命なのか心配してしまうほどです。(爆)ちょっぴり寂しいのですが、もうこのお話自体が雨柳堂という仕掛けをあまり必要としなくなったということなのかもしれません。読者も蓮のことを熟知しているし、最後に話をきゅっと締めるために出てくるだけで雨柳堂夢咄として成り立つっていうことなんでしょうね。(でも数ページとは言え、雨柳堂の店先が出てくるお話があって良かった。)
お話も、以前はもっと骨董品自体への興味というものを感じていたんですが、今回は品物よりも人物の方により重点が置かれているような気がしました。なんだか、2年たって作者の視点もこんなに変わってしまったんだなあと感慨深いものがありました。
さて、波津さんが好んで使うテーマに、「お金持ちの孤独な大人と、その家に養子に入る寄る辺ない子ども」というのがありますが、今回も2つ、(「秋の鈴音」「夏の言問い」。ちょっとパターンは違うけど「茶師の家」もそうかもしれない。)ありました。愛を失ったり遠ざけたりしている孤独な人物と、親の愛を知らない子どもとがだんだんと心打ち解けていく様は、互いに欠けた茶碗が繕いによってまた違った美しさを持つ新しい茶碗に生まれ変わるのに似ています。特に「秋の鈴音」はそういうお話です。波津さんによって繰り返し語られるこの手のお話が、私は実に大好きです。
「夏の言問い」はまた違った意味でも好きな作品です。実はこのお話の舞台となる洋風建築にすごく惹かれるんです。私の街にもヴォーリズという人が作った洋風建築がいくつか点在していますが、日常とは隔絶された本当に不思議な空間です。純和風なお座敷の隣に暖炉のある素敵なダイニングがあったりして(数え上げればキリがありませんから書きませんが、)、予想を裏切られる快感と、意外な和と洋の調和を感じていつまで眺めていても飽きません。
そんな洋風の建築を思い浮かべながら読むと、ますます不思議度アップです。
波津作品を読む前に、一度お近くの洋風建築を見学してみてはいかが?
東京ゴースト†トリップ 葉芝真己著 2009.08.31 コメント(8)
彼は花園で夢を見る よしながふみ著 2009.06.29 コメント(2)