大内健二 著『 【送料無料】戦う日本漁船 戦時下の小型漁船の活躍 』(光人社、2011年10月)について語っていきたいと思います。
太平洋戦争中、日本の陸海軍は民間の客船や貨物船、タンカーなどを徴用して中国大陸や南方へと兵士や兵器などの資材を運び、逆に大陸や南方から鉄鉱石や原油などの資源を日本本土へと輸送していたのは、よく知られていることです。しかし、このような大型の徴用船舶に関する戦時中の記録は残っているのですが、これから紹介する小型の徴用船舶、漁船や機帆船については一部を除いてほとんど記録は残っていませんでした。この『 【送料無料】戦う日本漁船 』は、 そのように人知れず戦争に駆り出され連合国の圧倒的な制海・制空権の中で活動し膨大な犠牲を払った小型徴用船舶に関する記録を紹介した本です 。
先に、小型徴用船の戦時中の活躍はあまり知られていないと書きましたが、例外があります。それは、1942年(昭和17年)に起こった ドーリットル空襲 です。この当時、日本海軍は日本本土周辺の哨戒と監視のために90~150トン程度の近海マグロ・カツオ漁船やトロール漁船、底引き網漁船を特設監視艇として徴用していました。そして運命の1942年4月18日深夜、日本本土初空襲を目的に本土に接近していた空母エンタープライズはレーダーが光点を2つ発見、ただちに米艦隊は索敵機を発進させ、同機は80km先に哨戒艇を発見します。続いて午前6時44分、米艦隊は哨戒艇を視認します。それは 日本海軍特設監視艇第二十三日東丸 でした。米艦隊は日本海軍が敷いた哨戒網に引っかかったのです。そして第二十三日東丸は米軽巡ナッシュビルの砲撃で午前7時53分に撃沈され、乗員14人全員は艇と運命を共にしました。しかしナッシュビルは撃沈に6インチ砲弾915発と30分を必要とし、第二十三日東丸が無線を使う時間を与えてしまいます。午前6時45分の『敵航空母艦2隻、駆逐艦3隻見ゆ』発信が第二十三日東丸の最後の無電でした。そこで米軍は付近の哨戒艇を一掃する事を決意し、エンタープライズより戦闘機などを発進させ、周辺の哨戒艇を攻撃することになります。この攻撃で、海軍の監視部隊である通称・黒潮部隊の第二哨戒艇部隊は特設監視艇3隻と22名を失い、第三哨戒部隊は監視艇2隻と15名を失うことになります。しかしその結果、米艦隊は発艦予定海域手前の予想外の遠距離で日本軍に発見されたことで当初の夜間爆撃の予定をとりやめ、予定より7時間早くドゥーリトル指揮下のB25爆撃機を空母ホーネットから発艦せざる得なくなり、燃料の不足などで中国大陸などに不時着せざる得なくなったのです。
さて、このように哨戒網を形成していた特設監視艇の武装とはどのようなものだったのでしょうか。実は、この ドゥーリトル空襲 の際の特設監視艇の武装はお寒いものでした。なんと小銃が2、3挺と1挺の7.7mm機関銃しか積んでなかったのです。最も、特設監視艇の最大の武器と言える無線機だけは海軍型の強力なものに交換していたのですが。しかし、1943年中頃からこの日本本土近海に米潜水艦が現れ、特設監視艇と交戦する事態が発生し、さらに1944年7月にはサイパン島が陥落。ここから発信するB24などや米機動部隊の艦載機による攻撃を受けるようになりますと、特設監視艇も武装が強化されます。まず、100総トンクラスの船には船首甲板に特設の砲座を設置し、旧式の5~7cmクラスの砲が搭載されます。また、船橋上部には7.7mmや13mmの単装機関銃が2挺装備され、さらに対空兵装として25mm単装機関銃が1~2挺装備されることもあったそうです。ですが、 これらの装備は恵まれた一部の船だけで、大半の船は先述の装備の一部しか備えられずに出撃していきました 。
ここで、 本書から特設監視艇と米潜水艦との交戦の模様を抜粋したいと思います 。19944年8月3日、第3監視艇隊の 網地丸 (107総トン)は房総半島沖の東南東約千kmの地点で浮上してきた米潜水艦に砲撃されます。この攻撃で網地丸は船橋が破壊された他、船体にも重大な損傷を受け、乗員13名が戦死あるいは重傷を負います。しかし、木造船の強みで網地丸は容易に沈没せず、反撃を行い5cm速射砲でおよそ50発、7,7mm機銃弾1500発を撃ち込み、さらに8cm擲弾筒まで発射します。この攻撃で米潜水艦の甲板上で砲や機銃を操作していた要員のほとんどが戦死または重傷を負い、船体各所に破孔が開き一部は艦内で爆発、米潜水艦は交戦を中止し浮上したまま退避し、網地丸の生存者は僚船に救助されます。このように、特設監視艇をなめてかかると米潜水艦も痛い目に合うことがありましたが、ほとんどの特設監視艇は奮闘むなしく撃沈されています。この辺の状況をよく知りたい方は、 宮崎駿 監督の著書『 【送料無料】宮崎駿の雑想ノート増補改訂版 』(大日本絵画、1997年8月)に収録されている第11話 「 最貧前線 」をご覧になるとよくわかると思います。 本当に、日本軍は技術力を人間、要するに人の命で補おうとした情けない状況に唖然とするでしょう 。
この本は他にも、特設駆潜艇や特設掃海艇に徴用された遠洋トロール漁船や遠洋底引き網漁船、捕鯨船などの活動や、日本沿岸の港間、都市間を結ぶ小型船舶である機帆船の活動、他には米英他の徴用船の説明や日本船などの船形図が記載されているのですが、 本書の題名にしたがって今日は大半の漁船が徴用されて活動した特設監視艇の話で終わっておきます 。詳しい話を読みたい人は、本書をご購入下さい。 光人社のノンフィクション文庫はお値段が手ごろで、個人的に興味のある戦記をピンポイントで文庫にしてくれるのでお値打ちなんですよね 。
では最後に近況報告を。私の住んでいる地域にも寒さが忍び寄ってきて、勤めている高校を囲む森の木も紅葉が始まりました。で、学校図書館の方はと言いますと、読書週間から11月25日まで続けている本を5冊借りるごとに抽選券を配って、図書カードなどが当たる抽選会がまぁまぁ盛況な状況です。それよりも、第2期のSLBAに発注した20冊の本と読書週間に間に合わなかった残りの本10数冊が一度に届いて、その本の登録と装備が大変なことになっています。ホントに登録がシステム化されていてよかったと思いますね。昔みたいに登録みたいにカード方式だったらと考えるとゾッとします。そんなこんなで、現在のところ忙しく働いています。それでは今日はこのぐらいで。
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