サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2006.06.22
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テーマ: 京都。(6333)
記憶と想像力

 1000年前の都人、周辺の住人は、京(都)をどのようにイメージしていたか、彼らの心象風景にどのように映っていたのか、今の私たちには、どこまで想像力で迫っていけるのでしょうか。

 ここで記憶と想像力について、やはり一つの重い話をしなければなりません。
 11年前の阪神大震災の記憶も、考えてみれば、おびただしい映像の記録が残っているにもかかわらず、直接体験者の方の記憶を、追体験することは不可能だという気持ちが強い。

 私は当時京都市内におりまして、自宅の前の電柱の電線が交錯してスパークし、青い光が2度3度障子越しに輝いていたのを思い出します。家の方向とゆれの方向が良かったのか、家具等が倒れることは、なかったのですが(伏見区などでは方向が悪く、家具が倒れたり食器が落ちたり大変だった地域もあったそうです)、窓から外を眺めるとJRの貨物列車が徐行運転しており、まもなく停まってしまいました。このあと終日その列車は停止したままでした。
 最初のゆれの直後に、神戸の友人から電話が架かってきました。しばらくは電話がつながったのです。その人は東灘区の住人で、あとでわかったのですが、最も死者のでた地域の1つでした。
 その友人が「そちらは大丈夫か?京都が震源と聞いたんだが。」というのです。
 半壊したマンションからパジャマで飛び出して、最初に出てきた近所のうわさが、京都が全滅したという話だったそうです。
 ゆれの最中の記憶は、例のNHKの局内映像と同じで、自分ではどうしょうもない力で翻弄される、テレビが3回転して頭の横に転がってくる、ファンシーケースが倒れる、ひび割れした天井から噴出す水を眺めながら、死ぬとはこういうことなんだな、と思ったそうです。


 その友人の体験は、本人に聞いてもらうのが一番ですが、私は他人の体験というものが、どこまで追体験できるのか、記憶というものが、どこまで共有できるのかということで、この話をしています。

 その人は水浸しの自宅(階上の部屋から水が入って、部屋の衣類その他はほとんどダメになったそうです)にもどって、着替えると近所の土建屋さんの車に乗せてもらい、倒壊して燃えている家並みの間(東灘は倒壊火災の最もひどい地区の一つでした)を、大阪へ、さらに京都の親戚の家まで、当日のお昼には避難してきました。
 大阪で友人は不思議な体験をしたそうです。土建屋さんの車を降りて(その車はまた引き返したそうです)、休憩しょうとしたとき、大阪の町が何事もないかのように(実際はそんなことはなかったのですが)、朝の準備が粛々と進行していることにです。一見して被災者とわかる自分たちが、喫茶店で休んでいても、逆にそれが現実と思えない。何か別の写真を貼り付けたような違和感があって、信じられないことですが、お茶代を払って出てきたそうです。その後JRは停まっていたので、地下鉄と近鉄で奈良を経由して京都へやってきました。

 私のほうは地震直後から、例によってテレビに釘付けになっておりました。文字と音声の死者数の発表から、現地の倒壊映像に切り替わってから、死者数の伸びと映像のギャップに苛立っていました。第一報は、倒壊した2階建て文化住宅の、延々とつづく映像でした。そのときはまだ、あとあとくりかえし放映された火災映像はなかったのです。(実際火災が本格化したのは午前9時ぐらいからで、その後延々と翌朝まで燃え続けました。)
 倒壊映像の規模からテロップで流れる死者数では、とても収まらないだろうと直感しました。午前7時段階で発表死者数はまだ数十人の単位でした。

 今、この最初の累々たる倒壊住宅の映像を思い出すたびに、ある種の痛みが走ります。例えば事故で体が傷ついた瞬間、血が噴出すまえの一瞬間に生じる痛みの感覚です。そのとき 倒壊した家々の中には、まだ生きている人が多数いた ということを思い出すからです。
 後から何度も放映された、圧倒的な高速道路の倒壊映像や、長田区の火災現場でなく、私自身のナマの記憶として、そのときの感覚は今も残っています。

 その後、彼の友人からは何度も震災の体験を聞かされました。また私の感覚を確かめるために、他の知人友人からも、いろいろと聞いたりもしました。そのうち私には、これは以前、別の場所で聞かされたこととよく似ている、という感覚が芽生えました。
 それは父が繰り返し語っていた戦争体験です。その体験話を聞かされる私には、これはとても自分の感覚と共有できないだろう、という一種のあきらめのようなものがあったのです。

― つづく ―





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Last updated  2006.06.22 12:07:58
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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