サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2006.08.18
XML
カテゴリ: 旅行
 呉茂一さんの「イーリアス」の訳文で美しい語りがあったのですが、思い出せません。
 それはさておき、今の西欧人はギリシア.ローマ文化をわが直系の文化のように吹聴しますが、ご存知のとおり今伝えられているギリシア.ローマ文化なるものの大半が、アラビア文化経由であることを忘れるべきではありません。ローマ帝国の分裂とキリスト教文化の伸張で、ギリシア.ローマ文化は長く西欧社会では封印されていたのです。
 彼らがそれに目覚めたのは、これもご存知のとおり十字軍の遠征に始まる、アラビア文化の発見からであり、ルネッサンスはアラビア経由の古代復古だったのです。
 アテネのパルテノン神殿はオスマントルコ時代に火薬庫として使用され、ヴェネツィア軍の砲撃で今は横腹が大きく崩壊しています。外壁を飾ったさまざまな装飾品も、大半が持ち去られ(ほとんどが大英帝国博物館へ)、今みれば何だか骨組みだけの外形をかろうじてとどめているに過ぎません。

 ギリシアに行ったとき、大半をアテネで過ごしたのですが、パルテノンは大理石ですので、さまざまな色に微妙に変化する。夕方など信じられないのですが、ピンク色に変色するのです。そして夜、オリーブオイルとワインの匂いをふりまいて外に出ると、相変わらず横腹の崩壊したパルテノン、月に照らされて青い光芒を放っていました。大理石とは不思議な石ですね。褐色じみたその白色の崩れかかった柱廊は、私には何だか散乱した白骨に見えました。くりぬかれて干からびた肋骨のイメージです。
 今ギリシアでは、持ち去られた装飾品、美術品の返還運動があるそうですが、間違ってもそれを今のパルテノンの修復に使わないでほしいと思いますね(たとえ複製品であっても)。もちろん今以上の崩壊はくい止めねばなりません(現に修復は行われています、大理石は酸性雨に弱いのです)。しかし今ここにあるパルテノンはそのまま人間の2600年間の歴史であり、この時間の刻印こそがパルテノンの放つ微光のような美しさでしょう。かつてあったであろうパルテノンはそれこそCGや映画のセットで再現すればよいのです。
 私にとってこうした枯淡な感じのギリシアの遺跡に比べ、ローマの賑々しい遺跡群はあまり魅力的ではありません(別にイタリアーノがきらいなわけではありません)。すごいなあ、とは思わせつつも、かつての人間どもの所業がネガの部分も含めて、あまりにもモロに迫ってくる感じで、今住んでる我らが脳化社会と変わりがないじゃないか、という印象が先に立つのです。

 枯淡といえば、ペロポネソス半島とギリシア本土を扼する位置にあるコリントスは、歴史的には例のミュケーナイの成立とほぼ同じといわれ、繁華なアテネに比べても古代都市のイメージが強い(ちょうど京都御所の紫宸殿に対して、奈良法隆寺の金堂を見るようなものです)。さらにうしろに控える小高い山はかつてアフロディーテの神殿があった場所であり、千人の聖娼!?を置いた遺跡も麓から望見できて、これはやはり東洋的豊饒神(アスタルテ、イシュタル)を祀りあげた古い都市だったのだなと、納得させられます。
 そして繁華を極めたであろう手前の街の遺跡は、黒々とした大理石の敷石で埋め尽くされ、4、5本だけ辛うじて立っている、ストーンヘンジを思わせる5メートル足らずの柱廊のなごりは、私が行ったときは雨が降っていたこともあったのですが、何だか苔むしてうずくまっているように見えました。


 T.S.エリオットが「四つの四重奏」で確か

― かつてあったことと、かつてあったろうことの、交わるところはただ一つ、
それは今あるのだ ―

でしたか、詩を詠んでいましたが、想像力をどこまでも飛翔させられる、こうした遺跡群というのはやはり素晴らしいですね。

 何だかこの前から紀行文のようになって、UPに難渋しています。ブログのおもしろさは自分にとってまず楽しいこと、人に読んでもらっても、たぶん楽しいこと?が第一義だと思うのですが、どうもここのところ自分が厳密に楽しんでない、人にも充分に楽しませられてないんじゃないかという脅迫感があります。その原因は何か(誰か!)、次回はそのあたりの犯人探しといきますか。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006.08.18 13:33:46
コメント(0) | コメントを書く
[旅行] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Calendar

Archives

2026.06
2026.05
2026.04
2026.03
2026.02

Profile

TNサリエリ

TNサリエリ

Comments

TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

Favorite Blog

まだ登録されていません

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: