サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2007.06.15
XML
 今どきの私たちは科学の知識でもって、「遺伝」と「遺伝子」という概念を当然の常識としてもっていて、疑いもしないわけですが、考えてみると、科学的な知識がない時代でも、生存生活から多少なりと離れた人間のなかには、自分たちが何であり、どこから来て、どこへ向かっているのか、ということを真剣に考える人たちがいたわけです。
 前にもふれたことがありますが、今につながる人類史的な思想が生まれたのは、人間が狩猟採集生活から定置農耕生活へ移行し、さらに階級的分化をとげた紀元前6世紀前後といわれます。直接的な生産活動を行わず、単位部族集団の統率と維持をもっぱらとする階級で、それは王様であったり貴族であったり僧侶であったりしました。例えばインドのシャーキャムニ、中国の孔子、ギリシャのソクラテス、あるいはキリストの前身といわれるイザヤが現われた時期です。
 このころ今日明日の生存のために動物に近い狩猟採集生活を続けていた集団が、農耕栽培による生存方法をみつけて定住し、長い期間をかけた定置農耕の発達で生産力が増し、余剰の人々を生み出します。大量の集団は生産者と非生産者ないし統率者に階層化し、それを根拠づける思想が求められていたのでした。シャーキャムニやソクラテスは偶然出てきたのではなくて、社会的欲求から現われたのです。彼らの周辺には数多くの哲学者やバラモンがいたことはよく知られていますね。

 「遺伝学」というのは、ものごとを過去から未来へという一方向の「時間の流れ」を前提とした概念なので、近代科学というのは、この世のすべてが時間内存在であることを前提として成り立っています。子供は親の個体の遺伝子の半分を受け継いで行くというのは、そのほうが種の生命多様性が保たれて、遺伝子の生存にとっては有利だというのは前にもふれたことがあります。
 ところで、科学的知識のなかった古代において「時間(ものごとの生成と消失)」というものが、どういうふうにとらえられていたのかということは、今どき理解するのはなかなかやっかいなのかもしれません。定置農耕が発達し余剰が生まれたといっても、自然の推移というのは人智を超えた力で、人間社会を脅かしているわけで(実は今でも)、古代にかぎらず人間は常に飢えと飢饉にさらされてきたのです。太陽と水の安定は定置農耕の基本要件で、古代人にとってこれらは所与のものではなく、そのつど獲得し更新されるべきものでありました。さらには個体としては避けがたい「死」というのは古代人にはどう映っていたのか、ということも大事な要件であったでしょう。
 科学知識を持たない古代人が、こうした自然と人間との関係に折り合いをつけ、秩序だてるために現われたのが、神話であり死と再生の通過儀礼でした。

                                       ― つづく ―





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007.06.15 13:10:37
コメント(0) | コメントを書く
[政治、経済、社会、歴史] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Calendar

Archives

2026.06
2026.05
2026.04
2026.03
2026.02

Profile

TNサリエリ

TNサリエリ

Comments

TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

Favorite Blog

まだ登録されていません

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: