サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2007.06.21
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 河瀬直美監督の「殯の森」で、ちょっと話題の「殯(もがり)」のことですが、これは古代日本で行われていた葬送儀礼で、隋書東夷伝・倭国には「貴人は三年外に殯し、庶人は日を卜(ぼく)してうずむ」(Wikipedia)とあり、本葬まで死者を長いあいだ屋内に安置した期間があったことが知れます。
 一般的には、これは死者との別れを惜しみ、最終的な死を確認する期間と解されていますが(今日の通夜が、その名残りとされるゆえんです)、それにしても貴人は三年間お棺に安置したままとは随分長いですね。
 しかしそれが実際に行われていたであろうことは、隋書東夷伝だけでなく「古事記」の神代に頻出する「ウジたかれ、サバエなす」死者の映像によっても明らかで、一説には貴人の場合、本葬のための墳墓の建設に時間を必要としたなどということが言われますが、やはり本質的なところでは「死と再生」の願望が根本にあったでしょう。三年という期間は別としても、年をまたいで復活を言祝いだであろうことは、イネを年ごとに言祝いで再生を祈念したことからも間違いなかっただろうと思われます。天皇の即位式が、毎年の収穫祭である「新嘗祭」を大規模化した一世一代の「大嘗祭」として執り行なわれることは、よく知られていますね。

 「古事記」に現われる生々しい死者の映像は、たんに古代では腐乱した状態の死者が野山に放置されて、それにまみえる機会が多かったであろうということとは別に、こうした殯のときの映像の記憶を強く残しているのは間違いないところで、このあたりこの神話が古代の祭式に強く刻印されていることは、よく指摘されるところです。
 これは何も神話が祭式の引き写しであるということを言っているのではなく、お互いがこだましあいながら、別々の展開をみせていったと見るべきで、だからこそ「古事記」神代の物語を、時系列や大陸との交渉史などに当てはめて、単純に論じるのは危険なのです(私はむしろなぜ「古事記」が、古代律令制の制定時に編まれねばならなかったのか、ということのほうに興味があります。これについては前に天武天皇のことで触れたことがあります)。
 「古事記」が編まれた時代というのは、すでに漢字や暦年、律令制、仏教といった大陸文化が、ひろく大和平野に浸透していた時代で、「古事記」の中味がそのまま古代日本の記憶であると、単純に信じるわけにはいきません。ことがらは重層的で、腑分けして何がもともとの記憶として残されているのかということを分析するためには、あるいは社会人類学や生命工学の知識の支援も必要かもしれず、まだまだハッキリしないことが多いのです(人文系の知識は科学系と違って、ハッキリ結論が出るということはあまり期待しないほうが好いみたいですね。かといって止めてしまえというわけにはいきません。日本人の行動原理の根本を探り、それが人類一般の振るまいと、どのあたりでつながっているのかということ知ることは、やはり必要なのです。何だか偉そうな話になってしまいました)。

                                       ― つづく ―





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Last updated  2007.06.21 12:03:04
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
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