サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2008.01.06
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 しかし「悲劇的」とか「喜劇的」という言葉は、ちょっと情緒的にすぎる形容であるかもしれないので、ヒトの人生を「喜劇」とか「悲劇」とかいうのは、しょせんそれを観る人の感覚じゃないかと云われるかもしれません。
 ここで「悲劇的」というのは、すべて生き物は、「個体としての生命は有限」という前定に逆らって、永遠を求めて止まない存在である、ということを言ったまでで、情緒的な要素は含んでいないのです。

 別のところでも話しましたが、インドのシャーカ・ムニは生の本質を、「四つの苦(生老病死)」ととらえ、この逃れられない「苦」に対して飽くことなく挑戦を繰り返すのが、生命存在の本質であることを喝破したのでした。生まれ出る苦しみは別としても、老いや病や死は誰でも漫然と受け容れるわけではなくて、無意識にでも、とりあえず逃れようと振るまうでしょう。と同時に生き物はある一定の限られた利得で満たされるということはなくて、あらゆる利得はそれが満たされた瞬間に、次の渇望感に追い立てられるように、最初から生き物に刻印されているので、彼はこれを生命の劫火(煩悩)と呼んだのでした。
 シャーカ・ムニはもともと古代インドの小国釈迦族の王様貴族で、現世的な利得は充分すぎるほど得ていたはずですが、あるいはそれゆえに、その空しさも誰より強く感じていたのかもしれません。もともと古代インドには王様貴族(クシャトリア)のさらに上層とされたバラモンといわれる宗教階級があり、哲学的な思索や苦行を尊重する伝統はあったのです。
 彼の来歴や、その説くところは、今回の本題とは関係なく、またとてもじゃないが私が話できるところではありませんが、若いころ一時仏教思想に強く惹かれるところがあって、鈴木大拙や中村元さんの本を理解できないままに読みふけっていたことを思い出します。まあ世の中にはいろんな本があるもんですね。

 ところで、このようなシャーカ・ムニの生命の捉えかたというのは、今どきの生命科学における生命衝動の振るまいに関する考えかたに、ちょっと通じるものがあるような気が私にはするので、現世的な利得を永遠に渇望するようにDNAに刻印されていないと、すべて生命活動は停止してしまう(生命でなくなる)。つまり劫火(煩悩)は生命の本質ということになるのです。
 シャカの教えに一部生命否定の要素があって、彼が「覚り」をひらいてのち「解脱」という考え方を人に伝えるのに、最初著しい困難を感じたというのは、このあたりかなと思ったりもするのですが、いずれにしても 生命存在が個体としては有限であって、なおかつその生存維持機能は永遠を希求する というのは、生命存在の根本的矛盾でしょう。だいぶ前にも触れましたが、がん細胞というのは有限であるべき個体に、本来宿っている生存維持機能が、ある日突然解き放たれて暴走する(永遠に分裂を繰り返して、本体を破壊する)、これは生命機能の根本的矛盾の結果と言えなくもないのです。
 何だか以前にも増して話が小難しくなってしまいましたが、このように生命機能そのものが本来根本的な矛盾を抱えているという意味で、ヒトとは「悲劇的存在」であると表現してもいいのではないかと思うのです。


 げんに古今東西の名作といわれる演劇や小説や映画などは、圧倒的に「悲劇」が多いでしょう。

 ではいったい「喜劇」とは、私たちにとってどういう位置づけになるのでしょう。例の「寅さん」を演じた渥美清さんが、生前「寅さんを演じるのは、舞台が高くてねえ」でしたか、おっしゃっていたそうですが、これはたぶん現実にはありえない人物や状況設定を、本当らしく演じきることの困難さを語っておられたのでしょう。

― つづく ―





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Last updated  2008.01.06 15:47:46
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
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