サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.05.25
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カテゴリ: 文学
 このあたりから、源氏のいわば大人としての政治手腕が、さまざまに語られるのですが、冷泉帝の代に変わってまず源氏が内大臣につき、政治の実務(摂政)については、繁忙で我が任に耐えずとして、前の左大臣に職を譲ろうとする。朱雀帝の時代、右大臣の専横に嫌気がさして退隠していた左大臣ですが、光源氏他の強い説得に折れたというかたちで、六十三歳という高齢にも拘わらず政界に復帰します。

―  (元左大は)「病によりて、位をかへしたてまつりてしを。いよいよ老の積りそひて、さかしき事侍らじ」
 と、うけひき申し給はず。「人の国にも、事移り、世の中定まらぬ折は、深き山に跡を絶えたる人だにも、治まれる世には、白髪も恥ぢず、出で仕へけるをこそ、まことの聖にはしけれ。…」、おほやけ・わたくし、定めらる。さる例もありければ、すまひはて給はで、太政大臣になりたまふ。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)

 元の左大臣は、「病気ゆえ、官職をお返し申しましたのです。さらには老いも進んでおりまして、(摂政のような)重職は務まりますまい」
と、容易に承知されない。「彼の国でも、時代が変わり、世の中が不安定な折は、深い山に身を潜めていたような人でも、世が鎮まった折には、白鬚も恥ともせずに、世に出て仕えるのが、それこそ本当の聖人であるとしています。…」、というような意見が、朝廷でも世間でも一般である。過去にそうした例もあるので、とうとう引きこもりきられずに、大政大臣になられた。

 一度は断るが二度目の説得は受けるというのは、昔の中国の故事によくあった話で、このあたりはすべて仕組まれた予定を、芝居気たっぷりに進行させているに過ぎません。もし源氏に意図があるとすれば、世俗の実務はもともとの大ベテランである左大臣にまかせ、同時に左大臣一族を味方につけることにあったでしょう。光源氏の本当の目的は、世俗の実権を握ることではなく、まったく別のところにあったのです。

―  まことや。「かの、明石に、心苦しげなりしことは、いかに」と、おぼし忘るゝ時なけれど、おほやけ・わたくし、いそがしき紛れに、え思すまゝにも、とぶらひ給はざりけるを、三月朔日(やよひついたち)のほど、「このごろや」とおぼしやるに、人知れずあはれにて、御使ありけり。とく帰りまゐりて、
 「十六日になん。女にて、たひらかに物し給ふ」
 と、つげ聞ゆ。珍しきさまにてさへあなるを思すに、おろかならず。「などて、京に迎へて、かゝる事をもせさせざりけむ」と、くちをしう思さる。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)


「十六日でございました。姫君にて、ご安産でいっらっしゃいます」
と、ご報告申上げる。(女の子は、初めてなので)源氏は珍しくも思われて、喜びようも尋常でない。「どうして、都に迎えて、こちらで出産をさせなかったか」と、残念に思われた。

 彼にとっての目下一番の関心事は、もちろん天下の政務ではなく、我が貴種の血筋を、いかにして守り、そして繁栄させるかということだったのです。

― つづく ―





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Last updated  2009.05.25 14:53:52
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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