サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.05.26
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カテゴリ: 文学
 上のパラグラフに続いて、すぐ語られることとは、
― 宿曜(すくえう)に、「御子三人。帝・后、かならず、並びて生まれ給ふべし。中の劣りは、太政大臣にて、位をきはむべし」と、考へ申したりし、「中の劣り腹に、女は、出で来給ふべし」とありしこと、さして、かなふなめり。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)

 宿曜の占いでは、「源氏の君には御子が三人生まれます。そこから帝と后になるべき人は、必ず、並び立って生まれるでしょう。三人の中で劣った方は、太政大臣になって、世の位を極められるでしょう」と、思案して申上げ、さらに「中で身分の劣った人の腹からは、女君が、生まれ出でましょう」とあったことも、このことを指しているのか、当たっているようである。

 宿曜(すくよう)とは、星の運行によって、日の吉凶と人の運命との関係を占う術の由ですが、ご存知のとおり、この話は「源氏物語」冒頭の「桐壺」の帖で触れられていた事柄でした。幼い光源氏があまりに何事も秀でた才能を発揮するので、桐壺帝がひそかに高麗の相人(人相見)に源氏を合わせたところが、

― 「国の親となりて、帝王の、上なき位にのぼるべき相おはします人の、そなたにて見れば、乱れ憂ふることやあらん。朝廷のかためとなりて、天の下助くる方にて見れば、又、その相たがふべし」 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 「国の親となって、帝王の最高の地位につくはずの相をお持ちでいらっしゃる方で、そういう人として占うと、国が乱れ民の憂えることが起こるかも知れません。かといって朝廷の重鎮となって、政治を補佐する人として占うと、またその相ではないようです」という見立て。
 そこで桐壺帝が思うには、

― きはことに、賢くて、たゞ人には、いとあたらしけれど、親王となり給ひなば、世の疑ひ負ひ給ひぬべく物し給へば、 宿曜の賢き、道の人に勘へさせ給ふにも、同じさまに申せば 、源氏になしたてまつるべく、おぼし掟てたり。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫、傍線筆者)

宿曜の優れた道の相人に占わせなさっても、同様に申すので 、源氏姓を名乗らせようと思っておられた。

 つまり桐壺帝が源氏を臣籍降下させた経緯が語られているのですが、宿曜で語られた中味を、この「澪標」の帖で明かすことで、「桐壺」の帖で語られた謎かけの一つが解かれ、さらには今後の物語の展開の予告になっているのです。

 このあたり、先の「須磨」「明石」の帖と並んで、古物語の枠組みをことさらに読者に伝えようとしているかのようです。「須磨」「明石」が、源氏にとって「貴種流離譚」であるとするなら、これは「致富譚」(しかるべきお告げがあって、そのお告げどおりにしていったところが、すべて夢が叶うというストーリー)であって、それもじつは先の帖で「明石の入道」という奇態なる人物を登場させて、さりげなく伏線を張っていたようです。当時おなじみの夢物語を今様に合わせるため、紫式部はずいぶん工夫しているみたいですね。

― つづく ―





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Last updated  2009.05.27 10:20:51
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
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