サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.09.24
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 これまでも何度か触れたのですが、一世(一代限り)源氏として世俗の世を渡っていくのに、彼の頼みとするのは、帝の子であるという貴種の血筋という威光だけであって、それは親王方のような所与(生まれつき)のものではなく、(親王の座を去って、臣籍に降りているので)常に意識して、飾りたてて行かねばならない質のものでした。政界復帰後の彼の威勢が、周囲に大いに畏れられたのは、もともと持っていた資質がそうさせるのではなく、彼のきわめて意識的な振るまい(例えば、兵部卿の宮に対する、ことさらな仕打ちなど)によって、なされていることを忘れるわけにはいきません。

 しかしこうした多分に意識的な振るまいかたには、ある矛盾が含まれていることも紛れもないので、貴種の血筋とはその希少性を守る限り、みだりに俗の世に交わって子孫を残すわけにはいかないのです。彼が数多くの姫君と関係しながら、不思議なくらいに子供が出来ないのは、あるいは彼の無意識の禁忌が働いたかとも思え、その筋の専門家からいわせるとフノーだったんじゃないの、ということになるのですが、たぶんこの問題はもっと深い。源氏自身の意志はともかく、少なくとも紫式部は、彼に子沢山という俗なる幸せは与えませんでした。
 内大臣が世俗の繁栄を何ら憚ることなく、我が世の春とばかり誇ることが出来たのと、ずいぶん対称的ですね。

 さてここで再び、夕霧の登場となります。

―  冠者(くわざ)の君、ひとつにて、おひいで給ひしかど、おのおの十に余り給ひて後は、御方異にて、
 「むつましき人なれど、男子には、うち解くまじきものなり」
と、父大臣、きこえ給ひて、けどほくなりにたるを、をさな心地に、思ふ事なきにしもあらねば、はかなき、花・紅葉につけても、雛(ひゝな)遊びの追従(つゐしよう)をも、ねんごろに、まつはれ歩きて、心ざしを見え聞え給へば、いみじう思ひかはして、けざやかには、いまも恥ぢ聞え給はず。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)

 冠者の君(夕霧)は、(雲井の雁と、大宮のもとで)いっしょに、お育ちになったが、それぞれ十歳を超えてから後は、お部屋も別になって、
「親しい仲とは言え、(女は、みだりに)男の子とは、打ち解けるものではない」


 夕霧は、母の葵の上の出産直後の死後、そのまま母方の里方、祖母の大宮のもとで、他の左大臣家の子らといっしょに育てられたので、当然その中には按察使大納言から引き取った、雲井の雁も含まれているわけです。

― 御後見どもも、
「何かは、わかき御心どちなれば」「年頃、見ならひ給へる御あはひを」「にはかにも、いかゞは、もてはなれ、はしたなめ聞えん」と見るに、女君こそ、何心なくおはすれど、をとこは、さこそ物げなき程と見聞ゆれ、おほけなく、いかなる御仲らひにかありけん。よそよそになりては、これをぞ、しづ心なく思ふべき。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 (雲井の雁の)お世話係の女房たちも、
「何も、(こんな)幼いお心同士のことだし」「長年、見馴れなさった間柄なのだから」「いきなり、分けもわからないまま、引き離して、(どうやって)やかましく注意することなど出来よう」と思っていたのが、女君の方こそ、何とも思っていらっしゃらなかったのが、男君は、そんな一人前の年頃ではないとお見受けしていたのに、驚いたことに、(いつから)どんな御仲に(二人は)なっていらっしゃったのか。離れ離れになってからは、このことを、はなはだ落ちつかなく思っているらしい。

 という経緯が述べられたあとで、いよいよ内大臣の登場ということになります。

― つづく ―





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Last updated  2009.09.24 10:26:16
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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