サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.12.17
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 ところで、ここまでの光源氏と紫の上のやりとりを見ていて、源氏ははたしてどこまで本当のことを言っているのだろう、と思ってしまうのです。夕顔の禍々しい死にざまはもちろん言わないにしても、玉鬘が源氏との子なのか、夕顔の連れ子だったのかということなのですが、どうもハッキリしない。
 これはたぶん源氏自身が、紫の上にはそこのところを、あいまいにしか言ってないからではないかと思うので、実子であれば嫉妬の対象ではありえないのですが、連れ子ならなにしろ前科の耐えない殿ですから、おおいに疑って掛からざるを得ない、という仕儀に相成ります。ここまでの紫の上の不機嫌は、すでに亡くなった人とはいえ、深情け過ぎる源氏の夕顔への哀憐と、それを隠そうともしない光源氏の振るまいから来ていると読めるのですが、それは同時に玉鬘を遊びの道具立てのように見立てている、彼の無神経さにも繋がっていくわけで、それは煎じ詰めていくと、紫の上自身と源氏との過去の経緯にも絡んでこざるを得ない。
 一言でいえば、「私は遊びの対象として、拉致されて来たのかしら」ということになるのです。利発な彼女ですが、明石の方とか朝顔の君とか、このところの様々な源氏に対する鬱屈は致し方の無い所ではありました。

 しかしそこはもうすでに六条院の正妻として、彼女には公けの立場があるわけで、源氏との微妙な心理的関係は当面引きずったまま、表向き極めて華やかな王朝絵巻が、こののち繰り広げられることになります。

― 中将の君にも、
 「かゝる人、尋ねいでたるを。用意して、むつびとぶらへ」
と、のたまひければ、こなたに、まうで給ひて、
 「人数ならずとも、「かゝる者さぶらふ」と、まづ、召し数まふべくなむ侍りける。御わたりのほどにも、まゐりつかうまつらざりけること」
と、いと、まめまめしく、きこえ給へば、かたはらいたきまで、心知れる人は思ふ。心のかぎり、つくしたりし御すまひなりしかど、あさましう、ゐなかびたりしも、たとしへなくぞ、思ひくらべらるゝや。御しつらひよりはじめ、今めかしう、けだかくて、親兄弟(はらから)とて、むつび聞え給ふ人々の御さま・かたちさへ、目もあやにおぼゆるに、今ぞ、かの三条も、大弐を、あなづらはしく思ひける。まして、かの監(げん)が息ざしけはひ、思ひ出づるも、ゆゝしきこと限りなし。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)


 「このような娘姫を、見つけ出したから、(しかるべく)気を使って、親しく挨拶するように」
と、おっしゃったので、こちらへ、お出でになって、
 「取るに足らないで者はございますが、『このような兄弟もいようか』と、すぐにも、呼びつけて下さればよろしいかと。(ここに)お引き移りの際にも、お伺い致しませんことで(申し訳ございません)」
と、しごく、生真面目に、ご挨拶なさるので、(側で聞いているのが)居たたまれないように、(真の)事情を知っている女房達は思う。(筑紫の館は)思う限り、(贅を)尽くした御住居であったが、あきれるほどに、田舎臭かったことは、(今や)紛れもなく、思い較べられるのである。部屋の調度をはじめとして(六条院は)、今ふうに、趣味が良く、親兄弟として、親しく接する人々の容貌やお姿は、(何とも)眼も眩むような感じで、今になって、例の三条も、(帝よりスゴイわ!と思っていた)大弐が、たいした者ではないように思えてきた。まして、あの大夫の監の鼻息荒かった様子など、思い出すのも、鬱陶しいことおびただしい。

 というわけで、玉鬘に付き従って来た侍女、従者たちも一息ついて、乳母の長兄である豊後の介も苦労の甲斐あって、六条院の家司に取り立てられる。さしあたって「玉鬘」の帖は、少なくとも姫を取り囲む人々にとっては、「めでたし」となっておわりに近づくのです。

― つづく ―





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Last updated  2009.12.17 14:47:29
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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