サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.05.04
XML
カテゴリ: カーネーション
「今を語る」ということ

 そもそも周防との不倫エピソードというのが、糸子的美学を「絶対的背理」に追い込むための伏線でもあったわけで、それが「家族会議」と「周防との別れ」での、強がりだけど「潔すぎる糸子らしさ」の見事な造形に繋がっていたわけでした。

― 長い長い記憶を持ってる … それが年寄りの醍醐味とも言える
守り続けて闇のうちに葬るはずやったもんが ウッカリ開いてまう事もある
老いぼれた体に とどろく事 打ちのめす事、容赦のうて
ほんでも … これを見るために 生きて来たような気もする ―

 このあたり「渡辺あや節」とも言うべき名科白ですが、結局生きている限り記憶など消せるわけがない、「背負い続けたままなのが、生きている証」みたいな話になっていますね。
 しかしドラマ自体は何やら「こんな解決で、好いんですか?」と、私たちを追い込んでいるようにも見える。「前言撤回」の構えが、今や観ている側にまではみ出して来ているというような。

 実を言うと三月期のカーネーは、単体のドラマとして観れば決して出来は悪くない。私は三、四週目のナツキ糸子は秀逸で、特に最終週に体現された糸子の言わば「カラリとした死生観」は、見事だったと思っているのです。


 どないしても観る側に対して三月期のカーネーに「二重線を引け」と迫る。しかしいくら引いたところで元の映像が消えて無くなるわけではない。まさしく「先に言うたもん勝ち」の状態に私たちは置かれるわけです。
 となるとやはり私には、周防の娘の話だけでなく三月期全体を覆うズレた「異和」の感触というのが、わざと仕組まれたのだとしか思えなくなって来るのです。
 で、そう仕掛けたのは誰か?私は糸子だと思う。この物語を思い出すたび、観る側が「永遠の『問い』を立てざるを得ない」ように、糸子はあえて「傷口を開けて、そのままにして置く」ことを望んだのではないか?

 「何をバカな!」と言われそうですが、私たちが画面から受ける「異和」は、そのまま糸子の感じる「異和」なのであって、彼女には平成の世が「そのように見えた」のです。
 昭和の時代と同じようには平成の世は振る舞えないとうことを、彼女は少なくとも「隠すことはしなかった」。
 糸子的に振る舞うごと「上滑り」して「笑えない、泣けない」状態であることこそ、平成の糸子の在りようであって、観る側は勘助のエピソードがそうであったように「想像的に、それに関与せよ」と迫られているのです。

 糸子がドラマで振る舞ってみせた「裸眼の心で、何物にも囚われない」仕方を、彼女はまさしく観ている私たちに求めているのです。収まりのいい締め括りで祭り上げられるぐらいなら、いっそドラマ的な整合性を崩してでも「語っておきたい」ことがあったに違いない。
 平成の世は確かに「不分明」な世界なのかもしれないけれど、先が見えないことこそが生きている証、糸子もまた同じ「見えない事況」を生きて来たのでした。先を見通すことなど神ならぬ人間には誰にも出来っこないけれど、少なくとも見えない事況への「構え」だけは示すことが出来る。
 「権力的思考に陥らないように(囚われないために)、絶えず『問い』を立てよ」と。

― つづく ―





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2012.05.05 22:49:46
コメントを書く
[カーネーション] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Calendar

Archives

2026.06
2026.05
2026.04
2026.03
2026.02

Profile

TNサリエリ

TNサリエリ

Comments

TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

Favorite Blog

まだ登録されていません

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: