サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.08.11
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テーマ: ギリシャ(35)
カテゴリ: 旅行
「鳥」

 彼のほかの作品には、そうした意味での無慈悲な「自然」を感じさせる映画など、一つもないのです。

 とすれば、この一見エコロジカルな題材を取り上げたことじたいが、彼得意の壮大なトリックであるかもしれない。「自然」をテーマにした新しい動物パニック映画に見せながら、実際に意図したのは従来どおりの彼お得意の知的な心理サスペンスなのではないか。
 何となく「そうであるかもしれない」と思わせるシーンが、はじめのほうでヒロインのT・ヘドレンが小学校が終わるのをベンチで待つシーン。彼女はせわしなくタバコを吸いながら学校の方を何度も振り返るのですが、そのしぐさが重なるたび彼女の座るベンチの後ろの柵にカラスが次々と集まってくる。で、ふと気づくとそのカラスの数が、とんでもない数になっていて、主人公が仰天するという場面なのです。

 映像だけでどんどんスリルを盛り上げていく、その手際も見事ですが、見ようによっては待ち続ける主人公のイライラ感、ひいては彼女の隠された高慢な性格(確か社長令嬢という役回り)を現しているようにも見えません?もちろん彼女の心理の図式的な説明ということではなくて、本人も気付いていない自身の心の奥底を「鳥」が明示しているということなのです。詳しい筋はすっかり忘れてしまいましたが、確か彼女はこのやって来た漁村にあまり好感を持っていなかったような気がする。
 それが「鳥」の漁村の住人への攻撃という形で、「現実化」しているわけで、「鳥」の不可解な振るまいと主人公の深層心理は、明らかに連動して描かれているのです。

 面白いのは、それが単線的な他者への攻撃という形ではなくて、彼女自身の「心の葛藤」として現れているところなのだと私など考えてしまう。わざわざ好きでもない田舎にやって来たのは、相手役の弁護士(R・テイラー)に会うためでした。そこに何やら「下心」がなかったとは言えないでしょう。
 それが如実に出たのが、先ほどの学校の教師役(S・プレシェット)への態度。一見親しさを装いつつ、深層心理的には「恋敵」としての憎悪が潜んでいたかもしれない。となるとこの教師が「鳥」に襲われて、目をくりぬかれた死体になっているのを主人公が見止めたとき、彼女に去来した「恐怖」というのは、たんなる動物パニック心理に止まらないところがあるはずなのです。言ってみれば「自身の隠れた欲望が、『鳥』によって次々と現実化している」ことに、本人が気付いてしまった「恐怖」というような。

 これって、前に「カーネー」の奈津が、深層心理的には「母親憎悪」というコンプレックスがあって、戦争による「母の死」という現実によって、彼女がそれに気付いたのではないかという話をしましたが、それと似たところがあるのです(というより、「鳥」を知っていたから、そんな話をしたのでした)。



コリントスa.jpg

― つづく ―





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Last updated  2012.08.11 11:44:24
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
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