サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2013.02.02
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カテゴリ: カーネーション
 「そんなことないだろう。脳中枢を通さずに身体だけで反応する訓練を、かぎりなく合理的な手法で編み出したのは日本の『武道』じゃないの?」という反論が返ってきそうです。安易にしゃべると沢庵禅師の「囚われない」思想的ユニーク性を汚すことになりかねないうえに、これを話す私は武道に関してはまったくの素人。はたしてそれでも何らかの意味のある話が出来るのかどうか?というかなり厄介なわだかまりを抱きつつ、それでも話を続けます。

 これも前に話したことがあるのですが、一般に西欧人というのは身体的な痛みに、わりと鈍感なところがあるのではないか?もう少し敷衍するなら、彼らは対象を認識することと、それに対する自身の身体反応を、ごく自然に切り離して振るまえるところがあるのではないか?ということなのです。
 いちばんベタな例をあげるとすると、野球のデッドボールを受けた時の反応の違いに典型的に見られます。メジャーリーグを見ていると相当えげつないデッドボールでもバッターはまず痛がらない、というか明らかに虚勢を張ってでも「平然」としてみせる。それに比べて日本のプロ野球選手の痛がりようは、以前ほどではなくなったにせよ、世界の終わりじゃあるまいし「やり過ぎじゃないの」という印象があったのですが、もちろんそんなことは本人に向って言えるわけがない。
 これは多少の芝居気が双方ともあることを差し引いてもたとしても、やはりメジャーでは事実「痛くなく」、日本では現に「痛い」のではないか?こんなことを言うのは、これまた内田さんの受け売りですが、M・フーコーによると人間はそれぞれの民族誌的在りようによって、「身体の痛みようが異なる」らしいのです。中世の殉教者たちは残酷な火あぶりの刑に「宗教的な法悦」を見出していたらしい。
 となると今どきの日本の野球選手の「痛がりよう」は、その民族誌的な刻印の現れということになるのかどうか?

 もう一つの例を思い起こすのです。ある決定的瞬間におけるカメラマンの構えのようなことなのですが、日本人の場合プロの報道カメラマンであっても、カタストロフのいちばん肝心な場面でカメラがブレる、あるいは決定的場面を撮り損なうということが、一般的に多いのじゃないか知らん。対象を見詰める眼よりも、対象から受ける我が身の影響を「しどけなく」曝してしまうことが多いように思うのです。
 西欧(あるいは日本人以外)のカメラマンたちの画像を見ていると、明らかに我が身を危険に曝しているにも拘わらず、彼らが撮り続ける画像は対象に向けられたまま微動だにしない。第二次大戦中なら例えばノルマンディー上陸作戦の映像は、どう考えたって上陸兵より先にビーチを走り敵に背を向ける形で、突撃する味方兵を正面から撮影しているわけでしょう。「そんなの今どきのパパラッチと同じ功名心のなせる業さ」と言われるかもしれませんが、私はそうは思わない。功名心なら日本人の戦争カメラマンだって大いに持っている、大事なことは「なぜ彼らのカメラは、ブレないのか?」ということなのです。
 同じような話で、爾来日本兵は射撃が一般的にヘタだったという話もよく聞きますね。心の「恐怖」が身体に繋がって、一連の射撃動作を阻害する。これまた一見鈍重そうな米兵のほうが、弾雨のなかでも無用な感情の高ぶりを起さずに、射撃するということが多かったのではないか?
 で、もし日本の軍事教練に「精神性」が強調されていたのであれば、それは日本兵の強さの証明であるよりも、民族誌的な弱さの矯正という側面があったのではないかと疑っているのです。



― つづく ―





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Last updated  2013.02.02 12:11:46
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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