サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2017.06.14
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カテゴリ: エレクトーンの日
レナード・バーンスタイン


 その一つは、この映画が他のミュージカル映画と比べても、恐ろしく「音楽の量が多い」ということでした。「ミュージカルだから当たり前じゃん」と言われてしまいそうですが、いやいやそんなことはない。主要ナンバーの他、2時間半ほどの長尺のほとんど全編に音楽が流れている、と言っていいのではないか。かつて擦り切れるほど聴いた「 サントラ盤のLP 」(50分ほど)では、とてもカバーしきれない分量の音楽だということです。
 さらに、そこに用いられた音楽というのが、マンボありジャズあり現代音楽的書法ありの、「ゴッタ煮状態」を呈しているのですが、決して「混乱」しているわけじゃなくて、最初から最後まで何やら基底のトーンで統一されている。これは明らかにバーンスタインという鬼才が取り組んだ、かなりハイソで野心的な音楽だということが分りますね。そのことについて先日テレビで佐渡裕氏が、「これは最初の口笛の3音が、キーコードになっている」とおっしゃってました、なるほど。

 バーンスタインのこの音楽に対する構え方、彼が傾倒し発掘したと言っていいG・マーラーにも、かなり似たところがあります。「 交響曲第2番『復活』 」のような教会音楽風、鼓笛を用いた「 子供の不思議な角笛 」のような軍楽風、あげくの果ては「 大地の歌 」のように中国の漢詩に着想を得た音階まで取り入れながら、それでも基底トーンはマーラー以外の何ものでもない。
 この「ゴッタ煮状態」そのものから世界を見出す、あるいは我が身をそこに置かずにいられない構えというのは、早い話シベリウスやブルックナーの音楽では絶対あり得ないし、ドビュッシーとかストラビンスキーのような、近代音楽を現代へ結びつけた作曲家でも見られないものでしょう。いずれも西欧クラシック音楽を革新した巨匠ですが、それでも彼らは大きな意味でのヨーロッパ精神というか、ある種の予定調和的「秩序感」という枠内で、そのエートス(基底の思考・行動の様式)を捉えることができるように思う。


 バーンスタインは、予定調和的な秩序感を感じさせる伝統的クラシック音楽の世界より、こうした「ゴッタ煮状態」に身を置くことに、むしろ一種の居心地の好さを見出しているらしい、マーラーのエートスに限りなく惹かれたらしい。で、その基底となっているのは、よく言われるように彼らが同じユダヤ人だったという意識だったでしょう。実際バーンスタインが指揮するマーラーを「血が呼ぶ音楽」と評した人もいましたね。
 しかしそういう部分があるとしても、よく考えてみれば西欧クラシックの音楽界には、歴代ユダヤ系の作曲家や演奏家、指揮者は大勢いたわけで、「だからマーラーの音楽は、ユダヤの音楽だ」と概括して簡単に納得するわけにはいきません。私はもっと個別特異的に、この二人のエートスをみる必要があるように思うのです(それにしてもユダヤ人論はややこしい。民族的宗教的特定が出来ないにもかかわらず、ユダヤ的エートスを保持する集団は現に存在するのです。このことは前に触れたことがありましたが、あまりに話が難しいので、いつかまた別にしたいと思います)。

 さて、そういう前提で「ウェストサイド」を聴いていると、そこから漂ってくる何やらデカダンで独特な「ゴッタ煮状態」の舌触りというのは、いったい何なのだろうと思ってしまうのです。デカダンス(虚無的・退廃的な傾向や生活態度)というのは、まさに「若さ」だけが保持し得る特権みたいな精神のありようなのですが、それはこの現代版「ロミオとジュリエット」という暴力と悲恋の主題には、確かにぴったりフィットしているのです。
 とはいえ、この「ゴッタ煮状態」の響きを、瞬間だけに燃焼し尽くす「若さ」だけを表現した音楽と概括してしまうのも、もちろん無理があるでしょう。





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Last updated  2017.06.14 10:11:56
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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