それにしてもバーンスタイン、ウィーンフィルの「大地の歌」、冒頭だけでなく久しぶりに全曲を聴くと、こんなに洗練された綺麗な音だったかな、と思ってしまいます。私が意を決してこのLPを買ったのが、確か高校2年ぐらいの時、進路問題で何かと鬱屈した気分の反動で、受験とは関係のない西郷信綱の「古事記の世界」や山本七平の「日本人とユダヤ人」、あるいはR・ギランの「第三の大国」などを読みふけり、その合間にこの「大地の歌」とシベリウスの「交響曲第7番」を何回聴いたか分りません(親は大変だったと思いますよ)。私の高校時代と浪人の一年間は、これらの字句と音楽の響きに満たされているのです。 その記憶のままの「大地の歌」、第一楽章「大地の哀愁に寄せる酒の歌」は、J・キングのいささか粗野な歌声に呼応した、荒々しいホルンの咆哮(これ、どうやら猿の叫喚を模しているのですよね)や弦楽器群のドライブ感がすごく、ウィーンフィルでもこんな演奏をするんだと思ったものでした。開始1分45秒ぐらいから何回か繰り返される、 ― Dunkel ist das Leben, ist der Tod.― (生は暗く、死もまた暗い) という詩句が、一曲全体の雰囲気を支配し、私にとっては受験期の鬱屈した気分を思い出させます。