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苫治安

苫治安

2007.10.26
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カテゴリ: カテゴリ未分類
書名:憑神

出版社:新潮社(新潮文庫)
ページ数:357p
発行年月:2007年05月
ISBN:9784101019246
本体価格:514円(税込 539円)

あらすじ 時は幕末、処は江戸。貧乏御家人の別所彦四郎は、文武に秀でながら出世の道をしくじり、夜鳴き蕎麦一杯の小遣いもままならない。ある夜、酔いにまかせて小さな祠に神頼みをしてみると、霊験あらたかにも神様があらわれた。だが、この神様は、神は神でも、なんと貧乏神だった! とことん運に見放されながらも懸命に生きる男の姿は、抱腹絶倒にして、やがては感涙必至。傑作時代長篇。

いや~、この「あらすじ」はイイわ。優秀、優秀。


話は面白い。
面白いけど、なんというか、コミカルなわけじゃないので、そういう軽さを求めて読んではいけない。

それは別として、どうも私はこの作家とは主義が異なるらしく、読んでいると「合わない」感を持つことがままある。
別に話が嫌いなわけでもなし、読んでいけばホロリとさせられもするのだが、なんかこう、「いちばん大切なものが違うのね」って感覚を端々で感じるというか……そんなもん(=いちばん大切なもの)十人十色に決まっておろうと思うのだが、そのうえで「違うのね」感が生じてしまうのは、作家の側もわりとあからさまに主義を反映させているってことなんだろうか(しかし主義を反映させない小説とゆーのもどーかといえば……)。

まぁそれでもぐいぃと読まされちゃうわけで、その筆力おそるべし、については異論はない。
筋立てもいいんだけど、読んでいて楽しいのは、蕎麦屋の親父や、もとの部下(小文吾)や、茶店の親父とのやりとりである。
主人公自身は、実は私はそれほど好きではない。
ただ、主人公をめぐる物語は楽しく、最後は思わずホロリとできる。
それはこの物語に備わるリアリティに負うところも大きく、つまりは当時の御家人の現実を根拠をもって書き込んでいるからなんだろう。

物語を通して、武士道というものが語られている。
これは前の新撰組の話でも感じたのだが、武士の矜持というものがとても大切に扱われている。

これがこの作家のスタンスなんだ。
そのスタンスから立ち上がる、耳の痛い表現も多い。
主人公は何度か徳川の御世(の御家人その他大勢)を「数百年の太平を貪った」ように評するのだが、これってこのまま現代のことでは……?
われわれはまさに「太平を貪っ」ているのでは?
誇りも慎みも失い、何から何まで貪婪に過ごしている、そうした現代への、これは批判なのでは?


蕎麦のようにつるつる読める話ではないが(読みやすい部類に入るはずなのにつるつる感を邪魔する何かがある)、日本語は達者だし、つかえることはない。
メディア化されたものを見る前に読んでおくと、いざってときに違う感慨を持てるかも。

▼この本はこちら。3時間半、だったかな?





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Last updated  2007.10.31 12:57:34


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