
偕楽園の吐玉泉から流れ出ずる寒の水が、地下を潜って岩に伝わり表土に現れる。
寒中だというのに飛沫の立ちこめる一寸した岩場辺りは青い苔で覆われている。
小さな水の命は、此処を伝わり桜川、那珂川を経て太平洋の一滴となる。
*
子規は、水戸から大洗を目指して那珂川を下るとき、寒気がし、動けば体が燃えてくると思って船頭の櫓を奪って漕いだが、船が左右に揺れて爆笑され直ぐ櫓を返したという。
着流しの着物が川面を吹きさらす寒風に棚引き、子規の病弱そうな躯体は30分間、徹底的に冷やされ蝕まれたのであろう。
当時はまっさらな湧水、吐玉泉の水も那珂川の流れの一部となって、彼の櫓に打たれながら強がりをする若造を冷たく垣間見ていたのかも知れない。
結果的に、那珂川の船下りこそが、彼を肺炎-喀血-夭逝をさせた一因だったと思いながらウォーキングの足を速めた。
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