ライフキャリア総研★主筆の部屋

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2004年01月30日
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 お恥ずかしい話だけれど、身内の者が法的トラブルに巻き込まれた。仮にAと呼ぶ。AはBがアパートを借りるときの賃借契約の連帯保証人になった。ところが、Bはなんと1年半にわたって家賃を滞納してしまったのだ。Aはその事実を突然、家主の代理人である弁護士から知らされ、滞納分の家賃である156万4000円を10日以内に支払えという催告受けた。

 がーん!である。そんな大金は一度に支払えるものでない。だいたい、なぜ、1年半もの間、家主は放置していたのか。もっと早く知らせてくれれば、手の打ちようもあったのに。

 困り果てたAに代わって、私がインターネットのQ&Aサイトで質問したところ、「事情はどうあれ、全額支払うのが連帯保証人の義務であるので、四の五の言わずに黙って支払え」というようなクールな回答しか得られなかった。

 曰く、「連帯保証人とは、本人に代わって責任を負う義務があり、本人が支払えるように監督する義務がある。そうでなければ、誰も金や家を貸そうとは思わない」うんぬんかんぬん。どうにも腑に落ちない。回答者は弁護士ではなかったが、もしかすると、取立てサイドあるいは賃貸ビジネス関係者だったのかもしれない。立場が違えば、法的解釈も異なる。法律とはそういうものだと思う。

 それにしても、他人事だと思っていい気なものである。回答者を恨みたくなる気持ちを抑え、私は考えた。困り果てて相談している者に対し、ただ正論をかざすだけでは何の解決にもならない。「人の振り見て我が振り直せ」であることよと、感じ入るのであった。

 あきらめずにインターネットで調べてみると(私はねちっこいのである)、読売新聞の法律相談の記事に、似たようなケースが出ていて、回答者の弁護士は、「1度も催促せずに滞納を見過ごした家主の怠慢は常識上考えられないので、仮に裁判で争えば、減額が認められる可能性もあるのではないでしょうか。家主と減額を交渉してみてはいかがですか」と答えていた。このケースでは、滞納期間は20カ月に及んだという。

http://www.yomiuri.co.jp/life/jinsei/20021011sy51.htm

 私はこの記事をコピーしてAに見せ、希望をもって問題解決に臨むように励ました。Aは早速、家主と交渉し、代理人の弁護士、家主、Aの三者で話し合う約束をとりつけた。これがまたAにとっては難儀であった。弁護士にアポイントをとるべく電話をした際、「電話で済むことだから会う必要はない。一度に全額払えなければ、いくらで分割すれば払えるのか」と強圧的な態度だったという。それでも、「家主も話し合うことに同意している」と告げたところ、1週間後に3者会談を行うことになった。

 まるで取立て屋のような弁護士である。世の中にはそういう専門家がいるとも聞く。交渉するといっても、Aの形勢は圧倒的に不利である。

 そこで私は、東京弁護士会が霞ヶ関で開催している相談センターに出向いてはどうかとAにアドバイスした。

http://www.toben.or.jp/counsel_soudan/counsel_soudan_kasumi.html



 Aは心理的にかなり動揺しているので、30分という短い時間にうまく話せるかどうか、見ていて不安があった。そこで私は、Aから詳しく事情を聞き、質問したい項目などを書面にまとめてみることを思いついた。これを弁護士に見せながら話せば要領よく進み、時間内に的確な助言を引き出すことができ、延長料金を取られずに済むだろうと考えたのだった。

 書面は、5部構成とした。まず、冒頭に相談したい内容について10行程度で簡潔にまとめた。「です、ます」調で丁寧にお願いする気持ちを込めて表現した。

 2番目に、これまでの経緯について時系列で箇条書きにした。A、家主、弁護士の3者がどのような行動を取り、どのような発言があったかについて、感情を交えず、客観的に淡々と事実を描写した。

 3番目に、Aの立場からみて最大の問題点であると思われる事項について箇条書きにした。そのうちの1つが「1年半もの長期にわたって放置した家主の怠慢」である。

 4番目に、質問したい内容について、箇条書きにした。「です、ます」調で丁寧に表現した。

 最後に、持参する参考資料を列挙した。①借主から取り寄せた更新時の契約書(なんと、家主は滞納があったにもかかわらず、更新に応じていて、しかもその事実は連帯保証人のAに知らされなかった。この契約書の連帯保証人の欄の署名は借主による偽称・偽造と思われる)、②貸主の代理人の弁護士から送られてきた催告状、③前述の読売新聞の記事のコピーである。

 こちらの考えたとおり、東京弁護士会相談センターでの面談はスムーズに進んだ。担当して下さった弁護士さん曰く、「書面を準備してくれたおかげで、30分で済みましたね。なかったら1時間以上かかったでしょう。とてもよくまとまっているので、後学のためにこの文書をいただけませんか」とお褒めに預かったという。やったね!

 さて、この相談から得られた助言で、私たちは大いに勇気づけられた。弁護士さんの見解はこうだ。1年半にもわたって放置したのは、家主の怠慢である。家賃滞納の場合、通常は3カ月程度で立ち退きを迫るなどの手段がとられるはず。したがって、滞納分については3カ月程度までは支払いに応じねばならないかもしれないが、全額支払う必要はない!

 暗雲が取り払われた思いである。Aは希望をもって三者会談に臨むことができるだろう。

 さて、今回のケースから私が得た教訓をお知らせしたくて、あえて身内の恥をさらしたのでした。

 青天の霹靂のようなトラブルに巻き込まれると、人は心理的に動揺するものです。しかし、動揺してしまったら負けです。自分の問題として引き受け、これに立ち向かっていくのだという当事者意識を持つことが、解決の第一歩だと思います。



 今回のケースでは、「保証人」「家賃」「滞納」などをキーワードにしてyahoo!で検索しました。

 ただし、中には「似非専門家」も多いので、1人や2人の発言を鵜呑みにせず、ふさわしい人を慎重に選ばなければいけませんね。そうでないと、私がやってしまったように余分なストレスを抱え込むことになりますから。

 相談するときには、心理的な問題と、事実とを混同しないように。怒り、不安、怖れといった感情をひとまず横に置いて、事実関係をよく整理し、何がトラブルの核心にあるのかを見極めることが重要ですね。私がやったように文章化するとうまく整理できると思います。

 心理カウンセリングの世界では、パニック障害などの症状を治す際に、感情モニタリングという技法を指導します。行動療法のひとつですね。

 たとえば、電車の中でドキドキし始めたら、ドキドキしている自分を別の位置から眺める、つまりそのときに湧き起こった感情をモニタリングして、何がドキドキの原因で、どうすればドキドキしなくなるかを考えるようにするのです。



 今回のケースでいうと、東京弁護士会の相談センターに出向く際に、相談したい内容をあらかじめ文書化し、その中で感情的な問題はひとまずおいて、事実のみを客観的に列挙した。この作業がモニタリングの機能を果たしました。

 さあ、勇気と希望をもって、人生を切り開いていきましょうね!

 ……早くも後日談です。なんと、事態は新たな展開を見せました。入居時、つまり一番最初に交わした契約書がBからAのもとに届いたのですが、その連帯保証人の署名はBが偽称・偽造したものでした。印鑑の捺印もなく、したがって印鑑証明も発行していません。この契約は無効だったわけです。

「連帯保証人の欄が空欄だと無効なので、なってくれそうな人の名前を書いてくれと言ったら、B本人が書いた」という不動産屋の証言も取りました。

 ありゃりゃ!

 Aは勘違いしていたのですね。それには理由があります。生活能力のないBを気の毒に思い、親代わりになってあれこれ世話を焼いてあげていたので、てっきり保証人の欄にサインしたものと勘違いしていたのです。Bには他にも色々と迷惑をかけられ通しだったそうです。さすがに懲りて最近では付き合いを絶ち、Bがそこまで追い込まれていたとは想像できなかったと言います。

 思えば、先方の弁護士の高圧的な態度には、ちゃんと理由があったのですね。自分たちにとって不利な条件だからこそ、先手を打って心理的に動揺させ、優位に立って事を進めようとしたのでしょう。あともう少しで、Aは相手の思う壺にハマるところでした。危なかった。

 東京弁護士会相談センターの話によると、いきなり書面を送りつけて10日以内に支払えなどという強硬な態度をとる弁護士は珍しいそうです。やはりダーティな方なのでしょうか。

 まるで、「オレ、オレ詐欺」の変形ですね。

 皆さんも気をつけてください。





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最終更新日  2004年01月30日 17時36分11秒


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