ライフキャリア総研★主筆の部屋

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2004年02月26日
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 自分では「当たり前」とか「フツー」だと思っていても、別の人から見たら「当たり前じゃない」「フツーじゃない」ということがある。

 そもそも、誰かが「それって、全然、フツーじゃないよ」って言ってくれなくても、「自分がフツーだと思っていたことが、ホントにフツーなんだろうか」と疑問に思い始めたとき、

 世界がどんどん広がっていく。面白すぎて興奮しちゃう。エキサイティング!

「なぜ?」

 それは、世界を面白くする呪文。まったく別の、新しい世界をひらく鍵。



「寒じめほうれん草」って知ってる?見た目はフツーのほうれん草と違って、チビで縮れていて少々ブサイク。だから、束ねることができなくて、無造作にビニール袋に詰め込まれて売られている。泥なんかもついている。でも、甘みがあって味は抜群に美味しい。ほうれん草って、甘い食べ物だったんだよねと、幼いころの記憶を呼び覚ましてくれる。

 茹でたほうれん草がちゃぶ台(!)の上のお皿に載っていると、赤い根元の部分を家族で奪い合うようにして食べなかった? 甘くて、とっても美味しかった。でも、最近のほうれん草は、茎も根元も痩せていて、甘くないし、根元はなんだかかび臭い味がしてガッカリ。

 寒じめほうれん草は、幸せだった子供時代を思い出させてくれる懐かしい味。若い人にとってはどうかな……こんなに甘い葉っぱだなんて!と、新しいオドロキがあるかもよ。

●なぜ、「寒じめ」か?



 水を吸わなくなると、乾燥を防ぐかのように葉がぎゅうっと縮まってくる。余分な水を吸わない分、甘さが凝縮され、とくに茎の部分はくだものにも負けないほどの甘みをたくわえる。

 この性質を活かし、冬季にハウス栽培のビニールカーテンの「すそ」を開放して外から冷たい寒気をわざと引き入れる栽培法が、「寒じめ」。

 べたがけ(保温資材)をしたまま1週間ないし3週間、ハウスのすそを開けて寒気にさらす。寒気にさらしている間は成長がほとんど止まるため、出荷調整が可能になるメリットもあるという。

 つまり、高値がついて、しかもよく売れそうなタイミングを計って出荷できるんだろう。

●なぜ、寒いと葉が変形するのか?

 寒じめほうれん草は、普通のスリムでスレンダーなほうれん草とは全くスタイルが違う。葉は縮れていて、押し花にするのに苦労するぐらいと書くと、感じが分かるかな? とにかく、フツーのほうれん草がぺらっと平面的なのに比べると、ごつごつと立体的なのだ。

 茎は短くて、ひと株全体がぺしゃっと潰されたような形をしている。ターサイによく似た形。寒気に当たるとなぜ、こんな形に変身してしまうのだろう。

 野山で花や草を摘むのが好きだった人は、「ロゼット」と聞けばピンと来るはず。冬から早春にかけて、たんぽぽやよもぎの葉っぱが、地面を這うように丸く広がる姿を見たことがあるでしょう。

 地面にぴったりと貼り付くようにしているので、風の影響はあまり受けないし、太陽に向けて平らかに葉っぱを広げているので、光を十分に受けられる。

 つまり、春になって種子から発芽しなければならない1年草に比べると、ずっと有利に成長できるというカシコイ戦略なのだ。

 カシコイゆえに、この戦略をとる植物は結構多くて、他にもオオバコとか……都会の人でも、近くの公園にむき出しの土が残っていれば、きっと見つかるよ。探してごらん。



●栄養的にはどうなの?

 糖分とビタミンCは約2倍程度に増加するそうだ。ビタミンCを壊さないためには、生食がいい。人体にあまりよくないと言われるシュウ酸の量も少ないので、生食に適している。

 よく洗って水気をとり、適当にちぎってサラダボウルに放り込み、レモン汁を回しかけ、カリカリに焼いたベーコンを油ごとジュっとかけて、よく混ぜる。そんな豪快シンプルサラダもいいね。

 加熱したほうが、甘みが際立つ。バターソテーは、下茹でせずにやったほうがいいかも。

 茹でる場合は、「30秒でOK牧場」だそうです。某地方TV局のサイトに載ってたよ。



 私は昨年の今頃に初めて食べて以来、大ファンになった。季節限定でしか食べられなくて、その時期が来るまで首をながーくして待つ食べ物って、いまどき貴重じゃない?季節感が、大ヒットのヒミツかもね。

 ユニクロの野菜・くだもの通販「SKIP」で、私は初めて知ったのだけれども、「寒じめほうれん草」の知名度を全国に広げることに、SKIPは大きな貢献をしたんじゃないだろうか。

 調べてみると、96年ごろから「寒じめほうれん草」の栽培を薦める文献が増え始めている。火がついたのは東北地方だ。

 東北地方は、冬の間は農産物で収入を得たくてもままならない。寒さのために農作物が育たないからだ。その点、「寒じめほうれん草」は寒さを逆手にとることができる。

日本農業新聞 の記事によると、宮城県が発祥の地だとか。現在では、秋田、岩手、栃木、群馬、茨城などに産地が拡大している。

 商品名はさまざまで、「ちぢみホウレンソウ」といった名前でも売られているようだ。

●そもそも、ほうれん草の歴史が気になったりして

 ほうれん草は、漢字で「菠薐草」と書く。「菠薐」はペルシャのことで、ペルシャやトルコで古くから栽培されていたものが、イスラム教徒の手によって、東西に伝わったという。

 日本には16世紀に中国を経て伝わった。江戸初期の寛永20年(1643年)に出た料理本「料理物語」によると、おひたしやみそ汁、あえ物などにして食べていたことがわかる。

 幕末に刷られたという食物図の木版画に載っているほうれん草の葉は鮮やかな緑色でギザギザに、根元と根は赤く描かれている。

 葉が丸みを帯びた西洋種が持ち込まれたのは明治以降。現在は、東洋種と西洋種を掛け合わせたものなど数10種があり、1年を通じて店頭に並ぶ。

(以上、 読売新聞 の記事より)

 江戸時代じゃ、それほど古くないんだね。ほうれん草のおひたしだなんて、いかにも伝統的な和食のように思えるけれど、あれだけじゃ、腹にたまらないからね。ある程度、豊かな時代になってからでないと、普及しなかっただろう。

●大ヒットの裏には?

「寒じめほうれん草」は、その見た目の悪さから、最初は評判がかんばしくなかったらしい。生産者は「一度食べてもらえば、分かってもらえるはず」と自信を持っていたのだが、96年ごろから普及促進活動が盛んになったことを考えると、ヒットまでには6~7年の歳月を要している。

 文字通りの「冬枯れ」に悩む寒冷地の農家にとっては、救世主のような作物とも言えるが、寒さを逆手にとる、あるいは寒さを味方につけるということは、半面、過酷な労働条件を意味するわけですね。

収穫作業の様子 を見ると、なかなか大変そうだ。

 前述のとおり、「寒じめほうれん草」はロゼット状になって地面に張り付いている。その地面は、寒気にあたって夜間から明け方にかけて凍りつく。収穫時はシャーベット状になっているのではあるまいか。

 その冷たい地面から、形が崩れないように茎ごと「こそげ取る」ようにするのだろう。

 私は、手が冷たくなるのがとっても苦手で、冷えると背中から全身にかけて悪寒が走ってしまう。ホカロンと交互に触らないと、収穫作業なんてできそうにない。でも、そんなドンくさいことをしていたら、全く役に立たないだろう。

 ただし、そんな苦役は見事に報われるようだ。

「2ウネもあれば牛1頭分くらいは稼げるぞ。おまえもやったらどうだ? 教えてやるぞ」

 こんな書き出しで始まる 記事 を見つけた。

「朝霧高原の寒さの中でじっくり育つ富治さんのホウレンソウは中身も充実。1袋200gが出荷規格だが、たった4株でいっぱいになってしまう。1袋100円で「道の駅」に出荷している富治さん、わずか幅1・5m、20mのウネ1本で3万円を売り上げる。10本も播種すれば、8000kgの乳を出してくれる乳牛1頭分の1年間の稼ぎだ」

 ううむ。農業を営んでいる人は、この数字にピン!と来るのかもしれないけれど、門外漢はただ漠然と「他の作物よりもワリがいいのだろうな」と想像するのみだ。

 もうひとつ、 興味深い記事 を見つけた。

「Iターン」つまり、都会を捨て、自分の生まれ故郷でもない、見ず知らずの土地で農業を始めた若夫婦が、「寒じめほうれん草」の栽培に成功し、地元で「優良農家」として認められているという。以下、引用。

>岩手県のJAいわてくじは、冷涼な気象条件を逆手に取ったホウレンソウ栽培で販売高10億円を誇る。春から秋は「雨よけ」、冬場は「寒じめ」と特色ある栽培で産地を拡大する。

>4年前、普代村にIターンした梅垣博継さん(39)、かおりさん(32)夫妻はホウレンソウ農家として自立して3年目だが、今では産地をリードする優良農家に育っている。

>「東京での味気のない生活に嫌気が差していた」と、かおりさんは振り返る。システムエンジニアだった二人は、コンピューター相手の毎日に、田舎暮らしがしたいという思いを募らせていた。そんな時、東京で開かれた岩手県の新規就農説明会で、久慈市の条件に魅力を感じた。

>農業にはまったく縁がなかった。しかし地元の人の協力と、県、村、JAの助成を受けて自立、1年目に苦労したもののほぼ順調。5棟だったハウスは16棟に増え、年間3,800ケース(1ケース5キロ)を出荷する。今年はさらに拡大する予定だ。

 なるほど。新参者は苦労が多かっただろうが、古参に教えを請いつつも、自分たちの存在をしっかりと根付かせるには、従来にない、差別化された戦略=「寒じめほうれん草」が味方したのではないだろうか。

●というわけで

「寒じめほうれん草」にも、いろんなストーリーがあるのだなあ。明日は、じっくり、じっくり味わいます。



 寒じめほうれん草をたっぷり使って、常夜鍋を作ろう。毎日食べたいぐらい美味しいから「常夜(じょうや)鍋」と呼ばれるもの。

 鍋にあらかじめしょうゆ味のスープを入れて煮込む方法もあるけれど、私はシンプルな「しゃぶしゃぶ方式」が好き。具はあれこれ入れずに、豚肉とほうれん草のみ。長ネギとエノキダケぐらいは入れてもいいかな。

 ベースは水と酒が半々。昆布を入れてもいい。にんにくとしょうがのかけらもぶち込む。

 煮立ったら豚肉の薄切り(ばら肉がいい)を泳がせ、ポン酢でいただく!大根おろしを用意しておこうか。

 お肉を堪能したら、次はほうれん草。くたくたになる前の、しゃきしゃきした状態で楽しみたい。

 香り豊かな新ごぼうも手に入ったので、ささがきにして入れたりして。

 そうそう、豚肉料理にはドイツワインが合うんだっけ。でもポン酢だから、やっぱり日本酒がいいかな。





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最終更新日  2004年02月26日 21時38分52秒


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