ライフキャリア総研★主筆の部屋

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2004年03月10日
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 タイムリーな話題だったせいか、昨日の日記はこのHPを開設以来最高のアクセス数(695!)を記録しました。掲示板にも多数の書き込みをいただき、意見の交流ができたことをうれしく思います。ありがとうございました。

 さらに問題を掘り下げて考えたいので、マスコミの自殺報道のあり方について、少しずつ考えてみたいと思います。今日は気分を変えて、「です、ます」スタイルで。

 浅田会長夫妻の自殺について、「死ぬ前に全てを明らかにしてほしかった」「逃げないでほしかった」「死ぬのは弱虫のすることだ」という感想を抱いた人も多いようです。それもごく自然な受け止め方だとは思います。

 私はというと、カウンセラーとライターを兼業する者の視点から見て、真っ先に頭に浮かんだのが、昨日の日記に書いたとおり、「マスコミの過熱報道が殺してしまった」という苦い思いと、「浅田会長夫妻は急性のうつ病とも言うべき状態に追い込まれていたので、精神科医やカウンセラーによるケアが必要だった」という考えです。

 カウンセラーといっても、私の専門はキャリアカウンセリングなので、正直言ってうつ病のケアについての知識はごく基礎的なものしかありません。また、うつ病は専門外のカウンセラーの手に負えるものではないから、「絶対に抱え込んではいけない!ケアをするなら精神科医との連携が条件。下手に手を出すと患者に死なれてしまう」と言われるので手出しができません。

「急性うつ病」という言葉は、私の勝手な思いつきです。でも、もしかすると本当に「急性うつ病」という考え方もあるのかもしれないと思い、インターネットで検索してみました。

 そこで見つけたのが、うつ病の基本的な知識について、実に分かりやすく説明している あるクリニックのHP です。書かれている内容をなぞりながら、今回の事件の意味を理解しやすいように文脈を引き込んでみましょう。

 人は環境の激変に見舞われると、うつ状態になるものです。抑うつ感情の経験ともいいます。配偶者の死、離婚、近親者の死、失恋など、愛情や依存の対象を喪失したときが一番なりやすい。これを「対象喪失」といいます。   



 そのときに心の中でどんなことが起きるかというと、急性の不安状態になったり、現実を否認したり、回想にふけったりといった、様々な感情が繰り返され、悲しみの渦の中に飛び込んだような状態が続きます。これを「悲哀の仕事」(grief work)といいます。形式だけではなく、自分の内面で喪に服し、死者(失われた対象)を悼む自分自身や、死者(失われた対象)とゆっくり対話するような作業といえるでしょう。

 多くの人はやがて悲しみから立ち直って「悲哀の仕事」を完結でき、未来に向かって現実を生きることができるようになるのです。

「悲哀の仕事」は、だれでも通らなければならない道です。落ち込みはあっても、仕事や家事などの日常生活を維持していけるのであれば、「正常範囲のうつ状態」と考えられます。ところが、このような「対象喪失」をきっかけにして、本当のうつ病になってしまうこともあるのです。

 このような「正常範囲のうつ状態」という知識を援用すれば、浅田会長が味わっていたであろう心の痛みの一端が分かるような気がします。だからこそ、社会的責任を追及するばかりでなく、その一方で、うつ状態へのケアが必要だった。それがなされなかったために、浅田会長は「うつ病を先取りした状態」あるいは「急性のうつ病」とも言うべき状態になってしまい、自殺を選んだのではないでしょうか。しかも、高齢者は、うつ状態から本物のうつ病になりやすい……。

 正常か異常かでいえば、彼はもはや正常ではなかった。マスコミの過熱報道が、病人の背中を押して、奈落の底へ導いてしまったと言えるのではないでしょうか。

 ……。

 浅田会長夫妻の後追い自殺……が出ないことを祈るばかりです。

 しかし、現実には、会社の社長や政治家、役人といった、社会的に高い地位にあり、重い責任を負っている人が、会社の倒産、汚職の疑惑、不正行為の発覚などで脆くも崩れ、自殺を選ぶケースが少なくありません。

 浅田会長夫妻が自殺した前の日には、東京都目黒区の区長が、自宅の階段の手すりに荷造り用のビニールひもをかけ、パジャマ姿で首をつっている姿を妻に発見されました。71歳でした。

 薬師寺区長をめぐっては、旧区役所庁舎の売却にあたって商社と随意契約を結び、不当に安く売ったとして、区議が損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こすなどしており、まさに疑惑の渦中にありました。

 自殺は「文化」というと語弊がありますが、どこかハラキリの思想を引きずっているところがあるのではないか。自死をもって償い、全てを終わりにしようとする思想。こう表現すると、非常にエゴイスティックに感じられます。思想というより、異常心理といったほうがいいかもしれない。もとを正せば「うつ」というビョーキかもしれないんですもの。



 自殺という選択肢を暗に手渡してしまうのは、マスコミのお客さんである私たち一般市民なのかもしれない。

 でも、「辛い気持ち」「自分を責める気持ち」は分かるけれども、死をもって償っても、何も解決されないよと、私は言いたい。

 今回の2つの自殺事件の報道では、「死をもって償っても、何も解決されない」とコメントする記事が多かったけれども、「辛い気持ち」への共感を表す記事は……全ての新聞をチェックしたわけではないので言い切れませんが、まあ、フツーはそんなふうに書かないでしょうね。

 自殺報道の記事には、「よい子は決してマネをしないでくださいね」的な但し書きが、たとえ相手が大人であっても、何か必要なのかもしれません。そうでないと、うつ状態の人の目に触れさせるには、あまりにも危険な着火役になりかねません。

 配慮のない報道は、自殺の模倣を誘い、結果として群発自殺を招いてしまうとして、アメリカでは自殺を予防する機関がマスコミに向けた勧告をし、自制を促しています。一方、我が国においても厚生労働省において自殺防止対策有識者懇談会がつくられ、「自殺予防に向けての提言」を発表しています。その中に、「報道・メディアに望まれること」として4つの提言を掲げています。



2.ある人の自殺が生じた結果、それに影響を受けた複数の人々の自殺が誘発される場合(群発自殺)があり、これは、マスメディアの報道等によりさらに惹起され、自殺予防対策を講ずる上で、重大事項ではないか。

3.マスメディアが自殺予防のための建設的な情報を報道するなど、自殺予防等を考慮したマスメディアによる自殺報道のあり方への留意が必要ではないか。

4.インターネット上の「自殺」関連サイトは、自殺を促す内容から自殺予防の内容に至るまで、様々であり、インターネット上における自殺関連情報にも留意が必要ではないか。

 要は単なる事実の伝達ではなく、偏見防止、自殺防止、模倣防止を意識した社会教育的な「ただし書き」が必要ということでしょう。

「ただし書き」といえば、神戸市の小学生連続殺傷事件の犯人として関東医療少年院に収容されていた男性の仮退院の事実が報道されましたが、毎日新聞のは異例の「おことわり」と題する記事が添えられていて、これはなかなか画期的であり、新聞が「犯罪報道の犯罪」を繰り返さないためのひとつの試みでもあるなあと感心させられました。つづく。





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最終更新日  2004年03月11日 02時43分12秒


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