のらりんくらりん

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2023年08月06日
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テーマ: 花に学ぶ(488)
カテゴリ: 花を愛でる
以前、夜勤をしていた洋菓子会社でのこと。
会社の敷地内のあちらこちら、誰かが植えたとも思えない様な場所に
テッポウユリに似た白いユリ が咲いていた。
同僚のKさんが花が終わってできた蒴果を
いくつかもぎ取って小袋に入れると

「家の庭に植えて白ユリでいっぱいにしようと思うんだ~」ウィンク

なんてこと言っていたのだけれど
Kさん曰く

「種でもむかごでも花を咲かせることはできるのよ」クール


当時の私はユリは球根でしか咲かないものだと思っていたので
ちょいと驚いたことがある。
あれから十数年・・・
Kさんは庭いっぱいにあの白いユリを咲かせることができたのだろうか・・・



​​  テッポウユリ ​​

「白く咲くユリはテッポウユリ」
っていうのを誰に教えてもらったのか、祖母か生け花の先生か
だいぶ前から知ってはいた。

群馬に里帰りする時は途中の道の駅で
墓前と仏前に供える為の花束を買ったもので。

ちょいと華やかに見える。

ご近所のお庭にも 6月 のこの日綺麗に咲いていたのはテッポウユリ。

テッポウユリ

テッポウユリ
九州南部から沖縄にかけて分布 する 日本固有 のユリで
開花期は ​​4~6月​ ​​
草丈70~100cm程、 葉は ​肉厚​ で葉幅が3cmほどあり 幅広
花は純白で ​甘い 芳香 のある​ 横向きでラッパ状
​​花長は 10~15 cm​​ 、直径 5 cm程

しかし、不思議なことに花屋でしか見ることがなかったはずの
白いユリが、ココ十数年の間に
そこここに咲く姿を見かける様になった。
山の斜面、民家の庭、道路端、公園の植え込みトカトカ・・・

1本数百円したテッポウユリが、有難みも無くなるかの様に
そ~んな場所に咲くワケないか・・・しょんぼり
見ればあのテッポウユリとはちょいと様子が違う。
昔と違って今はナンでも教えてくれるネットを見れば
かの白いユリの正体は・・・
​​
星星星 タカサゴユリ(高砂百合) ​ 星星星
IMG_2747

(2022年8月撮影)​​

​タカサゴユリ​

台湾 に自生​​
するユリで ​​開花期は 8月~10月 ​​ ​​​​​​​
タカサゴというのは台湾を意味する沖縄の言葉の「タカサング」による
日本には 観賞用に1924年 (大正 12年)以降導入

白くラッパ状の花の外側に​ ​​ ​​紫赤色の筋​​​​ が入る​
花長は15~18cm ほど
テッポウユリに比べ 細長く急につぼむ

草丈30~150cm程、 葉は細く繊細で密 なので
「ホソバテッポウユリ」 とも呼ばれる。

タカサゴユリの原種 ​​ があるという話ウィンク

IMG_2743

​毎年、時期になると 帯化 した花がたわわと言ってしまう程に
多くの花を咲かせたニュースが流れているのを見る。
この年、我が家の近所にもこ~んな姿を見せたユリがある。

タカサゴユリ
(2022年8月撮影)

タカサゴユリだと思われる。
(私の知る限りでは4~5年以上ココで咲いてる)
見事、見応えあるとも言えるけれど
こうまでなるとユリの花としての風情も何もあったものでなく
偶然にできてしまうものとは言え、見世物の様でちょいと残念な感じもする。
​​​​

IMG_1533

タカサゴユリは、他のユリに比べると
​​ そうで
日本産のユリが1つの実につき 50~300個 に対し、
タカサゴユリは ​1000~1500個​
1つ1つの種子は軽く、 にのって散布​ されるという。
確かに・・・
この帯化したタカサゴユリのある家の周りのお宅に
しらばっくれて咲いているタカサゴユリの姿がある。
普通の雑草と呼ばれる花なら抜いてしまうであろう
門扉脇の植え込みにあっても咲かせて貰えるのは
ユリの姿をしているからの役得なのだろう。

IMG_2752

種から発芽すると1年目で花が咲く
というタカサゴユリ
私の行動半径内にはこんな場所もある。

IMG_2769

この一帯こんな感じで・・・
タカサゴユリらしきユリの種が拡散したらしく、
常駐するシャリンバイの間に生えたススキなんぞを
押しのけて生えたい放題、咲きたい放題

IMG_2765

そんな図々しささえ感じてしまうタカサゴユリらしきユリが
多い中、ナンか所かにちょっと雰囲気が違うユリを見つける。

赤紫のスジが無く、葉が肉厚だったり太くもなく細くもなく、
タカサゴユリらしくない。

「君の名は・・・?」ワカラン

植物が聞いて答えてくれるなら、私の日頃の悩みは解消する。

IMG_2761

シンテッポウユリ​ というユリがある。
​​ タカサゴユリ (台湾原産の外来種)​と
​​ ​テッポウユリ​ (在来種) を交配した ​園芸種(雑種)​

テッポウユリ​
​需要期の お盆の切り花 には早過ぎる

​短期間で開花 ​​ する ​タカサゴユリ​
​純​​​白花​​ ​​ テッポウユリ の特徴を併せ持ち
​​8月中旬に開花 するように育成​​​ されたのが ​シンテッポウユリ​ なのだ。



IMG_2756
​​​​​​​​​​​​​​​​
​1928年(昭和3年)頃から交配を始め​
1939年(昭和14年)頃、長野県の西村進氏が
タカサゴユリとテッポウユリを交配させて種間雑種の育成に成功。
​​以後、 多くの園芸品種が誕生
総称としてシンテッポウユリ と名付けられた。​​

(「雷山」「浅間」「乗鞍」「西村テッポウ」「オーガスタ」等々)

種をまいて1年で収穫できるシンテッポウユリは、
栽培農家にとって魅力的な品種
​産業的に 大量に作られた​シンテッポウユリは ​​​​ 露地 ​​​​ で作られる​​
​その種が ​風に乗って各地に散逸​ していった​
・・・という話。

高さ60㎝以下、花の外面が紫赤色、葉の幅が4~13㎜=タカサゴユリ
高さが60㎝以上、花が紫赤色を帯びない=シンテッポウユリ
・・・と推定
ともあるが、​

​自然交雑も起こすため、外観では分類は困難​
最終的には遺伝子の検査が必要
ともある。


​​​​●​​​​ ​背丈においては​
気象条件、種子から何年目の球根か、温度状態等で変化の幅が大きい
(ユリは低温の地域ほど背丈がのびるらしい)​

近年、紫赤色のないタカサゴユリも存在するそうで
タカサゴユリを含めてシンテッポウユリと呼ぶこともある
という・・・しょんぼり

IMG_2753

要するに、移入された タカサゴユリ
人間の都合で人工交配されたそのタカサゴユリと
テッポウユリの子孫 シンテッポウユリ
日本という広大な土地で野放しにされて自由交配。
いつの間にやら見た目ではどっちがどっちともつけにくいユリの花だらけ。
って・・・ことなんだろうしょんぼり

私が上記したタカサゴユリらしきタカサゴユリももしかしたら
タカサゴユリ似のシンテッポウユリかもしれない?!・・・



​​
そもそも・・・
ユリの類は同じ場所での生育は
連作障害(土壌病害・虫害・生理障害等による)が起きやすく
毎年見ていたのにある年を境に一つも生えてこなくなってしまうという。

そういえば、
去年土手にたくさん咲いていたことを思い出し、
タカサゴユリらしきユリの花の写真を撮影しようと翌年行けば
1本も無くなり駆除されてしまったのかとガッカリしたけれど・・・
そういう事情もあるのだと思い知らされたりもする。

長居できなくなったタカサゴユリは
その1本から何百個という種を飛ばし
別の地へと移り再び花を咲かせるわけだ。

タカサゴユリは繁殖力が旺盛なことから、
近縁な在来種と交雑 する可能性がある。
数種の植物病害ウイルスの宿主 であることから
在来植物種に媒介 するリスクも想定され
環境省の「生態系被害防止外来種リスト」において
​​「​その他の総合対策外来種」​​​ となる・・・という。

手折ったり、根こそぎ抜いてしまうのは心痛く感じるし、
白く美しいユリの姿に心奪われない人はいないだろうが
しかし、タカサゴユリとシンテッポウユリは地域によっては
同一扱いされ 在来種を守る為に駆除 している地域がある。
と、思えば
ネット上では双方の切り花はともかく、
​苗、球根、種を売買 ​​
していたりもする。
現実行われていることが矛盾しているのが不思議でならないしょんぼり

タカサゴユリ、シンテッポウユリは暖地性で、
寒冷な北海道や北東北などでは見られない・・・
なんて話もあったけれど
通販で売買されている以上、自分の側で育てようとする者がいて
温暖化が進行し続ける昨今、
タカサゴユリとシンテッポウユリが日本全国に
広がり続けて行くのが目に見える様な
そんな危機感を感じずにはいられない。


(常々思うけど・・・人間てのは自らが良かれと思ってやったことで
​ 後にあたふたする生き物だ それこそ自分達の蒔いた種って話。

​​​​​​​​​​​ 人生の楽しみ
(ヤマユリ 2011年2011年7月丹沢麓にて撮影)





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最終更新日  2023年08月08日 23時59分20秒


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