才気溢れるという言葉があるが、『レオン』までのリュック・ベッソンは、まさしくそれに相応しい映画監督であった。
モダンな中にも、クラッシックな香りがほのかに匂い、兇暴なバイオレンスの中にも、鋭利な繊細さが同居しているのである。
リュック・ベッソン自身のアメリカ映画への傾倒ぶりとは裏腹に、彼の作品には、やはりフランス映画のDNAが息づいているのだ。
初めて、『サブウェイ』を観たときは、その大胆かつデリケートな映像感覚に舌を巻き感嘆したのを、今でも鮮明に覚えている。
そして、『サブウェイ』のスタイリッシュな美術を、あの偉大なアレクサンドル・トローネルが担当していたと知り、二度驚かされたものだ。
麻薬中毒のイカレタ不良娘が、警官三名を射殺し、無期懲役の刑を言い渡される。
しかし、彼女の素質に目をつけた政府の秘密組織員ボブが、彼女を殺し屋へと変貌させる。
ニキータを演じる、アンヌ・パリローの本能を剥き出しにした野獣のような兇暴さに圧倒される。
泣くことと怒ることしか知らなかったニキータが、教育係のジャンヌ・モローから女になる手ほどきを受け、ルージュの引き方や微笑み方を教えられ、女に目覚めていくシーンが印象的だ。
「女」に変貌するといっても、勿論、レディーになるわけではない。
「美しさ」は、女殺し屋の武器なのだ。
23歳の誕生日。ボブとふたりだけのレストランでの食事が許される。
黒のドレスと真珠のネックレス姿のニキータがボブからプレゼントを渡され、少女のようにはしゃぐ。
喜びで胸をときめかせながら包みを開け、その中身が拳銃であることを知ったときのニキータの失意の表情が痛々しい。
殺し屋としてのデビューを壮絶に飾ったニキータは、ジョセフィーヌというコードネームをもらう。
ところで、彼女は、「女の武器」のもうひとつの使い方を身に付けてしまっていたのだ。
まるで用意されていたかのように、スーパーのレジ係マルコと恋に落ち、当然のように同棲を始める。勿論、マルコは彼女の正体を知りはしない。
殺し屋とスーパーのレジ係。
ニキータは、いつ如何なるときでも殺し屋であらねばならぬのだ。
浴室のドアを隔ててマルコと会話を交わすニキータは、その宿命に泣きながらも、浴室の窓から標的を狙い、ライフル銃で射止める。
そして、マルコは何もかも理解する・・・。
行方をくらましたニキータの身を案じるマルコとボブの男ふたりが、心理的な三角関係を匂わせながらも、センチメンタリズムを感じさせずに会話するラストシーンが哀感を漂わす。
愛に目覚めた女が、愛することを禁じられる、切なくも厳しい罰である。
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