映画は最後まで観る子のブログ

映画は最後まで観る子のブログ

PR

カレンダー

2021.08.07
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類



1972年のミュンヘン・オリンピック開催中に起こったパレスチナゲリラ”ブラック・セプテンバー 黒い九月”によるイスラエル選手団。イスラエル機密情報機関”モサド”は暗殺チームを編成、報復を企てた。





命をかけた熾烈な報復合戦の果てに残るのは大いなる無情か




この映画、物凄く暗いけど好き。初見は劇場まで見に行った。 しかも友達と。

最後のシーンでめちゃくちゃ気まずかった覚えがある笑




でも、なんか 心の残る映画 の一つになっていた。単純に話の筋は子供でもわかっていたし、最初は優位に立っていた報復合戦も、ひとりまた一人と仲間が狙われはじめた頃から、色々と狂いだすところも子供心に 恐怖 だった。まさに 深淵を覗き込むとき深淵もまた君を見ている 的な感じかな。

大人になってもう一度見てみると、より理解が深まった。


誰が決定的に悪者なのかを明確にしないのが、中立的でいいと思う。





お話は1972年の ミュンヘン・オリンピック の最中、 パレスチラ系のゲリラ が宿敵の イスラエル選手団 が居住する建物に押し入って彼らを人質に取った、 実際の事件 から始まる。結局この事件は、飛行場まで連れて行かれた選手たちはそこで皆殺しにされ、ゲリラたちは逃げおおせるという結末を迎えてしまう。一連の事件に憤慨し たイスラエル諜報機関モサド は、このゲリラたちに対する報復を決定。そのリーダーに抜擢されたのが、 イスラエル人のアヴナー だった。アヴナーたちは莫大な資金を背景に次々首謀者の情報を炙り出し、一人一人確実に暗殺していく。だが、パレスチナ人たちも黙ってはいない。アヴナーたちが動くたびにパレスチナ人たちも報復を開始し、やがて報復合戦は血で血を洗う壮絶な戦いへと変貌する。孤立無援となっていくアヴナーたちだが、頼りのイスラエルさえも表立ってはアヴナーに関与していないと表明し、梯子を外された形となる。 誰が敵で誰が味方か 、、疑心暗鬼になったアヴナーは徐々に精神を病んでいく、、



この作品が心に残る理由はいくつかあるかもしれないけど、その一つが、 全ての人たちが平等 に描かれているというところじゃないかな。


全体的にものすごく淡々と流れていて、 起伏がないところがまた怖い。






この映画に出てくるパレスチナ人、特に首謀者としてモサドからメタクソに極悪非道だとレッテルを貼られた人たちも、 ごく普通の人間 として描かれている。一歩町に出れば、振る舞いのいい紳士だし、妻も子供も大切にしている家庭人だし、ホテルのバルコニーでたまたま居合わせた隣室の客にも愛想よく挨拶する、そんな人たちだ。



もちろん、無抵抗のイスラエル人を殺害したのは断じて許されることじゃないとは思う。



そこの ギャップ? みたいなのを狙ってるのかもしれないけど、この映画を通じて、アヴナーたちに 絶対的な正義 があると感じる人は少ないと思う。極悪非道って何?自分たちの正義って何?自分たちのしてることって何?って問わずにはいられない。だったらアヴナーたちはどうなの?紳士を撃ち殺して、人を爆死させても次の日は普通に食事をとっている。妻の出産にはそわそわしてるけど、結局のところ人殺しに躊躇いがない。 パレスチナ人ゲリラとアヴナーたちにどれほどの崇高な理念の差があるのか?


なんかスピルバーグ氏がそんな疑問を呈しているように、勝手に感じた。 あくまで勝手にね。





作戦は最初こそ順調だけど、雲行きがすぐ怪しくなる。事態はアヴナーたちが思っているよりも複雑で、パレスチナの有力者を失いたくない アメリカ まで関わってきたり、一筋縄ではいかなくなってくる。頃合いだと見て本国に返されるが、アヴナーを表立って称賛する者はいない。彼という存在も、そして報復チームも、 イスラエルとは無関係 だとされているからだ。アヴナーはやがて祖国イスラエルを離れ、遠いアメリカの地で残りの人生を過ごしていく道を選ぶ。




作戦全体を見ても、モサドの方の対応の薄情さがかなり目立つ。



アヴナーたちを招集して危険な任務にあたらせているのに、 せこく資金に口出し したり、 爆弾を作ったこともないような素人 を作戦に参加させたり。報復をした時、矢面に立って狙われるのは絶対に首謀者のアヴナーたち。パレスチナゲリラがそうだったように。なのにバックアップが薄くて、当然のように次々仲間が死んでいくことになってるし。 蜥蜴の尻尾きり だよね、こんなの。 理念とか信念 とかを利用して、いいように使われてるだけだよ。アヴナーは 裏社会の情報屋 みたいなのにも関わってしまったし、今後死ぬまで、パレスチナの報復を恐れて生きて行かなきゃいけないんだよ。ベッドでは寝れず、 クローゼットで寝ること になるんだよ、、





結局、イスラエルに残ってても、監視されたり疑われたりで大変だろうから、アヴナーの選択は良かったと思う。この一連の作戦で彼に残ったものは何なんだろうね。



でも最後のラブシーンはいるのか?笑


子供の頃はマジでめちゃ気まずかったよ、このシーン笑

今はなんとも思わないのも、それはそれで悲しいけど。





あともう一つ、子供心に衝撃だったのが、 女殺し屋に報復 をするシーンかな。


あんなに愛想よく近づいてきた人物が殺し屋だっていうのも衝撃だし、結局アヴナー一味だったら誰を始末しても良かったっていうのも衝撃だし、作戦途中に報復するんかーいっていうのも驚くし、色仕掛けでも全然アヴナーたちの意思は変わらないのも驚きだし、あの 小さな豆鉄砲? で人間死ぬんかーいっていうのも衝撃。死にゆく彼女が自分の死を確信して、猫に別れのキスをして、デッキにあるチェアに腰掛けるのが、、 静かで淡々としているけど、だからこそすごく衝撃的



一番は死んだ後、 アヴナーの仲間がはだけた彼女をそのまま放置しろって言ったところ。



なんか 人間の尊厳 を、最後に残ったわずかな モラル を突き崩すのってああいう感じなのかなと思った。


私は女だからか(多分関係ないと思うけど)、そのシーン はすごく衝撃的 だった、、めちゃくちゃかわいそうに思えた、彼女が。もう死んだんだから、それ以上はしてあげないで欲しいと思った。死んだだけでいいじゃん、それ以上彼女を辱める必要があるの?あんな状態で発見されるのが、どれだけ屈辱的か、、これは別に女性に限らず、男性にも言えることだけど。現にそう命じたおじいちゃんはこの事を痛烈に後悔してたし、その時のは感情が沸騰しすぎて制御できなかったんだと思うし、仲間が殺されて憎いのはわかるけど、、 ただただ可哀想。



全てにおいて無情、、


でも、 たまにはそういう映画もいいよね。






配役的には、 アヴナー役にエリック・バナ。 同年代の作品だと ハルク とか トロイ とか、 ブーリン家のヘンリー8世 とかかな。観たことあるはずなのに、なんだかあんまり 印象に残ってない笑 誠実で真面目そうだけど、それ故に狂気じみた表情になっていくアヴナーが結構当たり役かも。アヴナー一味で最もアウトロー的な男・スティーヴには、007のジェームスボンドでお馴染みの ダニエル・クレイグ。 6代目のボンドです。ミュンヘンの翌年にはボンドになってます笑でもあまり 印象に残らないんよね彼 、トゥームレーダーのイメージが強すぎるのかな。トゥームレーダー繋がりだと、女殺し屋に殺されるのが キアラン・ハインズ。 後、何かにつけて怪しいのと金にうるさいモサドのエフライム役が説明不要の名優 ジェフリー・ラッシュ。 すごく好きな俳優さんの一人。大作パイレーツオブカリビアンが有名だけど、 英国王のスピーチ が特に良き。オランダ人の女殺し屋は マリー・ジョゼ・クルーズ という女優さん。体当たりな感じが良かった。彼女の存在が、この映画をより陰鬱とした影のあるものにしたと思う、いい意味で。 こう見たら本当にいい俳優ばっかりだなーさすがスティルバーグさん。








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2021.08.07 19:59:23


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: