売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2025.10.16
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カテゴリ: ファッション
ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリの海外主要コレクションが終わりました。今シーズンからデザイナー(あるいはクリエイティブディレクター)が交代したブランド数は15以上もあるそうですが、まだ発展途上で知名度のないデザイナーも中にはいるので名前を全て覚えられません。コレクション終了直後にはフェンディがマリア・グラツィア・キウリ(ヴァレンティノやディオールで活躍)の起用を発表、これからしばらくの間デザイナー交代ニュースは続きそう。

​​​​​今回個人的に注目していたのはディオールとバレンシアガです。ディオールは、創業者クリスチャン・ディオール(1905〜1957年)亡き後イヴ・サンローラン、マーク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズと人気デザイナーがバトンを繋いできましたが、今回からはロエベの人気を飛躍的に高めたジョナサン・アンダーソン、注目度では今シーズンの一番だったでしょう。


クリスチャン・ディオール


クリスチャン・ディオールの作品




ジョナサン・アンダーソンの新生ディオール

おそらくジョナサン・アンダーソンは創業者クリスチャン・ディオールが手がけた作品をしっかり学習し、自分のカラーをプラスしたんだと思います。服が以前より若くなったような印象、既存の顧客層がこれをどう評価してくれるのかは分かりません。個人的にはディオールの世界を残しながらアンダーソンの持ち味発揮と思います。

ヴァレンティノから移籍したピエールパオロ・ピッチョーリが手がけたバレンシアガも創業者クリストバル・バレンシアガ(1895〜1972年)の作品をじっくり研究したかなという印象を受けました。


クリストバル・バレンシアガ


クリストバル・バレンシアガの作品

ピッチョーリはヴァレンティノ時代もメディアやバイヤーの間でそれなりの評価を得ていた実力派デザイナーですが、バレンシアガに移って水が合っているのではないでしょうか。「クチュール界の建築家」と呼ばれた創業者の構築的フォルムをベースに、現代的なニュアンスを入れて全体を軽くしています。ブランドDNAの継承という点に絞れば、今回デザイナー交代コレクションの中で一番ではなかったかと思います。




​ピエールパオロ・ピッチョーリの新生バレンシアガ​​



従来の世界観を守れば長年支持してくださってる顧客は満足、売上は安定、しかし次世代の顧客開拓はできません。一方、デザイナー自身の個性を思い切り出せばニュースを追うメディア関係者は評価してくれますが、既存のお客様は離反して売上は減少、売上回復できないと契約解除もしくは解任騒動になります。

ブランド継承でどうしても例に出したくなるのは、業界の誰もが期待したエディ・スリマンのサンローラン。ブランドの代名詞である「パリのエスプリ」をあたかも全否定するかのような米国西海岸グランジを発表、顧客でもある大女優カトリーヌ・ドヌーブは新聞に否定的コメントを寄せるくらいの改革でした。また、メディアの中には熱狂的にスリマンの改革を支持する声も上がりました。が、結果的には契約半ばでスリマンは退任でした。

ファッションの世界は単純に売上だけが評価基準ではありません。メディアや小売店関係者は時代を切り開く新しいクリエーションを見たいはずですが、ブランドの持ち味と新任デザイナーの個性があまりに乖離していると売上は大幅ダウン、結局デザイナー解任劇につながります。ガラリとイメージを変えて既存の顧客が離れてしまっても、新しいお客様を開拓できれば最低限の収支バランスは取れます。新規開拓には少し時間を要しますが、そこをブランドの経営側がしばらく我慢できれば解任劇は起こりません。

アンダーソンの新生ディオール、ピッチョーリの新生バレンシアガはどうなるか、販売開始以降お客様が答えを出すでしょう。両ブランドとも残念な解任劇がすぐ起こらないことを祈るばかりです。





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Last updated  2025.10.16 23:09:49


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