温故知新

食環境から起こる摂食障害

食環境から起こる摂食障害についてのご見解を一つ、ネットから見つけた。
後半部分で治療の一つを紹介しているのだが、食に問題のない子供でもそこに書かれているような食事時間を持てるような家庭はマレだと思う。まして、神経的に食べられなくなるまで親も子も追い詰められた状態で、どこまでそんな理想を追求できるのか興味深いものである。

「児童思春期の摂食障害」

渡辺直樹（聖マリアンナ医科大学神経精神科）

[はじめに]

　小児期（15才以下）の場合には心因性食欲不振症と神経性食思不振症からなり、後者は小児群と中核群に分類される。神経性過食症は思春期に増加する。
いずれも強い不安に基づき､食欲や摂食の障害がおこる。心因性食欲不振症は、不安を惹起させるストレス要因があって、それに対する身体化反応として食欲不振がおこるものである。

[幼児群]

　生後６ヶ月から３歳の間、マーラーのいう"separation-individuation"「分離―個体化」の時期にみられる。こどもは這い這いをしたり、歩いたりして少しずつ母親から離れる行動をとるが、その時に自律と依存の課題を自覚する。

　そして、彼の行動が自分を世話する人の特定の反応を引き出すことを知る。この学習過程は身体―心理学的分化を含む。
　一例を挙げれば､乳児が泣いている場合にこれがオムツが汚れたことによる不快感なのか、空腹感からなのかあるいは母親に抱いてもらいたいという欲求なのかわからない。乳児自身もはじめはこの区別ができなかったが、徐々にできるようになる。母親も繰り返される経験によって徐々にこどもの意図がわかるようになる。

　こどもの気持が見抜ける母親は気持が通じ合い､"good enough mother"「よき母親」として受けとめられ､授乳もうまくいく。しかしこどもの気持が見抜けなければ、"bad enough mother"「悪しき母親」ということになる。
　悪しき対象としての母親は、こどもの気持に沿えず、母親自身混乱する。母親は抱いて欲しいというこどものシグナルを空腹感と混同し、あらゆる手段を駆使して何とかしてこどもにたべさせようとする。こどもは当然拒否しますます泣きだし、母親はいらだち、混乱する。

　このようにしてこどもは母親を操作することを覚え､対象希求から食べることを拒否する。食べることは本来生理的な欲求であるが、このことと対象希求という情緒的―心理学的な欲求が混同されてしまい、健全なこどもに分離―個体化の一環として必要な身体―心理学的な区別を行う作業が停滞してしまうのである。

　このようにして幼児神経性食思不振症が成立する。こどもは結果として食べないことで成長が停滞し､母親は食べさせるためにあらゆる手段を駆使し､強制までして食べさせようとする。またこどもは食べることの拒否の他に吐き気や嘔吐などの身体違和感を訴える。父親は無関心な場合が多い。このような心理機制は小児期のみならず思春期においても認められる。

　治療の一つは両親に対する認知―行動療法的な介入であり､このようなこどもの心理を理解してもらい、幼児の身体面と心理面の分化を促進させていく。自律と依存の葛藤が食べることの拒否に表現されていることを説明する.。
　第二に食べないからといって親は動揺せずにこどもを見守り､「空腹感」を十分に体験させる。食事はなるべくこどもの自律をうながす方向で行わせる。３食きちんと食べるという生体のリズムを養い､食事時間は３０分以内とする。拒否や食べ物をなげるなどの行動がみられたら食事をやめさせる。食事と遊びは区別させる。食事中は両親は食べないからといって悲しい顔をしたり、驚かずに中立的な態度をとる。食後の遊び時間はこどもと一緒に遊び楽しむ時間をつくり、こどもと共感しあうなどである。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　以　上

転用の許可を取りたかったのだが、サイトが休止している状態だったので拝借させてもらった。

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