さすらいの天才不良文学中年

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「自由人」事始め(資産運用)

「自由人」事始め(資産運用)
                     つるぎ かずを

 前回お話ししましたように、いくばくかの退職金がでましたので、その運用をどうするか考えています。運用部門にいた人間は、会社の金の運用はうまくても、自分のお金の運用はダメというケースが多いようです。そうならないためにおいらがどうした(どうする)かを中心に、今回はお話ししてみましょう。


資産運用1


 まず、ある程度寝かせておくことが出来る資金の運用となりますので、流動性が必要な資金は除外して考えます。

 次に、資産構築では長期に渡って資産を配分するため、大局観が大切となります。小泉首相ではありませんが、一喜一憂せず、大局観にしたがって行動することが最も重要です。

 おいらは、この大局観でのポイントは、三つあると睨んでいます。

1.将来のインフレの可能性

 まず、1番目は将来のインフレの可能性です。

 冷静に考えて見て、今の日本は、国の借金問題や年金問題等、お金にかかる金属疲労を多く抱え過ぎだと思います。過去の世界の歴史から見ても、「日本の賞味期限」はもはや過ぎようとしています(少なくとも今後日本が世界の中心になることはあり得ないでしょう)。おいらは日本が嫌いではありませんが、これら金属疲労によって日本沈没となり、自分の身が危うくなるのだけは勘弁して欲しいと願っています。

 子供の算数のレベルで考えてみますと、現在の国の借金は地方も入れておよそ1,000兆円あります。これは将来返さなくてはならないお金です。

 現在の長期金利は1.5%程度ですが、今後、金利がもし2~3%に上昇したら、国が返済しなくてはならない金額は、利息だけで1年に20~30兆円になります。経済学を学んだことのある人であれば、今のような低金利が未来永劫続くことがあり得ないことはお分かりと思います。

 さて、ここからが大切なことですが、現在の税収は約30兆円ですので、今後、金利が上昇(インフレが進行)すると、借金の利息の返済だけで日本国の税収が無くなってしまうことが予想されます。

 これを人間に例えますと、年間の収入が30万円のサラリーマンが1,000万円もの借金を抱えており、利息の返済だけで収入の30万円が全て無くなるという、サラ金地獄に日本はなろうとしているのです。

 したがって、海外脱出というのはおいらにとって論理的必然なのですが、フリーのおいらに一番怖いのはインフレです。何故なら、今まであくせく貯めてきた貯金が紙屑になってしまう恐れがあるからです。

 実は、インフレには「良いインフレ」と「悪いインフレ」があります。簡単にご説明しますと、今から約20年前になりますが、「プラザ合意(1985年G5主要5カ国蔵相・中央銀行総裁会議)」によって、ドル安調整が行われたことがあります。

 このドル安という通貨調整こそが、米国にとって90年代から好景気に転じたマジックの種明かしでありました(実際は、世界各国がその分米国に奉仕させられたということだけなのですが・・・)。

 米国は、このドル安施策によって「良いインフレ」を起こすことに成功し、自国経済を回復させたのです。今でこそ、米国は市場主義と叫んではいますが、自分の都合が悪くなればいつまた為替調整をするか分かったものではありません。同じ様に、英国でもサッチャー首相が登場する前に、ポンドの切り下げ(ポンド安)を行い、経済危機を脱しています。

 したがって、日本でもこれだけ多額の借金があり、かつ、経済を上昇気流に乗せるために円安への為替調整をしたいと思う政治家が出てきてもおかしくはありません(伝説のトレーダー藤巻健史氏の十八番理論)。

 では、逆にこの借金に対して政府および日銀が全く無策であり、日本経済が今後破綻した場合には、為替相場はどうなるでしょうか。

 村上龍の小説「半島を出よ」がその例ですが、円は投げ売りとなるため、大幅な円安となります。結果的には、先の英米と同様に通貨安となるわけですが、根本的な差は、実体経済に与える影響の差です。

 日本は大不況となり、長期金利は急上昇、悪いインフレとなり、企業は倒産、株価も暴落、金融システムは崩壊という日本経済にとって最悪の状態になります。記憶に新しいところでは、97年のアジア経済危機で、タイや韓国が実際にそうなりました。

 したがって、それを避けるために、為政者が英米のように良い円安にもっていく可能性はあると睨んでいます。

 ただし、米国から反対されてそう出来ない可能性や、逆に恣意的に悪いインフレを発生させて、政府が合法的に国民から資金をシフトさせる(国民の金を吸い取る)可能性がないとも限りません。何故なら、インフレが発生することによって国の借金がチャラになるからです。国の借金をいったんご破算にするために、預金封鎖や新円切替を行ったという過去の実例もあります。

 したがって、今後はインフレ対策(円安対策)が必要と考えています。(続く)



「自由人」事始め(その3-2)

2.外貨への投資とその対象先

 将来本格的なインフレや円安局面になったとき、あわてて資産再構築をしなければならない、というのではもう遅すぎます。また、リスク分散という観点からも、外貨への投資は理に適っています。

 現在、英国通貨は1ポンド200円程度ですが、60年代は1ポンドが900円もしていました。イギリスの国力の低下(英国経済の低迷)を受けて、その価値が40年の間に4.5分の1に低下しています。

 それを考えれば、今後数十年の間に日本の国力が低下し、それに伴って円安となり、1ドルが例えば今の110円から4.5倍の約500円になったとしても不思議ではありません。

 したがって、外貨を保有していれば、今後円安になればなるほど、資産価値が増えることになり、また、外貨建て投資信託で投資した場合(為替ヘッジなし)、その投資信託の価値自体も増大すれば、投資信託の価値倍率X円安の倍率によってダブルで上昇するということになります。


米ドル


 ここで大きな問題は、米国のドルが果たして投資に適切な外貨かどうかです。これが難儀なのですが、おいらの結論から言えば、米国も日本同様の構造的な問題を抱えており、将来政策的なドル安を再び行う(第二のプラザ合意)か、何かを契機として(グリーンスパンの死亡等)、ドルが暴落する可能性があると考えています。

 米国の双子の赤字(財政赤字と経常収支赤字)の話しは有名です。米国が好況に見えるのは、グリーンスパンという優秀なお金の舵取りがいることと、米国の事実上の属国である日本が米国に奉仕している(ゼロ金利を継続させられていること、および米国国債の定期的購入や保有をさせられていること等)から、米国経済は磐石に見えるだけなのです(最近では10月15日号の週刊現代で為替エコノミスト水谷研治氏が大幅なドル安を予測しています)。

また、今後日本が円安政策を採りたくても、対ドルでの円安を米国が許さない可能性があると思います。したがって、先ほどの話しと正反対ですが、遠い将来には、1ドル70円程度までの円高ドル安もあり得ます(ただし、他通貨では円安となります)。

 そうなりますと、ドルには積極的に投資出来ないことになり、消去法によって、投資対象とする外貨はユーロとなりますが、おいらはそうは言っても米国の力(国力)はまだまだ10年以上は強いと見るのが現実的だと考えています。したがって、資産配分の原則である「分散投資」によって、ユーロと米ドルに一定割合を投資します。

 ユーロや米ドルに投資する場合、そのまま外貨預金として持つか、外貨建ての投資信託(株や債券に投資。為替ヘッジなし)、外貨建てMMF、FX等にするかの選択肢がありますが、おいらは、将来ポルトガルにロングステイを考えていますので、当面は外貨預金として持っておく予定です(なお、外貨を預金する場合は、為替手数料が断然安いソニー銀行(インターネット専用銀行)が有利です)。



「自由人」事始め(その3-3)

3.インフレヘッジ・ルールと中国・インドの台頭

 さて、インフレになった場合は、お金をそのまま現金や預金として持っていてはいけません。その価値は減り続け、最終的には紙屑になってしまいます。また、債券も暴落し、日本国債も紙切れとなります。

 インフレヘッジ(対抗策)として有効なのは物です。具体的には、インフレに準じて価格が上昇する株式、貴金属(金)、不動産が投資対象として最適です。原油や肉・穀物等のコモディティも上昇します。

 株式は投資対象としてはずせませんが、インフレ過程で企業の淘汰を求めますので、投資した企業が潰れては元も子もなくなります。したがって、株式への投資は、株への分散投資を主軸とした信頼すべき投資信託にします。分散投資理論にしたがって、投資信託による日本株式へ一定割合を投資します。

 不動産の今後の価値は、正直予測出来ません。悪性インフレであればあまねく上昇するのでしょうが、ここ数年でまだ半値程度まで下がる(特に郊外マンション)と予測する人もいます。

 むしろ不動産の考え方としては、もはや土地やマンションは「利用価値」の範囲内でしか価値がないものだと思うべきです。したがって、田舎の土地は只のままでしょう。都会の不動産も価値を生む範囲内でしかインフレヘッジにはならないと考えます。よって、投資対象からははずした方が無難と考えました(ただし、短期的にはREITのように儲かるものもあると考えますが、仕組みが複雑なものは避けた方が賢明です)。


中国インド


 最後に、今後の世界経済を考える上でやはり中国とインドははずせないと考えています。

 中国やインドの将来を考慮した場合、原油や肉・穀物等の消費は今後増えることはあっても減ることはないと思われます。むしろ慢性的に需要過多となるでしょう。原油の価格は高止まりとなり、下手をすれば100円近くまで上昇する可能性もあります。

 そう考えれば、これらのコモディティに投資すべきです。しかし、おいらには相場を張る体力と時間の余裕がありません。そこで、調べてみますと、コモディティを対象にした投資信託がありました(大和証券投資信託委託「ダイワ・コモディティインデックス・ファンド」は発売わずかで純資産が100億円に積みあがっています)。分散投資理論にしたがって、これにも少し投資します。

4.まとめ

 以上、将来を見据えてインフレヘッジ主体の分散投資として、外貨預金(ユーロと米ドル)、投資信託(日本株主体)、投資信託(コモディティ)への分散投資としました。全てBuy & Hold(長期保有)です。10年も経てば最低でも倍以上の価値になっていると思います。

 なお、最近流行のデイトレードによって、数10万円~100万円を元手に株の売り買いをして大儲けをする(した)という話しがありますが(本屋に行くと平積みしてあり驚きます)、調べてみますと上記の大局観とは正反対の瞬間判断そのものが問われるものです。所詮は博打で、素人は手を出すべきではありません。

 また、今回はあえて海外ヘッジファンドへの投資は選択しませんでした。現時点ではヘッジファンドの固有銘柄に対するおいら自身の勉強が足りないので、今後の検討課題とします。

 いやはや資産運用とは難しいものですなあ。最後は、大哲人プラトンの「財産とは、一に健康、二に美貌(才能)、三に富である」で締めましょう。
真のインフレヘッジとは、健康の維持や自分の才能を磨くことであって、富のみに執着するのは愚かであるということかも知れません。以下、次号。




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