さすらいの天才不良文学中年

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さすらい(旅の宿)

旅の宿---たゆたう時間

 所要で新潟方面に二泊三日の旅に出た。

 初日の新潟泊でのイベントが終了したので、横浜への帰りの道中は、往きの新幹線と異なり、全くあてのない自由気ままな旅となった。

 久し振りにどこで降りても自由、どこに泊まっても自由。


長岡駅普通列車


 旅、特に一人旅の良さは、
1.非日常
2.何もしなくて良い
3.スケジュールもなし
4.おいしいものの発見
5.怖いもの見たさ等、面白いことの経験
6.地元の人々との交流
7.ひなびた旅館での心温まる人情
等である。

 また、鈍行列車の良さは、
1. 景色をゆっくりと楽しめる
2. 駅のたたずまいを楽しむことが可能
3. 一駅ごとに乗り降りする人を眺めることが出来る
4. 車両の型式等を見ることが可能(新型車両/旧式車両等)
5. 窓が開く(もっとも空調は効いている)
等である。

 く~、たまりませんなあ。

 おいらは、ゆったりと新潟駅から発車したローカルトレインに飛び乗ったのである。さあて、どこに行こう。


六日町風景


 ひなびた温泉に泊まろう、そう考えると、宿泊先は新潟県南部しかない。川端康成の雪国で有名な湯沢温泉(越後湯沢)という手もあるが、今やスキーリゾート地だ。新幹線が停まるというのも気にくわない。選択肢として六日町温泉と塩沢温泉を候補地にあげ、より時間の止まっている六日町を目指すことにした。

 鈍行列車はゆっくりと走る。左右が田園風景となる。山並みが遠くにも見えない。信濃平野は米どころを実感する。見渡す限り一面の田畑。駅のホームにススキがそよいでいる。風流の極致。

 長岡を過ぎて、トンネルの数が増える。日本の背骨の下を通過しようとしているのだ。家族連れのお父さんが子供を抱えて先頭車両の窓から進行方向をのぞいている。ほほえましい風景だ。只見川が列車と並走している。ほどなく、六日町だ。

 誰もが通過してしまう六日町駅の構内は閑散としていた。駅前だけの商店街も半分はシャッターが閉じている。連休にもかかわらず、人が歩いていない。ひなびた温泉宿が期待出来そうだ。

 ところで、六日町はその昔、標高634mの坂戸山頂に長尾越前ノ守(上杉謙信の配下)が山城(やましろ)を築城したことでも知られている。花鳥風月を愛でるおいらは、坂戸城跡を目指して坂を登り始めた(写真は坂戸城跡入り口)。


坂戸城跡入り口


 この山登りが大正解であった。登坂途中で、おびただしい数の石仏(観音様)に出会うことになったからである。実に趣が良い。心が洗われる。坂に階段はなく、やや急な斜面を登ることになるのだが、およそ10m間隔に石仏が一つずつ配置してある。観音様に山に登る力を授かるようだ。観音様、ありがとう。


坂戸観音

石仏1

石仏2

石仏3


 宿は六日町駅の観光案内所で、一番ひなびた旅館をお願いした。
越前の名を配した旅館は、江戸時代から営業を続けるという古い宿だ。質素だが清潔なのが良い。浴衣に着替え温泉を楽しむ。

 温泉は弱アルカリで少し熱めの湯(50~60度)である。いろいろな効能もあるのが良い。しかし、温泉以外に何にもないのが良い。あるのは、中秋の名月に辛口の地酒と田舎料理。

 客はおいらのほかに老夫婦が一組。女将は60代だろうか、アットホームで上品な立ち居振る舞いであった。久々に上質の旅の宿。さすらう楽しみここにあり。外を見ればすすきが風にそよいでいる。

 時間がたゆたう。何もしない贅沢をゆったりと味わう。六日町の夜は音もなく暮れていく。



<旅の宿 外伝その1>

 川端康成の小説「雪国」の冒頭、「国境のトンネルを越えると雪国であった。夜の底が白くなった。」(うろ覚え)のトンネルは、てっきり越後湯沢駅の手前のトンネルだと思っていたが、新潟方面からだと、越後湯沢駅ではなく、越後中里駅を越えて、長~いトンネルに入った。

 したがって、雪国のトンネルは、実は越後中里駅のトンネルのことだったのかと一人で感心していたら、土樽(つちたる)駅を過ぎたらもっと長い、いわば超長いトンネルに入った。どうやら川端康成はこのトンネルのことを書いていたらしい。

 実際、このトンネルの外は寒い。列車の窓が外気でくもるのだ。真っ白になる。列車の内部が冷房をしているにもかかわらずにだ。

 長い時間を経過して、土合(どあい)駅到着。この駅から群馬県となるため、「国境を越えた」という理由(わけ)である。

 こういうことが分かるのも、鈍行列車での旅の喜びである。



<旅の宿 外伝その2>


ぐるりんバス車内



 関東平野で最初の都市、高崎で2時間あまり寄り道をすることにした。

 新入社員のころ、研修で高崎市に連れていかれたことを思い出したが、そのとき以来の高崎である。

 おいらは、海外でもまず現地に着いたら、その町のバス(それも市内循環バスが良い)に乗ることにしている。それで大まかな土地勘を掴み、その後おもむろに路上観察に入るのだ。

 高崎の場合、ぐるりんバス(写真はバス内部)というのが駅前から出ており、これが市内循環となっている。市内循環にかかる時間はちょうど1時間。料金はわずか200円。乗らない手はない。

 バスの良い点は、外の景色が見てとれることである。市内をぐるりんと回って、あの有名な観音山の白衣大観音(昭和11年建立、高さ41.8m)も見物することが出来たのである。バスに感謝。

 ところで、高崎から帰途横浜までは「湘南新宿ライン」に乗った。高崎・横浜間1時間50分。これは速い。特に大崎・横浜間を、列車が爆走するのにはホント驚いたねえ。夕方、無事帰宅。

 いやはや、以上、大変良い旅でした。おいらへのお付き合い、有難うございました。お疲れ様です。それでは、おしマイケル。ジャンジャン。



男性が引退後に愉しむ趣味「ベスト10」(前編)

 本日から2日間、関ネットワークス「情報の缶詰11月号」に掲載した「男性が引退後に愉しむ趣味『ベスト10』」をお披露目します。


耕三寺孝養門


男性が引退後に愉しむ趣味「ベスト10」

 先月上旬、ポルトガルに小旅行に出かけた。おいらは母の遠距離介護を続けている関係上、海外に行くのを封印していたのだが、還暦となったことだし、いずれは海外にロングステイしたいと思っていたので、そろそろ良いだろうと腰を上げたのである。

 さて、人生の黄金時代は60代だと云われている。だから、引退後に充実した第二の人生を送ることができるかは、どのような趣味を持つかがカギになる。少し以前のデータだが、日本経済新聞が調査したアンケート結果に準拠して述べてみよう(写真は尾道生口島の耕三寺)。


1.目的を持った国内旅行

 男性が引退後に愉しむ趣味「ベスト10」の第1位は、旅行、それも「国内旅行」である。

 実は、国内旅行には2種類がある。1つ目は、主催者(幹事さん)に全てをお任せするパターンである。老人クラブの定番である。しかし、これでは旅行が非日常にはならない。旅行に行ったのではなく、ただ、電車と車に乗り、美味しいものを食べ、旗の後を歩くだけである。

 これに対し、もう一つは自分で計画を立て、自分の足で目的地を歩き回るというものである。最近のシニアに多いのがこのパターンだという。神社仏閣を訪ねる、城巡りをする、秘湯巡りをするなどである。

2.海外旅行

 堂々の第2位は「海外旅行」である。現役のころは時間が自由に取れなかったので、せいぜい二泊三日の国内旅行が関の山であったが、引退したのである。時間は自由になる。畢竟、海外旅行に人気が集まる。

 この場合もありきたりの名所観光ツアーではなく、自分でテーマを決めた旅が主流である。海外でのホームステイや、現地の語学学校に短期留学するという旅行に関心が集まっていうようだ。おいらもリスボン探訪にあたっては、旅程など全ておいら自身が決定した。ツアー旅行は旅行ではないのである。

3.ドライブ

 第3位は「ドライブ」だという。老人は意外にドライブが好きなのである。いや、最近の若者の車離れはひどい。免許さえ取ろうとしないのである。車はもはやステータスではなくなったようだ。

 思い出すのは、一昨年、青森の恐山を尋ねたときである。恐山の湯治温泉小屋の温泉においらが入っていたら、瘋癲老人が一人で入ってきた。聞けば、車で寝泊まりしながら、全国を放浪しているという。こういう人生もあるのだ(この項続く)。


男性が引退後に愉しむ趣味「ベスト10」(後編)

 男性が引退後に愉しむ趣味「ベスト10」の後半である(写真は尾道の街)。


尾道


4.映画鑑賞・美術館巡り

 おいらの大学時代の同期同窓である友人は、昨年4月に完全リタイヤし、爾来、年間400本の映画を鑑賞したと豪語している。映画館を梯子し、一日2本以上の映画を見た日も多いのだという。

 その彼に何が一番問題なのかと聞いたら、意外にも交通費だと答えが返ってきたのには驚いた。都心に出て帰ると、往復の交通費は千円以上かかるという。彼は大船に住んでいるので、さもありなむである。映画料金はシニア料金で千円。まったく映画よりも交通費が高いというのはどうかしている。

5.読書

 第5位は、「読書」。読書は趣味の範疇ではないと思うのだが、日本人は読書が趣味だと云う。海外でそう云ったらバカにされるだけである。

6.スポーツ観戦

 野球場やサッカー競技場に出かける老人が増えているようだ。テレビで野球中継をしなくなったのが理由になっているのだろうか。おじさんにとって、野球観戦はやはり一番の娯楽である。涼風の中で生ビールを飲みながらの野球観戦。神宮球場でのつまみは定番のちくわである。

7.パソコン

 第7位に「パソコン」が入った。若者顔負けのパソコン爺さんもいるようだ。それにパソコンをいじるのは、老化防止にも良い。中高年のためのパソコンスク-ルも繁盛しているという。

8.食べ歩き

 第8位が「食べ歩き」。死ぬまで衰えないのが食欲である。山田風太郎が「あと千回の晩飯」(朝日文庫)というエセーを書いていたが、あと千回ということは残りの人生が3年ということである。

 人間の寿命には個体差があるので、誰もが平均寿命である80歳(男性の場合)まで生きることができる訳ではない。誰しも明日、死ぬかも知れないのである。あと千回の晩飯だと思って、食べ歩きに勤しむのも正解である。

9.ゴルフ

「ゴルフ」が10位以内に入っているとは思わなかったが、現役の頃からゴルフを趣味としている人は多い。エイジシューターという言葉がある位だから、ゴルフは生涯スポーツなのだろう。

 おいらの友人は、夫婦揃ってゴルフ場に出向いている。仲良きことは良き哉。なお、ベストテンにゴルフが入っているが、「釣り」が入っていないところが面白い。

10.音楽鑑賞

 さて、10位に入ったのが「音楽鑑賞」。
音楽と云ってもクラシックやオペラ鑑賞のことである。クラシックでは一枚のチケットが数千円だが、オペラとなると一枚数万円はする。しかも、オペラやクラシックに一人で行くのは無粋である。夫婦揃えば料金も2倍となるが、シニアにとっては高くない。

11.圏外

 圏外ではあるが、シニアに評判の「ガーデニング」(日本風に云えば園芸)が入っていないのは寂しい。「ウオーキング」も入っていない。おいらの敬愛する先輩に聞いたところ、会社を辞めた最初の3ヶ月間は毎日ウオーキングをされていたという。何となく理解できるなぁ。

 さて、以上の趣味は、健康があって初めてできるものである。願わくば、気の合う仲間(伴侶を含む)と一緒に同じ趣味を愉しむのがベストである。第二の人生は、「良い趣味、良い伴、それに健康」というところか(この項終り)。






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