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さすらいの天才不良文学中年
東京名所考 横浜マル秘黄金町
湯島天神菊祭りに行く(前編)
勤務先から湯島天神(湯島天満宮。東京都文京区。菅原道真公を祀る)は遠くない。
時間を見つけて、今週その菊祭りに足を伸ばした(来週の23日まで開催)。当日は、小春日和で汗ばむ陽気であった。
まず、女坂から湯島天神に登る。境内に入るにはいくつかのルートがあるのだが、一番情緒のあるのがこの女坂である。湯島天神の絵図面をご覧あれ。
この女坂を登りきったところに「講談高座発祥の地」の碑がある。ここで日本で初めて講談の高座が行われたと知って意外に思う。
その隣に新派の碑がある。湯島天満宮には何でもあるのだ。
菊祭りに来たのだが、菊を見る前にこれだけ観るものがあるのだ。
これまでも湯島天神には何回かお参りに来ているのだが、実は何も知らないことに気付かされる。回りを見ると、外人観光客が多い。嬉しくなる(続く)。
湯島天神菊祭りに行く(後編)
いよいよ菊祭りである。
これが圧巻であった。
ところが、こういう菊もあるのだ。生まれて初めて観る菊である。
この菊は、自分では花びらの重さを保てないらしい。花弁の下に画用紙を置いてあるのだ。その人工的な美しさに、中国の纏足(てんそく)を連想する。
ちょっと待って欲しい。菊祭りと云えば、菊人形である。探すとちゃんとある。しかも風林火山である。
流石に菊祭りと銘打つだけはある。菊の美しさが際立つ。ただ、花鳥風月を愛でるおいらとしては、菊は人工的な美であるような気がしてならず、少々とまどうのだ。
ここのところの感覚は難しい。菊は手入れをしなければ、その美しさは光らないからである。
考えてみれば、それは薔薇でも同じなのだろうが(薔薇も手入れが大変である)、野草のように自然の中に美しいものを自分で探すのか。それとも菊や薔薇のように美しいものを自分の手で創るのか、という問題かも知れない。
そうだとすると、これは難しい質問である。
閑話休題。境内にある泉鏡花の筆塚で締めくくろう。泉鏡花の代表作は「婦系図」であり、舞台はここ、湯島天満宮である(この項終り)。
東京都庁
東京都庁は下から見上げるものであった。それがこうして真横から見ると壮観である。
故あって、東京都庁をこうして見ることが出来たのであるが、こうして見ると、芸術品だと分かる。
東京都新庁舎。平成3年(1991年)完成。丹下健三作品。
ゴチック建築であるパリのノートルダム寺院の双塔をイメージしたものといわれる。特徴は、外壁面を凹凸させて陰影を深くし、さらに外壁PC板に濃淡二種類の花崗岩を打ち込んだことにあるらしい。これによって見事に重厚さが演出されている。
丹下自身によれば、「格子戸を思わせるデザインで和風を感じさせると同時に、情報化時代をIC(集積回路)のグリッドパターンで象徴させた所にポストモダン性がある」としているそうだ。
独創性に欠けると酷評する人も多いが、現代の日本を代表する建築物として海外に自慢しても良い建物だろう。
おいらは昔日、西新宿に勤務していたので、外人から「都庁に行くにはどうしたら良いか」と聞かれたことがある。「何故都庁か」と聞き返すと、カメラを片手に「ケンゾーを見るのだ」と答えが返ってきたことを思い出す。
さて、建築家が芸術家だと気付いたのは社会人になってからである。それまで、建築は理科系、造るのは大工ではないかと思っていた。所詮宮大工の創る工芸品の類ではないかと思っていたのである。それが、ガウディを始めとして、芸術家としての建築物を目の当たりにし、おいらの狭量を知らされたのである。
建築の世界にも天賦の才能はあるのだ。オリジナリティと芸術性という天賦の才能が付与されることによって、建築家は芸術家足りうるのである。
丹下健三。日本を代表する芸術家であったのかも知れない。
皇居の夜景をご存じか
過日、日比谷の出光美術館で「陶磁の東西交流」展(12月23日まで開催)を見る機会に恵まれた。
柿右衛門や古伊万里を景徳鎮、マイセンなどと比較する展示の手法に感銘を受けた後で、帰路の途中、皇居方面を覘くとお堀端一面にイルミネーションが輝いているではないか(写真上の右サイド。お堀端一面にイルミネーションが設置されている)。
まさか、お堀端にイルミネーションを飾るなど思いもよらなかったので、展示会の興奮に加えてダブルの感激となった。
皇居方面に歩き、お堀端サイドから日比谷・丸の内方面に向かうとビル群も見事にライトアップされており、思わずその景観に見とれてしまった(写真下は旧明治生命本館)。
観るべきところというのは、実は、このように創ることも出来るのだ。
今年の初詣は梯子
先日も述べたが、今年の初詣は上野寛永寺に行った。
これには訳がある。
偶には、美術展を初詣の代わりにしても良いではないか。「没後40年レオナール・フジタ展」が「上野の森美術」で開催されているからである。
この展覧会は1月18日(日)までで、正月休み明けの5日からは混み合うのが必至だろう。調べてみると、会期中は無休である。そこで考えた。元旦より2日の方が空いている。上野の森であれば、上野寛永寺がある。そこで初詣を兼ねるとは我ながら良いアイデアである。1月2日(金)、上野に向かった。
ところで、自宅のそばには「菊名池弁財天(菊名池大明神)」がある。昨年の初詣はここにお参りをした。ここを蔑(ないがし)ろにしてはいけない。まずは、ここで清らかな心で(嘘つけ)お参りをした(写真上)。初詣を梯子しようという訳である。
渋谷まで東横特急、銀座線で上野に到着。西郷さんに新年の挨拶をして、寛永寺である。上野寛永寺は穴場であった。
寛永寺の歴史を紐解くと、天海僧正の発願により東叡山寛永寺として、寛永2年(1625年)に建立された。寛永時代に設立されたから寛永寺なのだ。
江戸にも平安京と同じようなインフラを造ろうとした陰陽道の考えにより、比叡山延暦寺と京都の名所である清水寺を意識して整備されたという。寛永寺は江戸の景勝地として、浮世絵にも数多く描かれている。
さて、一点の曇りもない心で(嘘をつけ)お参りをして、絵馬の奉納所を見たら、驚いた。
外人の絵馬が多いのだ。え? 異国語も英語だけではない。泰語のようだ。ま、泰は仏教国であるので抵抗がないが、キリスト教だと思われる米国人も絵馬を書いているところが面白い。日本の神社は神道として宗教を超えているので、もしイスラム教の信者であったとしても願いを叶えてくれるのだろう。
こうしてみると、世界の宗教戦争(文明の衝突)を救うのは、日本の神道かも知れない。宗教の対立なんて、皮膚の色が違ったとしても、男と女が違ったとしても、家訓が違ったとしても、主義主張が違ったとしても、それ自体は本質でないと同様に、小さいことである。人類は皆、根源において、変わるものではない。神道万歳。
ダブルの初詣で考えた、今年最初の思索である。ところで、おいらの願い事もダブルで叶うことを祈る。
大反省
昨日、久し振りに気の合う人と飲んで、気持ちよく自宅に帰りました。
そうして、このブログを見ましたら、我ながら、ここ数日間の記載内容が硬すぎると大反省。
実は、現在、今月末にやって来る某原稿の締切りに追われているのと、今、お手伝いしている勤務先の仕事の関係などから、新しいエセーを書くための時間の捻出に苦労していたのです。
したがって、これまで書き貯めていたものを中心にこのブログに掲載していたのですが、やはり、ピッチャーの配球と同じで、直球ばかりだと、野球になりません。
息抜きの内容を入れなければと、反省しきりです。
そこで、「怖いお話し」の後編は、月曜日以降にお送りします。また、明日土曜日と明後日の日曜日は某ボランティアに参加しますので、お休みをいただきます。
では、おいらが、全く余裕がないかというと、先週の土曜日はちゃっかりと「第29回浅草サンバカーニバル」探訪に出かけています。
それでは皆さん、お許しのほどを。
「竜宮美術旅館」探訪(前編)
嘗て横浜の風俗を代表する町というのは、京急線の日ノ出町駅と黄金町(「こがねちょう」と読む)駅周辺であった(横浜市中区)。
一帯で営業する店を特殊飲食店と呼び、いわゆる青線(合法であった赤線に対し、非合法のため青線)が密集していた地区である。
ただし、この風俗街は2009年に行われた「横浜開港150周年展」で浄化一掃され、その光景は一変した。現在はその名残を留める店が連なるばかりである。
夏草や兵どもが夢の跡(奥の細道)
さて、その往時を代表する旅館が「竜宮美術旅館」(写真上)として平成22年からギャラリーとして使われてきたのだが、今月18日に閉館するというので、慌てて見学に行ってきた。
終戦直後に建てられた旅館である。
その後、この旅館は住宅、倉庫として使われていたのだが、この地区の町おこしに取り組むNPO法人が美術館やカフェとして改修し、若手の美術作家に宿泊空間などを美術作品として展示させていたのである。
場所は嘗ての青線地帯。美術展示空間は、そこで繁盛した旅館。しかも、再開発事業のため、旅館は近く取り壊しが予定されている。
それに黄金町の旧青線地帯は、黒澤明の天国と地獄でヒロポンや麻薬の密売場所としてロケが行われていた場所である(実際はセットだという)。
あの猥雑としたシーンの場所が今はどうなっているのか。怖いもの見たさもある。これはもう現場に行くしかないではないか(この項続く)。
「竜宮美術旅館」探訪(中編その1)
調べてみると、竜宮美術旅館は黄金町よりも日ノ出町駅の方が近い。日ノ出町駅から徒歩数分とある。
横浜から京急線に乗り、普通電車で二つ目の駅で降りた。改札で駅員に竜宮美術旅館に行きたいと場所を訪ねると、二つ返事で地図を渡してくれた。
路地に入るとすぐに分かった。一帯の様子が良い。
まずは外観。和洋折衷の様式で風情がある。これを取り壊すのはせつないのぅ。
館内に入ると「RYUGU IS OVER!! 竜宮美術旅館は終わります」として展覧会が開催されている。
内部も和洋折衷。一階入り口部分はカフェとなっており、洗練されている。
一階の洗面所。
この金魚は秀逸。
浴室も見せる。
一階の客室は洋風で、暖炉はフェイクである。
その客室空間をギャラリーとして美術作家が演出、展示している。遊び心が満載でこりゃ楽しめるわい(この項続く)。
本日と明日はお休み
本日と明日は休日につき、お休みです。
写真は、昨日に引き続き、竜宮美術旅館の一階カフェに置いてあるオブジェ。
よく見ると「竜宮来場記念」と読めます。このユーモアがよろしい。
それでは、皆様よろしゅうに。
平成24年3月24日(土)
謎の不良中年 柚木惇 記す
「竜宮美術旅館」探訪(中編その2)
二階に上がる。五部屋あって、洋風が二間。和風が三間。
圧巻は和風のメインとなる八畳の間である。入口上部に切妻屋根のフェイク。
格子戸を開けると土間。旅館の中にまた旅館があるというイメージである。こりゃ風情があるわ。上客が使ったんだろうなぁ。
六畳の間は、炬燵をあしらえた空間。
洋間はさっぱりとした作りで、入口の様子も良い。中はシンプル。定員2名とある。
昭和30年当時の新聞も置いてある。そう云えば、赤線が廃止されたのは昭和33年3月末である。
いやぁ、タイムスリップとはこういうことを云うのだろう(この項続く)。
「竜宮美術旅館」探訪(後編)
竜宮美術旅館を堪能したので、日ノ出町から黄金町駅まで歩いてみることにする。
往時は、京急線のガードと並行して走る大岡川との間に「ちょんの間」と呼ばれる売春宿が二百店舗以上軒を連ねていたという。
黄金町方面に向かって歩くと左手に旭橋がある。旭橋に立ち、そこから黄金町方面を覗くとそれらしい雰囲気が漂うのが分かる。しかし、一帯は見事に浄化されており、往時を偲ぶことは難しい。
猫がいたのでパチリ。
途中、定期的に見回りをしているというお巡りさんと会った。お疲れ様です。黄金町は新しい街へと移り変わろうとしているのである。
もう数年したら、何故この場所が「天国と地獄」のロケ場所になったのか誰も分からなくなるのだろう。柳美里のゴールドラッシュの主人公が屯する場所がどうして黄金町なのか皆が疑問に思うようになるだろう。
街の歴史など簡単に風化してしまう、と分かる(この項終り)。
本日と明日はお休み
本日と明日は休日につき、お休みです。
写真は、先日訪問した横浜日ノ出町駅前のスナップ。
img src="http://image.space.rakuten.co.jp/d/strg/ctrl/9/77432fcd3f02deb11dd6654706daa32a9cff12f7.02.2.9.2.jpeg" alt="浜劇" border="0">
そうですか、小向美奈子さんがご出演なさるのですか。気合いが入っていますねぇ。解説は不要でせう。
それでは、皆様よろしゅうに。
平成24年3月31日(土)
謎の不良中年 柚木惇 記す
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