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途中UP中の羽生君です。マオちゃんの滑る曲、です。俺には絶対音感はある?のか?これらはPIXIVでもご覧になれます★
February 18, 2014
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青々しい緑の中で、少年達が数人集まっていた。 大きな木々が密集し、緑の風がそよぐ。 肌寒いその風の中でもなお、集まる少年たちは熱い目線を交わしていた。 少年たちの真ん中に、皮で出来た帽子を被った少年がいる。 周りに数人の少年に囲まれ、静かに佇んでいた。 茶色の帽子を被った少年は、これで何度目であろう・・・ 同じことを、周りの少年に話した。「あなた方がどう思おうと、私の行動は私の意志、どなたにも阻止できないはずです・・ 私は、ナイーザッツ城に行かなくてはなりません!」 茶色の帽子の下に、輝く黄色の髪を靡かせ、深く青い瞳をきりりと上げた少年は、ラトセィス・・・ 今までずっと、自分の主張をせずに、だまってセルヴィシュテの後をついて、ここまでやってきた。 先日、そのセルヴィシュテと離れ離れになったラトセィスは、いきなり、城に行きたいと言い出したのだ。 班を形成していた少年たちは、勿論青くなって反対した。 ごくごく当たり前の理由である。 なんといっても、班の者は勝手な行動は許されない。 そんなことをすれば、たちまち彼らは街の人々に警戒され、そしてすぐに住む場所を追われる・・・ ハーギーを出てから、何度も、町や村の人々と交流しようとして来たが、けして心を開いて貰えなかった・・・ このルヘルンの辺境に落ち着くことができたのも、つい最近のこと・・・ ナイーザッツ城の近くのこの地では、まだ身を隠してはいつつも、街で仕事をみつけたり、人々との交流がようやく交わせる段階になっていた。 班を纏めていたポネは、少年らの奥で今まで黙ってこのやりとりを聞いていたが、色の落ちた甲冑の前で組んでいた両腕を解くと、前に出た。「・・・ラトセィス・・ 確かに、君の意志を尊重しなくてはないだろう。 だが、他の仲間が言っているように、君は単なる一時的な客人とはいえ・・・ 今は、俺らが君の身を預かっているということ、もっと重要視して欲しい。 俺らは、沢山の仲間の連携で、この住む場を得ているんだ。 仲間の信頼を裏切ることはできない」 ざわざわと風が吹いて、少年ラトセィスの皮の帽子が揺れた。 ラトセィスは、帽子の下に表情を隠しながら、言った。「私が勝手に出て行ったと言えば、何の問題もないでしょう」「ありえない」 ぴしゃり、と、ラトセィスの右脇の少年が言った。 ポネが、再び腕を組んで言った。「そう、ありえない。 君が、“いつの間にか”いなくなるなんて、ありえないんだ、ここは」 ラトセィスの瞳がきりりとつり上がった。「ありえない、ですか」 淡い緑の上着に包まれた左手を、大げさに上げた。「では、こういうのもありえないですかね? ここの何人かの方々を、私が焼き殺した・・・ だから追い出した、というのは?」 左手に、右手を添える。 ラトセィスの瞳が、軽く笑みを含んだ。「・・・ 耳にしたことがあるでしょうか、どうか・・・ 地獄の炎の神、ガルトニルマ。 私は、そのガルトニルマと契約し、炎を使う。 さあ、どうです? 私がその気になればいつでも、炎を呼んで・・・ なんでも、そう。 なんでも、焼きつくす事ができるのですよ・・」 数名の少年が、ごくりと息を呑んで、ラトセィスの傍から僅かに離れた。 ポネは、ぐっと唇を噛みしめると、大きく呼吸を整え、ラトセィスに一歩近づいた。「ラトセィス・・・ 君は、いくつの過去を持つ? さっきまでは、城に行く理由は・・・ ターザラッツの王子で、ナイーザッツに妹がいると、言っていた・・・ そして今度は、炎の契約か・・・」 ポネを見据えるラトセィスは、両腕を下ろすと、深く青い瞳を西へ向けた。「どちらとも、私自身の過去、そして現在です。 だからこそ、私は行かなくてはならないのです。」 とうとう、班からラトセィスは出て行ってしまった。 誰も、見送る者はいなかった。 彼らの仲間が、今、ラマダノンへ行っている。 その仲間が戻った時、どのように説明したらいいだろうか。 しかし、ポネは、肝を据えるしかなかった。 過去と現在に於いて、目を背けることができぬ事に向かおうとする者を、どうして止められるだろう・・・ だが、同時にポネは少し弱気だった。 ラトセィスの、自らの意志を貫く精神の強さに、押されてしまった・・・ 彼の過去を聞いた時も、確かに驚きはしたが、それよりもなお・・ 歩みだしたその道に、疑問を持ちついつ、そして周りを傷つけてもなお、進んでいく姿に、押されたのだ。 ポネは、ナイーザッツ城の方向を、軽く見やった。 あのように、進む方向にまっすぐだったのは、ハーギーを出る時の事だったろうか・・・ キイッ! キイーーッ! 山鳥が鋭く鳴きながら飛び立って行った。 寒い風が吹く中、ポネは自分の陣地に戻りながらも、過去に思いを馳せずにはいられなかった・・・ 濡れた地面を踏み締めながら、ラトセィスは軽く頭を振った。 もはや、自分の意志では炎を呼ぶことはできない。 そう、ガルトニルマとの契約は、もうこの私が破ったのだから・・ しかし同時に、いつでも炎が呼べるような、矛盾した自信があった。 やはり、ガルトニルマの近くだからだろうか。 そう、あと少しだ・・・ あいつの、近くにいる・・・ リュベナ、待っていて・・・ 今まで、そこにずっと預けていたが 今度こそ、あいつの元から、君を取り戻す・・・*****************にほんブログ村 参加ランキングです
February 18, 2014
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PIXIVで、このACCLIをUPしはじめました。よろしかったら御覧下さい。愛する♪風とケーナ様へは・あ・と!んさーじさんもUPしましたはあと!その他の皆さんもぜひPIXIVに飛んで行ってミテやってくだされ~★☆
February 15, 2014
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朝日新聞さんを取ってるんすが、「しつもん!ドラえもん」のスクラップブックがあるのは新聞の広告で知ってました。 最近溜まりに溜まった新聞を見る心の余裕が出たらしく、「そうだ!『しつもん!ドラえもん』をスクラップしよう!」と思い付いた訳デス。 で、朝日さんに一昨日注文、さっき、着いたと電話があったので雪のなかえっこら×2行ったら、さてどごさ置いたべな~って始まり…なかなか見つからない(*^m^*) ムフッ やっとブツを出して来た50代の奥さん、何冊ですかって言うから二冊って言ったのに、「一家庭一冊なんです」ってを~い(°д°;;) 仕方ないから諦めてお金(夏目さん)をカウンターに置いたらなんとタダなんだそうだ。 「だから沢山出せない事になっている」って、なら最初からそうだと言えっつうの(-.-)y-~~~ まあ無事ロハでブツをゲットし意気揚々と帰路に着いてる訳だによ。 はっはっは(^_^)vちなみに方側1Pに2つの「質問」と「答え」を貼るタイプなので、見開きだと4つしか「質問」「答え」が張れません。15ページしかないので、60日で、このノートは満タンになる、んだと思います(計算合ってますか、リーブスさん??と聞いてみるw)てことは2カ月で1冊ですね、ハイハイ。ですよね?リーブスさん?(ww
February 15, 2014
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リュベナの部屋を出たニルロゼは、ふらり、と足が揺れた。 まったく、こともあろうに、姫をメルサと思い込んでしまうとは・・・ うかつだった。 確かに、あの部屋の雰囲気とか、姫の声とかは・・・ メルサそのものだった。 赤に取り憑かれているリュベナ・・・ 赤がある限り、メルサの形もまた、ありつづける・・・・ なんとしても、なんとしても、 赤の核を・・・ ニルロゼの膝ががくりと曲がり、少年は廊下に座り込んだが、面倒になったのか横になってしまった。 ああ、どうすれば、赤にたどり着く? どうすれば、赤を倒すことができる・・・・ ・・・リュベナ、ごめん、君を斬ろうとしてしまうなんて・・・ 廊下に倒れこんでいる少年を発見した人物がいた。 その人物の手には盆が握られていた。 盆の上には食事が乗っている。 この人物は、これから、王に食事を持っていこうとしてたところであった。 短く切られた、髪がさらりと揺れる・・・ 闊達そうな表情の、若々しい少女である。「あら! やだ! あいつだわ! あんなところで寝て・・・ でもなんで城に?!」 少女、マエーリは、思いっきり口と眉を曲げ、転がっているニルロゼを大きく避けて通ろうとした。 が、流石に少しは心配になってきて、ちょっとだけ近づいてみる。「ちょっと・・ ちょっと! なにやってんの?」 マエーリは、父マーカフに連れられて、ナイーザッツ城の中で暮らしていた。 主に、料理長である父の手伝いをすることが多かった。 本当は、付いて来たくなかったが、ドパガに目をつけられてしまったのだ・・・ あの日・・・ 使いから返る途中、旅人がドパガに絡まれているのを見過ごせなかったマエーリは、身代わりとなったのだ。 が、少女であることを隠すため、自ら髪を切り、ドパガの機嫌を取るふりをして、逃げる機会を窺っていた。 そこを、セルヴィシュテに助けられたのだが、ドパガはルヘルンではかなりの権力者の息子・・ いつ恐ろしい報復が来てもおかしくはなかった・・・・ オヤジと、城に住むのは、ちょっと狭苦しい気分でもあったが、あのドパガの手が届かないのは、確かにここ、城の中ぐらいであろう・・・・・ ずっと、城に住むのを拒んだオヤジが、城内に・・・・ それを思うと、申し訳ないような、でもやっぱりどこかでまだオヤジに反発したい気分もあるような、複雑な心境だった。「ねえったら! あんた、そこに寝てると警護に斬られるわよ!」 マエーリは、右足でニルロゼの背中を軽く蹴りつけてやった。 すると、蹴られた少年が僅かに動いた。 ものすごく青い顔をし、苦しそうなその表情をみたマエーリは、流石に尋常ではない事に気がついた。「・・・」 少女は、慌てて自分の部屋に戻ると、父マーカフを呼んだ。 城の料理長、マーカフは、自分が住んでいる部屋に、ニルロゼを休ませることにした。 それは同時に、マエーリが住んでいる部屋に、ニルロゼが入ることになった、訳だ。「もおおおおおお~!!! 嫌~!!!!!! こんな奴と一緒だなんて!」 マエーリはプイッと顔を背けると、仕切られた小さな部屋に隠れるように篭ってしまった。 マーカフは、やれやれ、と頭を掻いた。「そう嫌がるなよ。 一応病人なんだから、少し面倒みてやってくれ。 俺は、厨房に行かねば・・・ な?」 仕切りの向こうに、宥めるように声をかけ、マーカフは身支度を始めた。 城内の部屋に住まう事としたとき、寄越された服である。 マーカフはきっちりとした身なりは好みではなかったが、流石に我がままは言えなかった・・・ 濃い目の緑の襟元の衣装を崩して着ながら、マーカフはやや皺の寄った目でニルロゼの額に手を触れた。「マエーリ、頼むぞ。 じゃあ」 マーカフは、ゆるりと手を振って部屋を出て行った。 仕切りの奥から、恨めしそうにオヤジを見送ると、マエーリは仕方なく寝台の傍へと寄った。 その寝台はオヤジの寝台。 青い顔で寝込む少年の表情を、チラリと見て、仕方なく布を取り出して水に濡らした。 少年の額に濡れた布をあてがってやり、寝台の脇の椅子に軽く腰掛けると、オヤジが寄こした本を読み始めた。 この大陸の歴史の本らしい。 最初はまったく興味がなかったのだが、オヤジがここだけでも読めよと見せた場所に惹きつけられた。 何度も読んで、もう内容を熟読していたが、何回読んでも興味の持てる本だった。 マエーリが夢中で本を読んでいると、少年がうなり始める・・・ もう、嫌ね。 男と二人きりなんて、本当に嫌。 どうしてあたしがこいつの面倒みなきゃなんないのよーーー 少年ニルロゼに嫌悪感ばかりを持っているマエーリだ。 まあ、それも仕方ないのであろう。 何といっても、まだまだ15歳。 男友達といっても、精々街中で会話をする程度。 家の中にまで入れるような親密な関係の男性など、いない・・・ マエーリは汚いものにでも触るように、指先でニルロゼの額の布を持ち上げ、水に濡らして冷たくし、再度あてがってやる。 すると、ニルロゼがうっすらと瞳を開けた。「・・・」 蜂蜜色の髪の下の、蜂蜜色の瞳が、憂いるように揺れた・・・ ニルロゼは、よほど苦しいのか、瞳を瞑ると、右手を軽く上げた。「・・・ありがとう・・ 嬉しいよ・・・」「・・・」 マエーリは、左を向いて荒く息をする少年の表情を見ていると、段々彼の苦しみをなんとか取り除けないかと思えてきた。 マエーリは、恐る恐る、ニルロゼの右手首に僅かに触れた。 と、ニルロゼの手が動き、少女の手を取った。 ビクリ、とマエーリは手が震えたが、ニルロゼは苦しい息を吐いて、唇をかみしめている。 手を繋いでいると、気分が落ち着くのかしら? 少し、視線をニルロゼに落としながら、マエーリは椅子に座った。 ずっと前・・・ あたしが寝込んだ時、オヤジがずっとそばについていてくれたっけ・・・ 少女は瞳を閉じ、少年の手を両手で包んでやった。*****************にほんブログ村 参加ランキングです
February 12, 2014
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レガンは、心で、密かに思った・・・ なにかに似ている・・・ なにだ・・・ 歩み進めると、警護と思われる者が、彼らの体の前に長い葉を差し出してきた。 それはどうやら、行く手を遮る雰囲気である。 謁見は、ここで行うようである。 ポーーーーーーーーーーー・・・・・・ 低い、なにかの音・・・ なにかが、静かに鳴らされている音。 単調な音が、白々と流れている・・・ 5人の少年は、ここまで来ておきながらも、なお、固唾を飲み、果たしてどうしたらよいのやらと言った感じで立ち尽くした。 そんな彼らに痺れを切らしたセルヴィシュテは、とうとう第一声を発した。「初めてお目にかかります。 俺達は、ナイーザッツからやって参りました。 まさかこのように王の前で話を聞いて頂けるとは思ってもおりませんでした。 ええと、俺は、後ろの5人の方々に助けられ、身の安全をこうして確保できました。 ところが、彼らは、どうやら常に、なにか悩みを抱えているようです。 さあ、それを言うために、来たのですよね?皆? 大丈夫です、率直に、意見を聞いて頂いてください」 セルヴィシュテが口を閉じると、流れている音の調子がやや変わった。 警備の者の雰囲気も、少し変わった感じがした・・・・「もう少し前へ」 警備の者が、葉で先の場所を示す。 茶色の瞳で、その場所をいぶかしげに見ながら、セルヴィシュテは2、3歩歩み、そちらへと行った。 レガン達も、その場へと、おっかなびっくり移る。「・・・」 チルセの顔が、だんだん青くなり・・・、とうとう彼は額に手をあて、頭を降った・・・ オガラが、慌ててチルセの肩に手を当てたが、彼も、言いようのない感覚に身を縛られた。 なんだ・・・ この感覚は・・・ その様子を見たセルヴィシュテは、低い声で叫んだ!「みんな!下がるんだ! ここは俺だけで! 早く!」 セルヴィシュテが力ずくで彼らを後ろに押しやり、苦しむ少年達をその場所から出す。 「し、しかし」 レガンが、天幕の布とセルヴィシュテを何度も見比べた。 ここまで来たのだ。 来たからには・・・「いや、大丈夫、レガンさん。 でも、そこから手を伸ばして、俺と手を握ってください。 そして、喋ってください」「・・・?」 セルヴィシュテは、足元を改め、王への忠誠を現す動作をした。 だが、国が違うので、その動作が意味を成すかどうかは定かではないが。「ラマダノン王。 俺は、セルヴィシュテ・・・ 俺は実は、エルダーヤ大陸から来ました。 ですので、この大陸のできごとは、俺にはよくわからないのです。 俺を助けてくれた方々は、どうやら、あなたの力がとても強く感じるようです。 ああやって後ろに居ることを、どうか許してください」 一度言葉を区切って、少しだけ後方に目線を送った。「さあ、レガン。 王はご理解下さるだろう。 君が言いたい事を、言うんだ・・・言いたい事をね」 軽く後ろに向かって、ニヤリとセルヴィシュテは笑った。 例の音が・・・少し、低くなった。 レガンは、まだ躊躇していた。 先ほどは、来たからにはと決心したのに、いざとなると、なにから話せば・・・。 すると、セルヴィシュテの握る手が、少し強くなった。 レガンは、目を開け・・・ ゆっくり呼吸をして・・・ 話し始めた。「ラマダノン王・・・ 急に来た、俺の話、どこまであなたが信じるか。 しかし、俺は、話す話術、才能もなにもない。 俺は、自分の持ち駒を、全部出すしかないようだな・・・」 レガンは、銅の胸当ての内側にしまった、銀貨を5枚・・・ 取り出すと、床に置いた。「これは、俺の友がよこした・・・その残り、です。 友は、ナイーザッツの城に勤めている・・・ そいつが言った・・・ このラマダノンの様子をみてこいと・・・ あいつは、俺らの身なりがみっともないから、見苦しくなくして行けと言った。 俺は、この金を一緒に来る奴にやる、だからついて来いと言った・・・ そして銀かは5枚残っています。 王よ、あなたは、友は金を何枚俺によこしたか、ご想像できますか・・・」 ビクっとセルヴィシュテの手が震えた。 レガンは、言いたい事は半分は言った。 しかしなんだ? 王を試すような事を言うとは? なぜいきなりそのような無作法な言動を・・・?*****************にほんブログ村 参加ランキングです
February 4, 2014
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ラマダノン城。 白い石で城壁が築かれ、城内には赤く美しい絨毯が敷き詰められ、見事な装飾が壁やら柱やらに施され・・・ まるでもって、絵に描いたような城であった。 城内は大変に広く、たぶんここは大広間なのであろうか・・・ 貴人や、庶民的な格好の人も大勢に溢れている。 中には軽装の兵士のような者もいるが、物々しい雰囲気はなく、人々はまるで大きな市場にでもやってきたかのような活気である。 知り合いの者同士が出遭うと、声をかけあったり、小さな子供は駆け回ったりと・・・ はて?これが城の中? と、目を疑うような光景であった。 その、これが城の中?という場所に、茶色の髪の少年セルヴィシュテ、他にレガン、ルッカ、リュー、オガラ、チルセといった、ナイーザッツから密かに偵察に来ていた少年達が、紛れていた。 いや、紛れていたのではない。 一応、承諾は得ていた・・・ と、思う・・。 であるのに、少年達は、微妙に不安げである。 事がうまく運びすぎ? というか、商人の馬車に乗せて貰い、夜が明けて朝になり、馬車から降ろされたら既に「ここ」だった・・・ ついでに、夕方同じ場所に馬車で乗り付けるから、帰りも送ってくれると、商人は申し出たのだった。 長髪のレガンは腕組みをして唸るしかない。 こういう事態は彼にとって初めてであった。 普通の人たちが沢山いる、しかも城の中・・・。 思わず、レガンはセルヴィシュテに救いの目線を送った。 茶色の瞳の少年は、少年の集団を軽く端に集めると、決心した表情で話し始めた。「商人がここが城だというなら、きっとそうに違いない。 俺は、実は、エルダーヤの城の事は、少しは知っている。 あっちの大陸の王様も、一応知っている。 けれど、こっちの事は、また事情が違うようだ。 でもとりあえず、あまり緊張しないほうが得策だ。 都合よく、そこらへんの平民もいるみたいだ。 民衆に紛れて、王様の情報とか手に入れよう」 ルッカが、軽く頷いた。 そして、少年達に目を配って話しはじめた。「よし。 では、レガンは纏め役になれ。 俺とまずは二手に別れよう。 俺はあまり交渉には自信がない。 セルヴィに、俺についてもらう。 リュー、オガラ。 お前らはレガンに。 チルセは俺についてこい。 とりあえず、昼時まで情報収集だ。 それでどうだ」 少年達が頷くと同時に、2組は分散した。 ルッカは、チグハグな格好に、日に焼けた顔が勇ましい、そろそろ青年という風貌である。 チルセは、ややあどけない雰囲気を醸し出しているが、目つきはやはり鋭い。そのチルセは、銅の胸当てだけが防具らしいものである。 セルヴィシュテは、ルッカの斜め後ろにつき、にこやかにあたりを見回していた。「ルッカさん、あの剣士っぽそうな人どうです? 俺らは剣士として雇い先を求めている、とかって話しかけるといいかも」 と、素早くルッカは訂正した。「いや、あれは駄目だ。 あいつは、格好だけの剣士さ。 もうすこし剣が使えなきゃ話にならん」 言われたとたんにセルヴィシュテはムーっとふくれて言った。「もう、駄目なのはルッカさんですよ! そうやって、えり好みするから・・・ じゃあ逆に考えてください。 その、駄目駄目剣士が、いっぱしの剣士と”思われたら”、得意になって、色々話してくれるかもっ」「ん?ん・・・・んん~・・・・」 2組に別れた少年達が、それぞれに4、5人と話を交わしていた時。 ゴーーーーン・・・ ゴーーーーーーン・・・ と、厳かな雰囲気の鐘の音が、響き渡ってきた。「?」 ナイーザッツから来た少年達が、目線を上に上げ、音の正体を確かめようとすると、周りの人々が一斉に、城の壁際に寄り始める。 少年達も、それに習い、壁に寄った。「なにが始まるんですか?」 思わず小声になって、今まで話をしていた婦人にリューは言った。「あら、知らないの? 王のおでましよ」「・・・・・!!」 一方、セルヴィシュテ達も、全く同じ会話を交わしていた。 王が・・・ どこに? なぜ? わからないことばかりのまま、まだ鐘は鳴り響いていた。 おおお・・・ 人々の歓声が僅かに上がった。 なにかの楽器が吹き鳴らされ、爽やかな曲を奏でていた。 どうやら、この雰囲気は、王が姿を現したのであろう。 王と思われる者が、語り始めた。 その声は、丸い天井に反射されているのだろうか。 よく響いたが、穏やかで、透き通った声であった。「皆のものよ。 本日も、よき体、よきこころで過ごしておるかな? さあ、いつものように、変わりのあったもの、つらき思いをしたもの・・・なにかあれば、遠慮なく、我が前に来るがよい・・・」 楽器の音が低い音から、高い音に。 単調ともいえる、静かな音・・・ なにが、その音を奏でるか・・・ 壁際の人ごみから、誰かが王の居ると思われる方へと出て行った。「・・・・ 王様が、謁見しているんだ・・・」 セルヴィシュテが、思わず呟いた。「すごい。 こんな・・・こんな・・! 謁見があるなんて・・・!!! 聞いた? さっきのは王様が言ったんだよね?きっと? いつものように、って言っていたよ・・・ 毎日、やっているのかな・・・」 ごくり、と思わずつばさえ飲み込む。 目の前には民衆が立ちはだかり、謁見がどのように行われているのか・・・ 王がどこにいるのか・・・ 定かではない。 セルヴィシュテが思わず足を踏み出したのを、ルッカが軽く留めた。「・・・まさか、行くのか?」「・・・・い、行かないの?」「・・・・・」 ルッカ、チルセは、不安げな表情を隠しもしていない。 彼らは、剣での戦いは何度もかいくぐって来たが、このような状況は全く初めての事・・・ 未知というのは、まさになによりも恐怖なのである。 セルヴィシュテは二人の方に自分の手をそれぞれ置いて、大きく頷きながら言った。「大丈夫ですよ。 行くだけ行こう。 こんな機会を逃したら、直接お会いするなんて、ないかもよ」 単調な音楽が、高くなり、低くなり、滑らかに流れ続けている。 渋い顔のルッカが頷くまでに、6人の者が王の所に行った。 目の前の人々の壁を少しだけ押しのけ、若々しい少年3人が人垣の前に出た。 そして、仲間を探す・・・ 勿論、レガン達をだ。 彼らは直ぐに見つかった。向こうがこちらを見つけたからだ。 そして、ルッカは、レガンに合図を送ると、恐る恐る、広間の前へと足を出した。 ややぎこちない動作で・・・ 数人の少年が、広間の真ん中に、恐る恐る、歩み寄る。 そして、彼らは前方を見た。 王が居るであろうと思われる方向を。 壁際には、沢山の人々がひしめいて立っている。 赤い絨毯が、真ん中だけ、残っている。 その絨毯の先・・・・ 階段が、5段。 あまり高くない階段である。 その階段にも、赤い絨毯が敷いてあった・・・・ 階段の先は・・・・ よく、見えなかった。 半透明の布が、天井から垂らされ、天蓋のようになっている。 階段から向こうと、こちら側は、その布によって、一応遮られているようである。 さっ、 セルヴィシュテが、躊躇なく一歩踏み出した。 その後ろについていくように・・・・ ハーギーであった少年達が、ちょっとした萎縮感のようなものを感じながら付いていく・・・・*****************にほんブログ村 参加ランキングです
February 4, 2014
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ラトセィスがボボドの山だと言っていた、青い山が、大きく裾野に広がっていた。 どこまでも続くかのような平原を駆ける人影が5つ。 そのうちの一人は、一人を背負っていた。 背負われているのは、15歳位の少年。 背負っているのは、大体17歳位の少年だろうか。 駆けている少年達は、年上でも18歳位。 その一番年長者が、一番先頭を切って走っていた。 時は夕刻。 もう、日が傾き落ちて、暗くなり始め、辺りは寒々としていた。 背負われている少年は、半分寝ていた。 まあ、この走っている少年達から言わせれば、足手まといというところであろう。 この少年は走っても早くないし、休息や、眠る事も必要である。 ところが、他の少年には、殆どそれらは不要であった。 一般的な少年達の走りとはまた違った、足の運びで・・・ 腰に差した剣が邪魔にならないような走り方、そして、無駄のない動作、速さ。 俊敏さ、迅速さと、そしてなにより、洞察力に優れていた。 彼らが向かっているのは、今まで彼らが腰を落ち着けていた国の隣の、ラマダノン王国だった。 そこに行こうと言ったレガンは、昼間・・・ 仲間が今背負っている少年セルヴィシュテが言った言葉を反芻していた。 ハーギーって、西にあるんですよね・・・ ここまでに来る途中、ラマダノンは通らなかったんですか? 茶色の瞳で、屈託なく聞かれ・・・ レガンも、おや、と思った。 そう、通らなかった・・・。 その名前は知っていたが、神々の住まう山という場所だということを恐れ、やや南を移動して来たのだ。 勿論、ナイーザッツに来るまでの間、色々な町で落ち着こうと努力もしてきた。 が、結果的には追い出されるように東、東へと来たのだった・・・ レガンは、脇に流したやや長めの髪をいじりながら、夜空を見上げた。「おい、レガン」 チルセが声をかけてきた。 一番最後、つまり5番目に並んだ少年だった。「ああ。 判っている。 馬車が俺らを追っているな・・・」 レガンが頷くと、少年達は、わざと足を止めた。 しかもその上、わざと分散しなかった。 これまで、日中も馬車と廻り合わなかった訳ではない。 それらは、かなり遠方を通り過ぎて行っただけである。 だが、今度の馬車は、明らかに少年達を目標にしているのを、彼らは察知していた。 もし・・・追ってくる馬車が敵意を持っているのであれば、5人は散って、相手を包囲した方が戦術的にいいに決まっていた。 しかし、ルッカは足元に薪を焚き始め、オガラは地面に腰を下ろした。 レガンも腰を下ろすと、セルヴィシュテを背負っていたリューも腰を下ろし、眠そうな少年の目を少し開けさせた。「腹減っただろう。 夕食にしよう」 だが、それほど時刻も経たぬ間に、馬の嘶きが、セルヴィシュテの耳に聞こえてきた。「こんな時間に、馬・・・」 遠くを見るようなセルヴィシュテの目線に、オガラがカカカと笑った。「こんな時間にガキが走っているのも怪しいからな。 こうやって、わざと休息しているのさ」 セルヴィシュテは、はっとしながら、周りの少年達の表情に目を配った。 みな、一見穏やかな表情をしているが、その目線は、これから来る馬車を、見えても居ないのに捕らえているかのようだ。 しん、と静かになった。 どこからともなく響く馬の蹄・・・ 一頭ではない。 ・・・三頭? 明らかに、こちらに向かっていた。 特に道などないから、他にも経路がありそうなもの・・・ こちらに、人が居るのを知って来ている。 少年達は、焚き火に目を落としていた。 体温を落とさぬよう、旅人が焚く火・・・ 逆にまたそれは、旅人が望まぬ略奪者を呼び込む火でもある。 ガツ! ガツ! 馬の蹄の音が鳴り響き、ブヒヒヒ~ン!と嘶く声が、傍で停まった。 年上のルッカが、チラリとレガンを見、それからゆっくりと立ち上がった。 もはや、陽は落ち切り、辺りは暗い。 平原であるこの地で身を隠す事はかなり無理に近かった。 しかし夜となれば、常人であれば、闇に身を隠すこともできる・・・ その闇に馬を溶け込ませ、馬車がそこにいた。「こんばんは。 なにか、ご用件ですか?」 ルッカが、なにげない足運びで馬の方に近づいて、声を発した。 すると、意外にも落ち着いた雰囲気の声が返ってきた。「うむ。 実は、明るいうちから君達を見ていた。 私達は商人でな。 その様子では、なにかと入用ではないかと思ってな。 追いかけてみた」 その声の主が火の明かりに照らされると、茶色の髪の少年は、あっと驚いた!「あなたは・・・チューレンド王の時の?!」「おや、おや・・・」 商人は、とことん呆れたような顔になった。「君は、たしかセルヴィ。 どうしたんだね・・・ まったく、我らの行く先々に待ち構えるとは」 商人の後ろから、もう2人、商人が現れた。 茶色の髪の少年セルヴィシュテの記憶に強烈に刻まれた、あのチューレンド王への道のり・・・ その道のりを乗せてくれた、あの3人の商人達であった。「あ、あなた方は、チューレンド王のお抱え商人だったのではないのですか?」 急き込むように聞くセルヴィシュテの頭に、衣装の商人が手をあてがった。「まあ、そう慌てるな・・・ まったく、君と関係を持つと厄介な事になるようだな。 それよりもだ」 最初に声をかけてきたその商人が、セルヴィシュテ以外の少年達に、笑いかけながら言った。「このセルヴィとは、かなり前に知り合ったのだよ、君達。 君達を見たときに、面白そうだと思ってついてきたのだが。 どおりで面白いはずだ、このセルヴィがいるとは・・・」 衣装の商人は、どっこらしょっと言いながら、薪の脇に座った。 もう一人の剣の商人は、優しげな笑みを見せながら、6人の少年の姿を見回した。「わたしたちは、色々な方々と取引をする商人。 これまで沢山の人たちを見てきた・・・ 半年前であろうか? このセルヴィに出遭ったのは」 剣の商人も薪の前に座った。 少年達は、目を見合わせながら、ゆっくりと座った。「セルヴィシュテ。 知り合いのようだな」 レガンに言われ、セルヴィシュテは照れた笑いを見せた。「俺の名前は長いから、セルヴィでいいよ。 あの方々は、知り合いっていうくらいでもないんだ・・・ ほんの少し、馬車に乗せて頂いた程度だよ。」 セルヴィシュテは、薪に手を伸ばして言った。「セルヴィ、チューレンド王とはお会いしたようだが、君の用件はそれでは済まなかったのかな? 今度はどこへ行くのやら・・・」 剣の商人は、一番自分の近くに居たチルセの剣に注目していた。「・・セル・・・ヴィ・・・。 君は、チューレンド王という方にも、お会いしたのか」 レガンがたどたどしく聞いてきた。「うん。 素晴らしい方だったよ。 この3人の商人の方が、お城まで運んで下さらなかったら、辿り付かなかったと思う」 にっこりと、セルヴィシュテは笑った。 レガンは少し、セルヴィシュテを見る目つきが変わった。 ニルロゼが、この少年に剣術を教えた事には、確かに驚いてはいた。 が、ややタカをくくっていたかもしれない。 このセルヴィシュテ・・・何者だ? 衣装の商人が言った。「それにしても、セルヴィ・・・ 君は、友達を増やすのが得意なようだね。 しかも、かなりの手練の少年ばかり」 剣の商人が、チラリと5人を見回した。「うん。 有難いことに、俺の行って見たいところに、彼らも行くというから同行をと言ったら、嫌がらずに引き受けてくれたよ」「な・・・」 レガンが慌ててセルヴィシュテの方を見たが、茶色の髪の少年は、軽く片目を瞑って合図を送った。 そして、縫い合わせた茶色の服を着込んだ少年は、腕を組んで、自信満々に喋った。「俺はいつもこうして・・・・ 都合よく、自分の行きたい先に、誰かが連れていってくれる運命なのかしら。 まあ、半分以上はきちんと自分の意思で来ているはずなんだけど。 でも、ここっていうところで、こうして、俺を連れにきてくださる方も・・ ねえ、そうだろ、衣装の商人」「いや、しかし、君には参った」 ルッカが、やや呆れたようにそう言った。 鎧が積まれた馬車の荷台に、少年2人が乗っていた。 一人は、18歳くらいのルサである。 濃い金髪を短めに切り上げ、鋼の胸当て、皮の肘当て、銅の腰当と、まるでチグハグな出で立ちである。 それらは、ハーギーで勝つたびに、褒章で得たもので・・・ その度、得た年代も違うものであるからにして、一貫性がなくなっているそうだ。 とはいっても、かなり使い込んでいるので、本人に馴染んでおり・・・勿論、本人との均衡もなぜかあっていた・・・。 ルッカは、淡い色の青い瞳で、馬車の中の光景を眺めた。 なぜ、商人の行き先が・・・ラマダノンだと、このセルヴィシュテは判ったのだろう。 あれから、セルヴィシュテは、商人がラマダノン王とお会いするはずだ、俺らもそちらに向かっていると言い切った。 すると、商人たちは示し合わせたように頷き、馬車に自分達を分けて乗せ・・・ 馬車は3台並んで西へ走っていた。 ラマダノン王国に本当に行くのかどうか、実は・・・ やや、不安でもあった。 が、着いても着かなくても、この際ややどうでもいいのだが・・・・ 大体、この風貌では、庶民が怖がってまともに接しないことを、ルサも自覚していた。 例え、身なりを整えても、放つ雰囲気が、尋常ではないのだ・・・ だから、ラマダノン王国に行ったとしても、レガンが言ったように、偵察であり・・・ ちょっと、内部を見ればそれでいいのだ、と思っていた。 でなければ、6日で戻れる訳がない。 だというのに・・・・ いきなり、王と会う・・・とは・・・ ルッカは、固唾を呑んで・・・茶色の髪を持つ少年、セルヴィシュテの横顔を見やった。 そのセルヴィシュテは、ルサの様子などお構いなしで、荷物の甲冑に見入ったり触れたりと、忙しそうである。「いいなあ。こういうの・・・。 前回の積荷と、嗜好が違う感じもするなあ。 創っている場所が違うのかな」 天然なのか、強運なのか。 いきなり、馬車に乗せて貰うことになって・・ その上、目的地にいける・・・ これは、幸運なのか?「あのさ、君は、疑問に思わないのか・・・」 ルッカは、思わずセルヴィシュテの手元に近づくと、声をかけた。「なにがです」「だ、だから・・・ あの人たちが、俺らの行こうとする先に行くなんて、都合がよすぎない?」 馬車の車輪の音が鳴り響き・・・ 荷台は何度か傾いた。 硝子の嵌め込まれた窓は今は閉じられ、外は暗い・・・ この馬車がどこに向かっているかなど、中の者にはわからない・・・「都合、いいかな」 セルヴィシュテは、軽く笑った。「都合だというなら、それは向こうからやってきたんです・・ そうでしょ? 向こうが、先に声をかけてきた・・・ 彼らは、俺だって判って声をかけてきていた・・・」 セルヴィシュテは、鎧の山の中の一つに触れながら、ゆっくりと言った。「俺は驚いているんです。 あの方々は、チューレンド王のお付の商人だと思っていたから・・・。 でもそうじゃなくて、ほかにも行き来しているなら、勿論・・・ 他の王のところ・・・ こう思うのは自然ですよね」 セルヴィシュテはにっかりと笑った。 表情こそ笑ってみせた少年セルヴィシュテだが・・・ 心境は穏やかではなかった。 また、商人と出会うとは思っていなかった・・・ それが都合よいというなら、確かにそうだろう。 でも、それはまだ序の口なのだ・・・ チューレンド王の城のような・・・ あのような、城なのだろうか? ラマダノン・・・
February 2, 2014
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