海馬

crown2海馬

＜著者＞
池谷裕二・糸井重里（いけがやゆうじ・いといしげさと）

＜内容＞
あふれる情報の洪水の中で何を覚えておくかの差配をするのが「海馬」。　脳細胞が年とともに減って行くのに対し、海馬は年を経て使えば使うほど成長し能力が上がって行く。

第一章
脳の導火線
「もの忘れがひどい」はカン違い。　としをとったからもの忘れすると言うのは科学的には間違っている。　何でも初めての子供時代は新鮮な感動を伴って覚えるから忘れないだけ。

脳の本質はものとものを結びつける事
ものとものを結びつけて新しい情報を創る事が脳の仕事。そして何かを解決しなければならないとき、全く関係なさそうなもの同士をとっさに結びつける。

ストッパーを外すと成長できる。
無意識のブレーキを外すと脳は飛躍的に向上する。

三十歳を過ぎてから頭は良くなる
ものとものの間につながりを感じる能力は三十歳を越えた頃から飛躍的に伸びる。

脳は疲れない。
脳は寝ているときにも働き続け全く疲れない。

脳は刺激がない事に耐えられない。
なんの刺激もない事、固定した見方で同じ事を見る事に脳は耐えられない。

脳は見たいものしか見ない。
脳は自分が混乱しないようにものを見たがる。　一度入った固定観念はなかなかとれない。

第二章
海馬は増える

脳の成長は非常に早い
実体験を通してものごとに上達するのは速い。これは脳にできていく回路が「二の何乗」という形で増えるから。

脳は分からない事があるとウソをつく
理不尽な事を説明するために脳は無意識のうちにウソをつく。

マジックナンバー7
人間のワーキングメモリーはわずかに7+-2

海馬は増やせる
生まれてから減る一方の脳細胞の中で海馬だけは成人を超えても増え続ける。　海馬が大きいほどネズミは賢い。

旅は脳を鍛える
刺激を与えると海馬は増える特に空間の情報がいちばんの刺激になる。

脳に逆らう事がクリエイティブ
脳は刺激を求めると同時に安定した見方をもとめる。　クリエイティブになるには脳の画一的な見方に挑戦する必要がある。

「これが他人の悩みだったら」が悩みを解決するコツ





第三章
脳に効く薬

イチョウやぶくりょうといった生薬は朝鮮人参は記憶増進に効果がある。

やり始めないとやる気は出ない
やる気を生み出す場所は側坐核にあり、そこの神経細胞が活動すればやる気が出る。　つまりやり出さないとやる気は出ない。

寝る事で記憶が整理される。
昼間記憶された情報を海馬は寝ている間にいろいろと組み合わせて整理する。　このプロセスが非常に重要。

酸化する事は腐ること
酸化防止剤で老化が止まるかも。

失恋や失敗は人を賢くする。
脳はミスした方が記憶の定着率がいい。　間違いは脳の飛躍のチャンス。

生命の危機が脳をはたらかせる。
ちょっとした危機状態をつくると脳はよく働く。


第四章
やりすぎが天才をつくる

受け手がコミュニケーションを磨く

センスは学べる
人間の認識は感性も含めて記憶の組み合わせ。　だから学べる。

やり過ぎてしまった人が天才
「思わずやり過ぎてしまうほど動機のあるひと」が天才かも。

予想以上に脳は使い尽くせる。
自分の視点に新しいものが一つ加われば脳のパターン認識が飛躍的に増える。　これを繰り返せばどんどんアイデアが出るようになる。

問題はひとつずつ解こう
達成感を生むには小分けの目標で一つずつ解いて行く。

言ってしまった事が未来を決める。
言葉は呪いのように未来を決めてしまう。

他人とつながっている中で出た仮説には意味がある

＜感想＞
対談なので、一人の人が整理して書いたものより内容は少ない。　
上にかいたまとめを読めば、内容はおおむねつかめる。

ただし、脳の研究の最前線にいる池谷から糸井が話を引き出していく様子はじつに面白い。

引き出しながら自分も学び、そのことを楽しんでいる様子が分かってこちらも楽しくなる。

一番の楽しさは人間の無限の可能性が感じられる全体的な流れにあると思う。

私が一番感心したのは、寝ている間に海馬が情報同士を結びつける試行錯誤をしながら情報を整理していると言う下り。　神秘的です。

また、「脳は見たいものしか見ない」という下りでは京極夏彦の「姑獲鳥（うぶめ）の夏」でのトリック。　［目の前にある死体が誰にも見えない］を思い出した。

＜勝手にレーティング＞
納得度：4.5
オリジナリティ：4.5
実用度：4
アマゾン：4.5
合計：17.5

殿堂入りです！！

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