TOKYO UNKNOWN SPECIES ANNEX

2003.11.21
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私には、イラストで食うという志を同じくする友人がいます。オープンチャットで知り合ったのですが、同い年で住まいもそう遠くないし、贔屓は違えど音楽やプロ野球の話でも盛り上がれるので、よく拙宅で呑んだりする間柄です。

私は無名ながら一応プロのフリーイラストレーターですが、彼は去年までSEを生業としており、イラストレーターとしての実績も作品の受賞歴もありません。でもサラリーマンに辟易して職を辞し、連れ合いと別れたのを機に夢に挑戦したいのだと言います。

彼がこれから進もうとしている道は、かつて私が歩んで来た道と符号します。自然応援も熱を帯びる半面、彼の見通しの甘さも他人事ではないんです。

彼のテーマは写実的なタッチの美女。よくいえばキャッチー、悪く言えばありきたりです。ディテールの表現力は一定のレベルに達していますが、全体はバランスを欠きます。画材も鉛筆のみしか経験がなく、カラーリングのスキルは未知数。加えて、彼はまだ自分の好きな作家さんの作品を模写している段階です。彼が本当にオリジナルのタッチで着想を形にしてお金を取れるようになるには、まだまだ相当の訓練が必要でしょう。

しかし、私が何より違和感を覚えるのは、彼の「覚悟」についてなんです。

彼は自身のサイトでこれまでに描いた作品を公開しています。知人に観に来てもらうのが喜びらしく、メールで営業してはアクセスカウンターのインクリメントを稼いでいます。

絵とサイトの製作が趣味で、アクセス数をプチ自慢したいならそれもいいでしょう。でも、イラストに限らず、プロの作家の道はイバラの道。そこにかなり遅れて来た挑戦者の姿勢としては、随分優雅じゃないでしょうか? 厳しい言い方をするなら、相当に呑気です。

「サラリーマンに向かないから」という理由でフリーランスを、それもとりわけライバルの多いイラストの世界を志向するのだとしたら、あまりにも無謀だと言わざるを得ません。彼はまだ困難さを想像できていないのかもしれないけれど、それを日々の生活は待ってくれません。彼は特別資産があるわけでもないうえに、マンションのローンまであるんです!

彼に絵を諦めろと言いたいのではありません。これから彼が短時間に飛躍的な上達を遂げない保証はどこにもないし、常識的には難しいとしても、そういう怪し気な価値観を楯に「無理だ」と決めつける大人たちを激しく憎んだのは、誰あろうこの私なのですから。



イバラの道を選ぶなら、それなりの装備と計画が必要です。そして私たちには、計画表を前に夢を語る優雅な時間はもう残されていない。そんな「覚悟」を、彼はそろそろ思い知らなくてはなりません。





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最終更新日  2003.11.21 17:33:40
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