セイヤのblog

2015.04.19
XML
テーマ: 徒然日記(23577)
カテゴリ: 歴史
NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の視聴率が思わしくない様です。
前々回の「八重の桜」も「地味である」という何とも切ない理由で良い数字が取れなかったらしいのですが「花燃ゆ」も松陰・久坂の義兄弟ラインの地味さが災いしているのでしょう。幕末から維新の歴史上の人物の市井での人間像を作り上げているのは其の殆どが司馬遼太郎氏の歴史観によるものですが、司馬氏に限らず歴史家や市井の歴史マニアにとっても初期攘夷派の松陰や久坂という存在は関心の薄い、或いは反意さえ感じさせる存在の様です。
今夜も放送がありますが、前回の放送など一見相反する思考がぶつかり合う、可なり深くて考えさせられる内容だったのですけどねぇ・・・


幕府老中の間部詮勝の暗殺計画の露呈を機に師である松陰が獄に繋がれ、松下村塾を潰された塾生達が松陰の最大の理解者を自認する小田村伊之助に直談判するシーンがありました。小田村は松陰の影響によるファナティシズム(熱狂)に魘された塾生たちの浅慮を嗜めます。
「この中の一人でも自分の頭で老中暗殺の是非を考えた者があるか?」
「己の本心から動こうとするものがあるのか?」と。
真に何かを守ろうとする者は血気に流行らず、周りを知り藩を知り発言力を増す事に尽力せよと諭します。理性的・知性的な意見であり、何となく 今年の東大の卒業式で話題になった学長のスピーチ と重なったのですが、一方ドラマの終盤では松陰に此の様な台詞も吐かせます。
獄の松陰を見舞い「お前の死に場所はこんな場所では無い」と反省を促す小田村に対して「お前は僕を止める事しかしない」と断じます。

「時は来るが、それは今では無い。」
そういう事は全て嘘であり、立派な事を言いながら傍で見物するだけで何も事を成さぬ人間の言い訳に過ぎないと喝破します。
「声を挙げぬ者に、声が届かぬ者の気持ちは解らない」
「事を成さぬ者に、事を起こして失敗した者の気持ちは解らない」
そして自分自身も結局は事を起こせぬ役立たずだと・・・

実は小田村も松陰も双方どちらかが間違っている訳でも無い相反する意見であり、井伊直助の現実路線から複雑にうねりながら紆余曲折して明治維新に至る過程で無駄死にしたものなど居ないのですね。維新を観る事無く死んで行った志士を司馬遼太郎は花神と読んで悼んだのですが、其れには井伊直助だって水戸藩の過激浪士だって含まれるのです。
小田村は維新後まで生きますが、松陰の存在が無ければ維新が成されたか解らない。
歴史はワンシーンを切り取ると善玉と悪玉を設定しやすいですが、ある程度のスパンで考えると必然性が見えて来てそうした設定の無意味さを知る事になります。
歴史的に影の薄い松陰や久坂という存在もそうして見ると、愛おしささえ感じられるのですね。

自分の生きる現在も何れ過去となり歴史と成る事を考えると現在に悪とか不合理の役回りを演じている事象にも必然性が在り其処に真理が在る可能性さえあります。当然その逆もあるのですね。
お茶の間でTVドラマ見ながらそんな事を考えられる日本の環境は可なり民度が高いと思いますよ。

自由.jpg





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2015.04.19 17:05:41
コメント(4) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:「花燃ゆ」で「歴史」を考えよう。(04/19)  
kopanda06  さん
こんばんは。

善悪の判断は難しいものです。
勝者が善とされる場合が多くありますから。
しかしその善も後世に見直される場合が多々あります。
その人なりに正義があり、善とする理由があったわけでしょう。
ただ、そこに争いが生まれるとすれば残念です。
(2015.04.27 23:07:25)

RE kopanda06さん  
セイヤ777  さん
毎度の事でレスが遅れて失礼しています。

私は「時代の要請」という表現を使う事が多いのですが、人間が正しいと思う感情は時代が刷り込んだバイアスに支配されます。例えば永く帝国主義による植民地獲得こそが自分達の幸福に繋がると信じていた時代を現在で肯定する人は殆ど居ないと思いますが、現在の価値感を当て嵌めて「悪」と断じるだけでは意味が無く危険なものさえ感じます。
此の「悪」と現在の「善」は変容を挟んで同一線上に在るもので「全く別のものでは無いのだ」と考えたいと思います。米国での社会学実験でアインヒマン実験というのがありますが、其れは現代人全てに「ナチになる可能性」がある事を示していました。
太平洋戦争が顕著な例ですが「リセット平和」を謳歌する現代日本の状況は危うい・・・
グローバル化という経済帝国主義に後れを取っている原因もそんな処に起因しているのかもしれません。
(2015.05.02 12:13:21)

Re:「花燃ゆ」で「歴史」を考えよう。(04/19)  
ちぃぶう427  さん
そのとおりです!!
この時代、簡単にいえば「生き残った者勝ち」で、維新に役職に就いた人は、こういう「無駄死に」した人たちの屍を踏んで立っているのです。
いや、無駄死にではないんですよね…
みんない大きな意味や意義があった。

要するに、この時代の人たちは「日本国を思う」事では全員一致しているのですが、そこまでの考え方のプロセスの違いで大きくぶつかるんですよね。
誰が間違いだということはないんでしょうね。

どうにも、この時代を語るには熱くなってしまいます。
幕末・維新を語るには、もっと時代を遡らないとなりませんね。

(2015.05.10 17:11:22)

REちぃぷう427さん  
セイヤ777  さん
この時代は本当に面白いですよね。
私は何時も思うのだけれども、結局維新を成し遂げたのは「何派だったの?」という部分。
「開明派」「開国派」は後付の総称であり、良く考えれば井伊直助まで遡ってしまいます。
・・・が、その問い建て自体が無意味な程に揺れ動き続けた流動的な時代であったという事なのでしょうねぇ。
(2015.05.11 01:31:03)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

kopanda06 @ Re:TENETを観て来ました(11/07) こんばんは。 いつもありがとうございま…
セイヤ777 @ Re[1]:TENETを観て来ました(11/07) kopanda06さんへ こんにちは、 久しぶりに…

フリーページ


© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: