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August 1, 2013
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カテゴリ: コラム
最近,あまりシンセサイザーという楽器が目立たないように思う.
ここ5年くらいは各社ハイエンド機種もやりたいことがなくなってメモリの大容量化が主な仕様変更なんてのがざらだ.
PCM音源系のシンセなんだからもちろんメモリが膨大になりサンプルが音程毎やベロシティ毎により細かくなれば表現力が上がるというのは理屈として成り立っているわけだが(それでもPCの容量にかなうはずもなくVSTのようにはいかないわけだが)過去機種のような冒険心は一切ない.
その背景には景気と経済が密接に絡んでいることは容易にわかる.

アナログシンセが数十年の時を経て再び脚光を浴び始めたのも2002年頃だろうか,Moog社の復活や元Sequential Circuitsの技術者Dave Smith氏がDave Smith Instruments社を発足したことによりminimoogやProphetの後継機種がアナログシンセで復活.
細く長くモジュラーシンセをつくり続けていたAnalogSystemsやDoepferなどのメーカーが日本国内でも認知度を上げていったのも同時期くらいじゃないかと思う(私も当時Doepfer A100,Analog Solutions VOSTORKまたAlesis A6 Andromedaなどのアナログシンセを購入しようかと本気で悩んだ・・・あげくMinimoog VOYAGERを購入)

そしてここ1年くらいでまたアナログの波が戻ってきた.
KORGのMS20miniの発売がそれを物語っているといえよう.
メーカーとしてアナログ回路の機器を再製造するのは勇気がいることであり非常に喜ばしいことではあるのだが,逆にいえばヴィンテージシンセの状態維持に限界が来ているという捉え方も出来なくはない.


それだけ正常品のたま数が減っているのと同時に代替え部品がなくなったり技術者が引退してしまったりと壊れた機器を直せなくなっているとも想像できる.

アナログシンセの醍醐味は回路がアナログであるということである.
(ツマミ等によるUIのわかりやすさももちろんだが,それだけであればアナログモデリングでも代用は可能)
これは部品そのものが発音部分であるVCOの波形を作り出しているわけで,部品の特性が変化したりしただけで音のキャラクターが変わってしまうというリスクを抱えている.逆にいえば唯一無人の楽器になるわけなのだが.
ようするにオリジナルはオリジナル部品からしか生まれないわけで部品が存在しなければ代替え可能なものは復活出来るのだが,全く同じものではなくなるという可能性が潜んでいるのだ.

また,部品精度も30年前のそれとはまったく異なる.
温度特性ひとつとっても昔は部品自体が大きく環境温度に左右される表面積が大きかったのに対し最近は部品も小さく温特も非常に優秀になり,良く言えば安定した回路になっていくわけだが,逆を言えば昔のアナログシンセ特有の不安定さから生まれる図太さみたいなものが必然的に失われてしまうなんてこともあるわけだ.

もちろん,それがライブやレコーディングでどれほどの恩恵を受けるのかは神のみぞ知るといえるほどのレベルというか,むしろ不安定要素は演奏に支障をきたす可能性すらある.
オールドアメ車を「故障するのも醍醐味」という人にはピッチが安定するまでに30分とか電源を入れておかないといけないなんていうアナログシンセは愛おしく思うだろうしモチベーションが上がる素材としてはぴったりかもしれないが,それが万人うけするというわけではない.

そんなわけで一部の人たちにいとっては涙ものであるアナログ復活劇.
まるで子供帰りしたかのようなシンセサイザー市場だが別の視点から今,新たな機種が注目されている.



実は同メーカーからこの機種の前進が日本でも発売されたのは2003年頃なのだ.
その頃からVST市場は沸騰しておりハードウェア音源として使いたいという人は多くいたわけだが,レイテンシーをギリギリまで追い込むためにはPCスペックを必要とし,何よりもいかなる会場でも安定して再生できなければならないという壁が非常に高く一般的ではなかった.
それを可能にしようとしたのが"RECEPTOR"だった.
当時,日本円でも200k以下でありシンセ1台に匹敵していたわけだがVSTを本番使えるのであればとプロミュージシャンはこぞって使用した.
ただし,問題点も多数あった.その中でも一番頭を悩ませたのがライセンスだ.

1ライセンスで制作でもハードウェアとしてこれを使用すると割り切るとVSTの強みである音色ごとシーケンスデータに保存するという手軽さが失われてしまいどっち付かずになる.
ライブでも,画面が見れないため会場でのチョットした音色変更もプリセットで用意しておいた音を加工するためには画面やマウスなどが必要になったりと全く持って手軽ではなかった.
結局,一般認的には浸透しきらなかったのだ.

そして昨年,市場では限界すら感じられるPCM音源シンセをしり目にVSTを持ちだすコンセプトが再び復活した.

モデルも複数あり,用途別に使い分けられるように工夫されている.
・RECEPTOR VIP
こちらは2chのライン/マイクインプットを持つモデル.Hi-z入力がないのは残念だがDIを用いればギタリストにも使用できる.エフェクトのVSTiをインストールすれば,夢のアンプ&エフェクトシステムを2Uサイズで持ち出せるすぐれものだ.
・RECEPTOR 2+ CLASSIC
こちらは旧RECEPTORの後継モデルとも言えるべくモデル.アナログの2chL/R入出力やディジタル出力が装備されておりソフトシンセを持ちだすのに威力を発揮できる.スタジオワークでも本領発揮できるといえよう.
・RECEPTOR TRIO / RECEPTOR QU4TTRO
現段階では発表のみで発売時期が未定だが,8ch入力を備えたレコーディングモデル.バンドレコーディングなどでVSTiプラグインをハードウェアとして使用すればメインPCに負荷を与えずに掛け録りもインサーションも思いのままだろう.

本モデルは前モデルでの欠点を多く克服していると言っていい.
なぜなら,初回からバンドルとしてKomplete 8がインストールされてくるのだ(Komplete 9が発売されている現時点でどうなっているかはわからない)
日本では未発売だがこのモデルは今後のシンセサイザーへ大きな影響をもたらすことと思う.

また,SM ProAudio社のV-MACHINEも同カテゴリの商品だ.
RECEPTORシリーズと違い何よりも魅力的なのは値段だ!
IK MultimediaのSampleTank2.5 SE他がプリインストールされているにもかかわらず3万円台で買えるという素晴らしさ.ただしドングル等を用いたライセンス認証を行わなければ動作しないVSTプラグインは残念ながら使えない.

そして,Openlab社のNekoシリーズは同種カテゴリーのハイエンドモデルと言えるスペックだ.何よりも魅力は鍵盤とモニターそしてキーボードにコントロールとまさに必要なものが全て1台に収まっている素晴らしさ.ただし値段が相当高い.

と,いうことであたかも最強シンセのごとく紹介してしまったわけだが,現状で販売されているシンセサイザーや今後発売されるシンセサイザーが負い目を感じるかというとそういうわけではない.

専用ハードには専用ハードの良さがある.
"RECEPTOR"はあくまでVSTありきでありVSTを必要としないユーザーにとっては何の御利益もないわけだし,専用ハードのように1個体としてのバランスを保った飽和しない音色感は多様なソフトをインストールして構成するマシンには絶対に得ることはできない.
また,専用ハードであるシンセサイザーはソフトシンセのように自由に大容量期用媒体へ大量のサンプルを確保するということは出来ないわけだが,その分DSPなどがもたらすダイレクトなプレイヤビリティーが非常に高い.

ちなみに,このカテゴリーは決して新しいものではない.
旧モデルが存在することももちろんだが,
実際,Arturia社のOriginシリーズはハード内部で各種シンセエミュレーションを立ち上げて思いのままに立ち上げてオリジナルシンセを創りだす仕組みは非常に近いし,インド発のラップトップシンセサイザーのUse Audio社のPlugiatorも音源を購入しオリジナルシンセをつくるという意味ではコンセプトが近い.
専用音源を購入し,自分の好きなシンセプラグインを加えるという法則は
90年終わりの頃に各社がハード基板で作成していたプラグインシステムというかたちで存在したわけで"RECEPTOR"はまさにそのシステムがメーカーという枠組みを超え,自由度が増した現代版といえる.


結論からいえば今までの楽器に新しいカテゴリーが増えると考えてよいのではないだろうか.

ステージピアノは必要な音色を直ぐ呼び出せるかわりに音を加工する自由度が低い.
PCM系シンセサイザーはプリセットが膨大で,急な音色要り用時には,ある程度音色を把握しておく必要があるが音を加工するという意味では特化している.
そして今後展開されるであろう次世代シンセサイザー.
プラグインホスト(色々な呼び名がある模様)は独自の音を持っていないためソフトは自分で探しインストールする必要があるわけだが(プリインストールされているものもあるためあけたらすぐに演奏できるものもある)その自由度が音を作り出す無限の可能性を持っているといえよう.

ともあれ,それぞれ長所と短所があるわけで決して最高峰は存在しない.


生産コストが下がり,アップデートもソフトウェアという手軽さから容易に可能.
ただ,メーカーとしてどちらがいいのかは難しい(回路屋の仕事が他シフトするもソフト屋の仕事が増えそう)
ユーザーとしては好きな鍵盤と好きな音源を手軽に持ち出せるという意味で非常に自由度が高くなったといえるが,この市場が大きく展開するか否かは正直まだ判らない.

メーカーとしても採算をどこで取るのかが難しいし,自分たち独自の"音"はもちろん楽器の"売り"が不鮮明になる危険性がある.
また,ユーザー側としてもVSTプラグインという特性を知る必要があるし,どのソフトシンセがどのような特徴を持っているのかを熟知して初めてインストールをして使用できるというある意味ではわずらわしさが付きまとう.


遅かれ早かれ何れVSTをハードウェアに用いたハイブリットは必ず投入されることになる.
DSPの中で複数のプラグインエフェクトが動作するZoomのマルチストンプエフェクターやレコーディング補助エフェクトをDSPで実現しているMR816などのオーディオインターフェースが市場に受け入れられ,その技術をエンドユーザーが称賛している通り,ユーザーは手軽にソフトエミュレートを用いたシステムの自由度と手軽さを間違いなく求めているからだ.

将来的にどのような形になるかは判らないが,まずは通常のPCMシンセにモデリング音源が自由に組み替え出来る仕組みは市場のハイエンドクラスに投入されるのではないかと想像出来るわけだが(既に各社,独自の音源を差し替えられるという近い仕組みを導入したシンセがある),それが"VST"というソフトの受け皿へと変更されていくか否かは現段階では予測不能.
ただ,技術的実現が可能なことは"RECEPTOR"がものがったっていることは言うまでもない.

自由度が高い分,玄人向けかつマニアックな機器になってしまったこの手の機器は市場で受け入れられるのか,またソフトウェアを受ける箱をつくる羽目になるかもしれないメーカー各社がこの大人の事情をどうとらえるかが今後のシンセ業界の注目点と言えるのではないかと私は思う.





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最終更新日  August 2, 2013 10:34:51 PM
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