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December 21, 2013
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カテゴリ: コラム
第二章
調整部分

入力部分ではインピーダンスマッチングやレベル調節など音声信号に密着した非常にアカデミックな内容となってしまった.
すべてを理解しているあなたは,ほとんどミキサーを的確に扱えるといっても過言ではないかもしれない.
本章ではより音楽的な部分についての説明をしていきたいと思う.

コントロール部分の構成
・HPF: ハイパスフィルター (またはローカット)80Hz以下や120Hz以下など音声の低帯域をカットするためのスイッチ.ボーカルマイクなど低音が溜まって悪さをする箇所は初めからカットしておける.
・EQ:アナログであれば2~4バンド程度の周波数固定タイプ イコライザー がついている.ディジタルだと周波数などが細かく決められるパラメトリック仕様になっていることが多い.
・PAN: パンニング とは右にあるのか左にあるのか等,音の定位を決めるもの.出力がステレオでないミキサーの場合は省かれている.
ヴォリューム とはチャンネルごとの音量を決める部分.ディジタルの一部にはムービングフェーダーと呼ばれるモーターで設定位置に自動移動できるものもある.コンパクトな簡易ミキサーではツマミで代用される.
・EFX,BUS,AUX,INSERT: エフェクト レベル,バスレベル, オグジュアリ アウトそしてインサーション I/O と各種入出力へ送るレベル設定箇所.
ミキサーの取扱説明書には必ず ブロックダイヤグラム などがついているため,各種つまみは信号がどの状態で扱うものか一目できる.それに基づいて各レベルをコントロールする.エフェクトや別ミックスのモニタースピーカなどを使用しないのであればもちろんレベル調節の必要はない


簡単な注釈とともに各項目を列挙したわけだが,モデルによってはもっと複雑なものもあるかもしれない(最近は入力端にコンプレッサ等が入っているモデルもあるため)
いずれも,やみくもにいじるのではなく理屈がある程度あったうえで扱わないと出音が崩壊するので気を付けて欲しい.
この調節は理論こそあるものの,その先は音場によってケースバイケースになるため,自分の耳だけが頼りである.

ヘッドフォンでしっかり作りこんでも会場でなっている他のインストアンプやモニタースピーカなどによっても出かたは変わるし,ハコ鳴りによって反響感も全然変わる.もっと言えば集客が多いと布に音が吸収されてしまい周波数成分や反響成分が全く異なってしまうこともある.

逆に言うとここに書けることでは解決しないという何とも企画潰しな話なのだが,一応は理論的に解釈できる部分の説明は可能なのでそれらを紹介していきたいと思う.


HPFとEQ
ローディーさんが"She-Ha-Har,Check-One-Two"とマイクを持って発音しながらモニタースピーカのまわりをまわっている様子を見たことがあるだろうか?
これは音の鳴り,すなわち音場の周波数特性を調べているのである.
また,一度収音された音が各スピーカから鳴りスピーカからの音までもがマイクで収録されて発生してしまうハウリングを防ぐためにも行っている.

熟練のローディーさんになるとこのテスト発音で「1.2kあたりを-2dB」とか指示が出せるのだ.


基本的に人の声平均で300~800Hz程度(P-Pでは100~1.6k位まで)でありそれ以下またはそれ以上の周波数は逆に言うと不要成分となる.
ただし,高域には倍音成分が発生していることがあり削りすぎると音が細くなりすぎてしまうため全カットはしない.
逆に低域というのは非常に音場の中で溜まる(周波数成分が多く出る)ことがあるのである.
故に,マイクからの収録音で,特に低域があまり出すぎてほしくないヴォーカルパートなどでは最初から80Hzや120Hz以下をカットすることが一般的である.

もちろん,音場に合わせて設定するためハイパスを使用しないこともまれにある.
これ自体は出音を聞いて判断する必要があるため経験則が必須である.
最近は簡易の音声帯域専用のスペクトラムアナライザも存在し,ある程度は目で周波数特性を追うことができるようになったが,出音を確認せずに調節するのは味見をしないで料理を作ることと同等である.


ハイパスフィルターではLowを右肩上がりにカット(ローシェルビング等という)するわけだが,各種EQは極所的にコントロールするために使用する.
機種によって設定されている周波数は異なるが3バンド程度であれば一般的にHi→10kHz(ハイシェルビング),Mid→2.5kHz(ピーキング※テント型に変化),Low→100Hz(ローシェルビング)あたりで設定されていることが多い.

基本的にはやみくもにいじらないことが重要で聴感上でも視感上でもできる限り均一になるように"削っていく"のが基本である.
尚,マイクのハウリングをこのEQで押さえることもできるが,周波数を変えられない固定EQだと非常に難しい.この調節にはトータルEQでもできるためフラットな音作り用と割り切って使うのもありかもしれない(ただし,トータルEQは出音に影響を与えるためできる限り各チャンネル毎に解消しておくことが望ましい)
いずれにしても機材によってケースバイケースでの対応が迫られると思う.

ディジタルミキサーで各チャンネル毎にパラメトリックEQがあったりアナログでも4-5ポジションEQでピーキングの周波数が移動できるなどの自由度が高い場合はそこで細かくエディットしてしまうのがベストである.

このように,ミキシングコンソール内でのEQは外的要因などを鎮圧させたりするものであり,楽器個々の音質調整用では決してない(むしろ,ミキサーに入ってきた音を大きくコントロールすることは極めて難しい)
よくある『ベースアンプのダイレクトをミキサーに送ってもらったらブーミー(ブースとしすぎ)で困った』とかをミキサーでコントロールするのが極めて難しいことが理解できるだろうか?
基本的にDIで生音を卓に送りたがるPAはこの辺を懸念してのことであることをご承知いただきたい.
どうしても,アンプサウンドを卓に送りたいのであれば最低限ミックスで困ることのない出音での提供を心掛けられる奏者にならなければならないことになるが不特定多数の奏者が混在する対バンでは難しいことである.

入力から出力に至るまで頭を巡らせてどこで調節するのが最適かを把握するためにも調整部分ではあくまでフラットからのコントロールを心掛けよう.

Pan
パンニングのことで音の定位を決めるための部分である.
5.1chなどになると複雑だが2chであれば基本はL~Rの間で決めるものである.
pan

上記は一例である.
会場では客席にインストスピーカが向いている等,メインスピーカ以外での発音があったりするため,つまみの位置がズバリ会場での鳴り位置になるとは限らない.
左右バランスが悪ければ時には左にいるギターの1人を右に移すこともあるため見た目に翻弄されない出音重視のセッティングが基本である.

昔の音源ではJazzバーの雰囲気を出すためにドラムがやや右,ピアノがやや左等の意図的なパンニングもある.
あくまでケースバイケースなので違和感になり過ぎないレベルで会場の位置関係に合わせるというのももちろんいいだろう.

また,たとえば中央にばかり集中してしまうとこじんまりしてしまったりするので,広がりを持たせるために大きくパンニングすることもある.
これも,ケースバイケースである.

尚,パンというのは基本的に左右の音量バランスで作り上げるものである.
故に中央なら50/50(音量五分で左右どちらからも鳴る状態)左全開なら左100/右0,右全開なら左0/右100といった感じである.

空間エフェクトとしてのDeleyを応用するなら原音を70/30の位置にしてインサートのDeleyを30/70にすると左右バランスを崩さずに原音を左にずらすことができるという手法が使える.
このようにエフェクトを考慮したパンニングも技の一つである.


Volume
各チャンネルの音量レベルを決める箇所である.コンパクトなものであればツマミタイプ,大型のものであればフェーダータイプが採用されている.また,ディジタルミキサーの一部にはムービングフェーダーと呼ばれるモーターが仕込まれているものもある(おそらく初-中級者のほとんどはこれにあこがれるのではないかと思うが実際使ってみるとアクセススピードが上がりはするが絶対必要かどうかはチャンネル数などによると私は思ってしまう)

出音のレベル調整なので一番わかりやすい個所ではある.
ただ,初心者にありがちなのは聞こえない音をどんどん上げてしまうということ.
基本的にEQでも話した通りレベルは上げる方向に考えるのではなく下げる方向に考えるのが鉄則である.
また,音量に限ってはいきなり0db付近に持ってくると何かトラブルがあったとき(たとえばマイクが落下したとかケーブルが抜けたとか)爆音が出かねない.
未使用チャンネルは-∞(音量ゼロ)またはMUTEボタンがあるモデルではMUTEしておく必要がある.

小会場でよくあるのは外音にほとんど反映させていないドラムが爆音過ぎてヴォーカルやキーボードが隠れてしまうという現象.
基本的にはPAではどうすることもできなくなってしまうので周りの音量を無理にあげるのではなく時には奏者に遠慮してもらうよう配慮するのもPAの仕事であることを覚えておいてほしい(ほとんど嫌われ役ではある)

なお,音量ではどうしても解決できない問題がある.
それはどう頑張っても楽器毎に音量差があるということから生まれる埋もれである.
ヴォーカルマイクはどんなに頑張っても人の声が出せる範囲が限界でありギターアンプのように出力の限り上げられるわけではない.
同じマイクで収音すればフェーダーがVocal→+12dB,Gtr→-30dBでもフラットなバランスにならないかもしれない.
これには限界があるということを覚えておいてほしい.

そしてそんなときに役に立つのが前述で出てきたEQである.
EQとは特定周波数を持ち上げたり削ったりするいわばフィルターみたいなものである.
と,いうことは特徴付けをコントロールする応用が可能なのだ.

たとえばギターもヴォーカルも500Hzあたりが溜まってしまってどうしてもVocalが引っ込んでしまうならギターの500Hz周辺を削りだし,Vocalの500Hzあたりを少し持ち上げてあげればいい.
たったそれだけでヴォリューム据え置きでも音が前に出てくるのだ.

ヴォリュームコントロールだけではなくEQを用いた複合技で解決できるようになれば
調整部分のプロといっても過言ではないだろう.


後半へ続く~





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最終更新日  December 24, 2013 12:15:38 AM
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