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外の冷気を纏ってドアを開けると温かな声が出迎える。
「お帰り」
ブーツを脱いで手にしていた荷物は投げ出し、声の主へと急行し、作りかけの食材に手を伸ばすと、口に放り込み、腰に手を回し抱きつき、耳にささやき掛ける。
「ただいま」
「冷たい、座れよ、今、温まるもの出すから」
「俺的にはこのままの方が...」
腰に回されていたてが尻に触れ、撫で回す。
「座れと言って言っているんだ、それに邪魔、お前は痴漢か」
体を反転させ、手にしていた包丁を目の前にかざすと強制的に座らせる。
「朔耶くん、何を出してくれるのかな?」
背を向けてしまった藤野に恐る恐る尋ねるが、返事は返らない、黙々と何かの準備をしている姿をニコニコしながら見詰めて思う。昨年までは、こんな新婚の様な日が来ようとは思いもしなった、ただ、変わらないのは目の前の恋人が幸せである事、それだけが自分の願い。
「気持ち悪いよ、倉本、なににやけてるの?」
「酷いなぁ、さっくん、ひとが幸せ噛み締めてるって言うのに」
「そう...そうなんだ、どうぞ、冷めない内に特製スープ温まるよ、これなに?」
差し出された紙袋、先ほど投げ出したものを拾って渡してくれた物を手にするとニットと笑い、封を開けて見せる。
「店のね、参考にしようかなって思って雑貨だとかディスプレイの本、来年から本格的に動く訳だしね、まずはそこからってことで、あとは、コーヒーの専門書かな」
「そっか、動き出すんだ、会社辞めたのも、バイト始めるのも、店のためなんだね」
寂しそうな顔を引き寄せてキスをする。
「そんな、顔するなって、会社で逢えないのは寂しいが、いつでもここで逢える、お前ここに越してこればいいのに」
「いいからスープ飲んで、感想聞かせて」
はぐらかされる引越しの話、藤野の中でまだ何かが吹っ切れないものでも有るのだろうとこの場で話はおさめ、言葉通りにスープを口にする。煮込まれた具材の味が舌を喜ばせ、スープがのどを通ると、体の芯から温まる。
「美味い、温まるよ」
飲み込んだ瞬間、口から飛び出した感想に、笑顔が返され、幸せを実感する。
「よかった、自信無かったから、お前のその一言聞きたかったんだ、お前の舌は確かだからな」
もう一度、返された笑顔、抱きしめて押し倒したい衝動を抑える。まだなにか作るのか包丁を握っている。微かな身の危険を感じながら、スープを口にして、楽しそうな、藤野を見詰める。
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