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カテゴリ: 虚  第一章
神なんて、信じていない。

・・・・・咲いたばかりの桜を眺める。
何故、信じることなどできるのか。
・・・・・ギラギラと一年の内、一番地上に近い太陽が身体を灼く。
信じている、など信じない。
・・・・・色が判るほど強い金木犀の花が香る。
どんなに悲鳴を上げ続けても(ドンナニ欲シ続ケテモ)、
どんなに血を流しても(心ガ壊レルホド願イ続ケテモ)、

救いの手は現れない(狂夢ハ、終ワラナイ)。
・・・・・一片の穢れもない綺麗な雪が、指先から身体を犯していく。
春も夏も秋も冬も、俺は何もいらなかった。
“唯一つ”がこの胸を灼くから(それが何かは思い出せない)。
“此れ”があるから生きていける。
他には何も、いらなかった。


稲光の様な人だと思った。
あの人の気は、とても濃厚なのに何処か冷んやりとしていて・・・・・澱みが無い。
あの人の瞳は、痺れる様な黄金の炎光を宿し、向けられる感情の何もかもを照り返すのに何処か熱を孕んでいて・・・・・他意が無い。
ああ、と・・・・・。
何故こんな人が居るのか、と神を呪った。

可哀相な・・・・・、淋しい人だ。
血反吐を吐き、途方も無い孤独にその身を震わせながらも一人立ち続け、自ら背後を振り向くこともできない・・・・・・哀れな、・・・・・美しい人だ。
その唇で語られる言葉に、いつも自分ですら気づいていなかった卑屈で醜悪な心の内を抉られた。
殺意を覚えたのは一度や二度では足りない。
憎んでいた、と言っても良い。

憎しみに近い愛、では無い。
そんな物は存在しない。
憎んでいた(憎んでいる)。
愛していた(愛している)。
同じ密度で、強さであの人を想う。
どちらか一つでも欠けていたなら、此れ程までにあの人に執着はしなかった。
自分の命より大切な人だ。
あの人が私の“唯一つ”だった。





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最終更新日  2005年09月10日 18時02分06秒
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