オランダ曼荼羅

オランダ曼荼羅

2007/01/17
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開いていた玄関に入り“おーばちゃん”と呼ぶと、
コタツの向こうから
“あら、いやだ。上がって上がって”と元気な声がした。

コタツに入るとお茶とせんべいとみかんが出た。

“今日はねー。おしめりだったんでグランドゴルフいかなかったんさ。
でもしーちゃんはいったんだって。92歳なのになーんでもひとりでできてさー、
あたしよりゴルフうまいんだからいやんなっちゃう。”

“あたしゃーね、休んでうた(短歌)作ってたんさ。


“へー、すごいじゃない、おばちゃん!”

おばちゃんはしごく満足そうだった。

根っからほがらかな人たちってやっぱりいる。
数年前夫を亡くし一人住まいをするおばちゃんはそんな人たちの一人かもしれない。


“とーちゃんはさ。診療所で肺に影と菌が出たってんで山の療養所に運ばれたんだよ。
そこに入れられてずーっといたんさ。
若ーきちげーみたいなのが同じ部屋に入れられててさー。とーちゃんも気が短かったもんでよくけんかになって。そいつが椅子を振り上げて、とーちゃんにぶちつけそうになったんだんだよ、まったくー。
んでまー、だから元気でやってたんさ。
でもさー、あんなとこ入れられなくてもよかったんだ。
先生だって言ってたんだよ、菌は出てないんだ、ってさ。
かわいそうになー。”


逝っちゃったんさー。”

おばちゃんは会うたびにこのはなしをしてくれる。
訪れるひとに訪れた先でいつもこのはなしをしてくれる。

そしておばちゃんは今日も鼻に流れた涙をすすった。


そんなおばちゃんだからまた訪れたくなる。







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Last updated  2007/01/18 01:22:55 AM
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