aituに乾杯

aituに乾杯

2018.10.16
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カテゴリ: おもひでぽろぽろ


どこかで見られているような気がする

近づけば鳴きやみ
そのまま足をとどめていると静かだ
どこかにいったのだろうと
遠のけばまたうしろで鳴き始める
夏の蝉のようなあつかましさはない

秋の虫

娘が小学生のころ
残業を終えて仕事から帰ると
玄関に娘が虫かごを持って立っていた
明日学校に虫を持って行かなければならないので
捕ってきてほしいと言う
昼間お母さんと捕りに行ったけれど
一匹も捕れなかったらしい

「ええーっ!」と驚いたけれど
半分泣きそうな娘の顔に仕方なく
そのまま虫かごを持って一人
家の近くの公園に行った
こんな夜中に虫なんか捕れるわけないやろと思いながら
街灯の木の下の虫の声をたよりに探すと
木の根っこの土の所で一匹のコオロギが鳴いていた
網なんか持ってこなかったので
そっと近づいて手をかざしてみても
コオロギは逃げなかった
サッと手をかぶして傷付けないように両手で
包み込むように捕まえた
なんだか不思議な気がした
コオロギは初めから逃げるそぶりは見せなかったような気がする
簡単に手の中に入ってきた
虫かごに入れて家に持って帰ると
それはそれは娘たちの喜びようといったらなかった
ぴょんぴょん飛び跳ねて
ありがとうと何度も抱きついてきた

今に思うと少し弱っていたのだろうか
でも虫かごの中では元気に動き回っていた
そんなことはそれまでもそれからもなかった

不思議な秋の夜の出来事だった
その夜の晩酌の旨かったことは言うまでもない 






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最終更新日  2018.10.16 06:00:09
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