書くことの意味

書くことの意味

2004年05月22日
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 昨日、仕事の締め切りを迎えた。借金取りから解放されたような気分。ほぼ2週間、終電帰りの日が続いて、くたびれた。無事に終わってほっとした。

 今日、父から眼の手術が成功したというメールが届く。文章が珍しく、はずんでいた。「医学の素晴らしさに感動しています」・・これで、父の抱えている漠然とした不安が拭われることを願う。

 もうひとつ、今日は嬉しいことが重なった。招待券をもらったからと友人に誘われて、新日本フィルハーモニーの定期演奏会に行った。会場は東京・錦糸町のすみだトリフォニーホール。ホールの音響が見事で、楽器の音が極めてクリアに聴こえる。この日のメーンプログラムは「ショスタコーヴィチの歌劇「カテリーナ・イズマイロヴァ」より 5つの楽章による交響曲」。作曲家アスネルが編曲したのは1994年ということで、わたしも、今日までその存在を知らなかった。どきどきしながら聴いたが、団員の方々が、非常に神経の行き届いた演奏を披露してくれて、50分間の演奏時間があっという間に過ぎた。丹念に練習を重ねたことが伺える、緻密なパフォーマンス。まるで競馬で大穴を引き当てたような(これでは新日本フィルに失礼だろうか)心持ちで、興奮してしまった。こういう演奏を聴くと、とても励みになるなァ・・。

 プログラムの前半では、ヴァイオリニストの諏訪内晶子さんが登場。バルトークのヴァイオリン協奏曲第一番が演奏された。彼女は、1714年製作のストラディヴァリウスを使っている。低音が豊かに広がり、大木に身を委ねたような心地良さがある。思わず「なんて素晴らしい楽器だろう」とうなった。約300年間の間、数々のヴァイオリニスト達が大切に扱ってきたからこそ、この音がある。諏訪内さんの実力は本物だけれど、まだ、この名器を弾きこなす段階までは至っていないのだろう。楽器の器量を必死に追いかけている様子が伝わってきて、痛々しかった。

 わたしたちの一生は数十年間で終わりを遂げる。しかし、時代を超えて受け継がれるものの確かさがある限り、わたしたちは、遥かに充実したものを受け取ることが出来る。ルーベンスの祭壇画にまつわるエピソードを思った。

 ルーベンスの故郷、アントワープ地方は、宗教戦争で致命的な痛手を被った。ひとびとの荒廃した気持ちを鎮めるため、各地で教会が造られることになり、信仰の核となる祭壇画が必要になって、当時、イタリアへ絵画の修行に出かけていたルーベンスが故郷へ呼び戻されたのである。「生きるということは、魂の巡礼である。自分の使命は、祭壇画を描くことによって、故郷のひとびとに再び安寧をもたらすことだ」。彼はそうつぶやいて、製作に打ち込んだという。

 1800年代になって、ナポレオンがアントワープ地方に攻め込み、教会を破壊して、ルーベンスの祭壇画を戦利品としてフランスに持ち去ってしまった。ルーブル美術館に納められた一連の絵画の返還を求めて、粘り強い交渉が続けられた。漸く絵画が返還されたとき、アントワープのひとびとは歓喜の中で「我々は永遠にこの日を忘れまい」と誓い合ったという。

 この世の中で、取り返しのつかないものは時間である。歴史の中で生み出された傑作は、長い時を経ることでさらに輝きを増す。私たちが生きられる期間はたった数十年だけれど、長い時間によって磨かれた数多くの傑作に触れることによって、人生は遥かに充実したものとなりえるのだ。

 お金でカタがつくものは、それだけの価値しかない。つくづくそう思う。後世のひとびとに引き継がれるような何かを産み出せたらどんなに幸せだろう。







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最終更新日  2004年05月22日 23時11分35秒
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