オバマ政権の危機(5)
BP社が掘削中の深海の油田掘削施設は、「ディープウォーター・ホライズン」と呼ばれていました。この施設の事故はなぜ起きたのでしょうか。事故の発生は防がなかったのでしょうか。そして、事故の封じ込めはなぜ出来なかったのでしょうか。
答えのある問も、ない問も織り交ぜると、こんな疑問が湧いてきます。そうした問題に入る以前に、深海油田の掘削を担当したBP社の危機管理が万全であったか否かが問題になります。
アメリカでは、企業が起した事故に対して、米政府や州政府の定める基準に従って行動した結果の事故に対しては、損害賠償を請求できる上限が、定められています。そこから先の損害については、政府や州の規制の手落ちとして国や自治体が負担するのです。
今回の事故はどうでしょうか。BP社の内部から、特に技術系の社員から、経営幹部の責任を問う内部告発が、ほぼ連日のように寄せられているのです。連日1面トップを、事故の記事が占めていると指摘しましたが、昨今は内部告発合戦の様相すら呈しています。
ここにTV局やラジオ局、さらには地方紙まで加わっての報道合戦が続いているのです。議会もこうした記事を集め、関係者から事情も聞いている模様です。以下に、代表的な告発を2,3記します。
下院のエネルギー・商業委員会が6月14日に発表したニュースは衝撃的でした。爆発事故の6日前、4月14日にBP社のエンジニアが、社内の友人に宛てた電子メールで、「この油田は悪夢だ。近く大きな事故が起きても、何の不思議もない」と記していたことを、公表したのです。このメールが明らかにしたことは、経費削減の目的で、安全性を犠牲にする決定が、いくつも行なわれていたという事実です。
昨年のことです。BP社のエンジニア、ブリアン・モレル氏は、万一の事故を憂慮して、経営幹部に対して、「ガスがパイプから吹き上がり、場合によっては爆発する事態を防ぐために、油井の周囲に「ライナー」と呼ばれる、被覆をするよう求める提案をしました。
4月上旬に、モレル氏が指摘したようなガスの噴出があり、掘削施設での作業が一時的に中止される事態が起きました。それでもBP社の経営陣は、ライナーの設置に必要な7百万ドル~1千万ドルの追加経費の支出を惜しんで、ライナーを設置しない選択をしていました。
他方、油井縦坑のセメント工事を担当していたハリバートン社(米国の会社です)は、油井の中央に通す鋼管の位置を決めるための「センタリング装置」を、21機使う必要があると、BP社に提案していました。鋼管の位置が中央からずれると、セメントの硬化速度が場所によって異なり、隙間や溝が出来るために、構造が脆くなって、失敗する可能性が高くなるからです。
しかし、BP社は、ハリバートン社の提案を無視し、センタリング装置は6機しか使わなかったのです。掘削施設に対する、4月中旬の報告書には、「セメント工事が成功したとは考え難い」と記されています。
しかし、ここでもBP社の経営幹部は、なお工期の短縮を強行しました。あろうことか、セメントが確実に固まっているかどうかを、1日かけて評価する「セメントボンド検層」の実施を拒否したのです。検査と評価のために「ディープウォーター・ホライズン」に派遣された作業員は、作業することなく追い返されたのです。
内部告発は、なお続きます。 続く
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