オトコの育児ライフ  ~毎日を楽しく~

『最も長い1日』


『最も長い1日』

 入院2日目の月曜日。

 僕は朝から会社に行った。
 仕事をしながら、かかってくるかもしれない電話を待った。
 「仕事をしながら」
 と言っても、その日なにをしたか覚えていない。

 今日は仕事など手につかないのだ。
 ハッキリ言ってしまおう。

   (もうすぐ子供が産まれるかもしれないんだ!
    仕事がどうした!)

 と、心の中で一人叫んでいた。

 結局その日は定時で退社したが、
 病院からの電話は無かった。

 夜になっても連絡は無かった。

 彼女は病室から陣痛室に移っており、
 連絡をとる術もない。

  (病院の産婦人科に電話して状況を聞いてみよう。)
  (いや、病院に行って直に聞こう。)
  (この時間、まだ産まれてないのに入れてもらえるのか?)

 TVドラマで観たことのある
 「部屋の中を行ったり来たり、そわそわと歩き回る」状態になっていた。

 情けない話だが、こんな時どうしていいかわからない。

 そんな中、
 9時過ぎに電話が鳴った。

 病院の先生からだった。

    「まだ時間がかかりそうなんですが、、ちょっと問題が、、。」

 一瞬で身体中が’ぞわ~っ’とした。
 血の気がひいて、心臓の鼓動が早くなるのが自分でわかった。

 先生の説明はこうだった。

   今日の朝から陣痛室に入り促進剤も使って出産を促している。
   やっと数分間隔で陣痛がくるようになったが、
   内診をしてもまだまだ身体の準備が出来ていない。
   破水して約48時間経過しており、
   羊水も減っているし、奥さんの体力もかなり消耗している。
   母体と胎児の安全の為にも、
   なんらかの決断をする方が良いかもしれない状況になってきた。

 電話の奥で、彼女の声がかすかに聞こえた。

 電話を代わってもらうと、
 こっちが「もしもし」と言う前に彼女はしゃべり始めた。

    「もう、限界、、、。
     いいよね。。もう切ってもいいよね。。。
     私、頑張ったでしょ?・・もう無理・・・もう無理・・」

 正直、口からすぐに言葉が出なかった。

 僕は離れた場所でいつも通りの身体で、
 TVを観ることも出来るし、ご飯を食べることも出来る。

 そんな僕がここから、

    「がんばれ。」
    「大丈夫だよ。」

 と言っても、空々しいだけだ。

 彼女は何時間も続く陣痛の痛みに冷静さを欠いていた。

 また先生に電話が代わった。

   「お聞きのように、
    奥さんもそうとう疲れていて、
    でも、切る(帝王切開)というと、それは手術なわけです。
    じゃぁ今すぐやりましょう。ということは出来ません。
    こんな時間に急ですけど、
    今から病院に来ていただく事は出来ますか?」

 とおっしゃった。

   「すぐ行きます。30分以内に行きます。」

 と即答した。

  「来ることは出来ますか?」
 どころか、
 こちらから
  「行ってもいいですか?」
 と言いたいくらいだ。

 着替えもそこそこにすぐに家を出た。


     そしてそのまま僕は病院で朝を迎えることになる。



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