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2021.02.21
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カテゴリ: 心暖物語
​ NHKで放映されている『​​ 6畳間のピアノマン ​ ​』、いいですね。
構成がよく練られている。​ ビリジョの歌声 ​も懐かしい。
でも、今日は場に不似合いな奏者の物語。
例えば、​ スカパラと共演する志村バカ殿様 ​のような。

**リトルピアニスト**

最近、私はピアノを 泣 かせる店に御執心である。
泣かせるピアノを聞かせるのではない。
ピアノそのものが 泣 いているのだ。
弾いているのは、20代の女である。

聞くと、音大の学生でアルバイトに来ているという。
若いのに、よほどの人生経験を 積んだように思える。
私は音楽を学術的に何ら評価できないが、
そのピアノは、まるでグラスの中の氷のように、私の魂を直接揺さぶった。

私は、いつものように一番奥まったデーブルに陣取った。
いつものようにジョニ黒を舐めながら、 ピアニストの出番を待った。
フロアに流れるジャズの音楽がふっと消えると、
ピアノの上にスポットライトがともる。

この席からはピアニストは見えない。
グランドピアノの陰に隠れているのだ。
私はピアニストを見に来ているのではない。
ピアノが 泣 くのを聞きにきているのだ。

ピアノの音が転がり出した。
「あれ」
いつもと違う。今日のピアノは 踊っていた。
子供っぽい踊りである。あまりにもこの場に似つかわしい。

フロアのここかしこで、けげんそうな顔がもたげた。
回りの人達も同じように感じたようだ。
2曲目が転がり出した。 今度は遊び出した。やはり幼い子供のように。
音に反応したジョニ黒も、私の舌の上で暴れている。

私はバーテンダーをつかまえた。
「今日のピアニストはいつもの人なの」
立っている彼にはピアニストが見える。
「ああ」

彼はそう言った後、頭を巡らせた。
その頭はカウンター席で止まった。
「あのカウンターでお酒を飲んでいるのがいつものピアニストです。
 今、弾いているのは彼女の妹なんですよ」

そう言うと、それ以上は何も言うことはないとばかりに、
きびすを返して行ってしまった。
私はカウンター席を見た。
白いドレスを身にまとった女が、琥珀色をしきりに体内に流し込んでいた。

ピアノには背を向けている。妹の弾く姿を見向きもしない。
女の背中は泣いていた。
2曲目が終わると、ピアノの陰から赤い服の少女が現れ、
カウンター席の女に近づいた。

10才そこそこにみえる。
少女は2言3言白いドレスの女に声をかけると、軽やかにフロアを後にした。
明るさは全て妹に手渡した女は、ピアノの陰に入っていった。
やがて、ピアノが 泣 きだした。私はほっとした。

舌先のアルコールがまろやかになった。ジョニ黒には泣くピアノが似合う。



輸入盤 BILLY JOEL / PIANO MAN (LTD) [LP] ​

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最終更新日  2021.02.21 09:33:42
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