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2021.02.25
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カテゴリ: 心暖物語
​ 社史 ​を見ると、1899年鳥井商店としてスタート。
1907年に『赤玉ポートワイン』を発売するとともに、
日本で初めてセミヌードのポスターを作った。
これは、NHKのドラマ『まっさん』でも示されていました。

ポスターのモデルとなった方は、松島栄美子さん
『まっさん』では、 ​ 柳ゆり菜さんが演じている。
​
松島栄美子 ​のWikiの記事を読むと、彼女の人生は波乱万丈、小説になる。​
その中で、このポスターは重要なカギになる。

2日間かけて様々なポーズを写真館で撮影。
1年かけて画像処理の技術を磨き、ポスターが完成する。
1923年、市中に掲載されると、関東大震災が発生した。
1939年には世界大戦が勃発。何もかもが焼け野原になった。

鳥井商店は、 1921年に寿屋に改名。
戦後、寿屋が美術館を立ち上げ、問題のポスターを探したところ、
九州の酒屋で発見、サントリー美術館に収蔵される。
その後、そのポスターがあるデパートで展示された時である。事件が起きた。

「これ私の母ですよ」
松島栄美子の息子さんが告げた。
そこから、松島栄美子をサントリーの繋がりが再開され、
サントリーから赤玉ポートワインが送られるようになったとか。

事実は小説より奇なりである。
当時のCM(​ 映像版 ​、​ ラジオCM1 ​、​ ラジオCM2 ​)
残っているんだね。また、ユーチューブにあげているんだね。
私のつたない物語は今日はいいかと思うのだが……。


**赤ワインにはローストビーフ**

下町の洋食屋に入った。
酒場を探したのだが見つからなかった。
仕事で歩き回って疲れていた。
とにかく座って、今日はまず、ビールを飲みたかった。

『パリジェンヌ』という小さな看板を潜ると、
西洋風を切り取った世界に紛れ込んだ。
店内に所狭しと、小さなテーブルとイスが並べられている。
私は奥まった1席に落ち着いた。

ビールにとっては失礼だが、とりあえずの生ビールを頼んだ。
ジョッキを2~3度傾けてから、ソーセージの盛り合わせを注文した。
五臓六腑が落ち着いた頃、
私と対角の位置に、小柄な老婦人が座っているのに気付いた。

彼女 と目があった。
彼女 はニコッと笑って、小さく会釈を返してくれた。
私もつられて頷いてしまった。
どうやら、私が店に入ってきた時から見られていたようだ。

私の騒々しさを楽しんでいたのかも知れない。
少し顔が赤面するのを感じた。
のテーブルの上には、お皿が2枚乗っていた。夕食時である。
それが 彼女 の夕食なのであろう。

大きな皿にはローストビーフのスライスが数枚と温野菜がのっている。
小さい皿には、柔らかそうな焼きたてのパンが2個。
決して贅沢な食事とは言えない。
ただ、赤のグラスワインが彩りを添えていた。

彼女 はゆっくりとローストビーフを口に運ぶ。
ソースがしたたり、皿に戻っていく。
受け口の彼女の顔が皿に近づく。
魚が餌に食らいつくように最期の動作がパクッと。

私は自分が口を開けて、
それを眺めていたのに気付いた。
彼女 がこちらをみて、それでまた、 微笑みを送ってきた。
幸せそうな笑顔だ。

私はちょっとどきまぎした。
ときめきに似たものを感じた、 しかし、もちろん恋ではない。
小さいころに性的な事を親に叱られた時の、
恥ずかしさに似たものだった。

ジョッキは空になっていた。
私はいつものように、ジョニ黒をダブルで頼んだ。
ウエイトレスが申し訳なさそうに首を振る。
銘柄までは指定出来ないようだ。

グラスがやってきた。
私はいつのも調子に戻っていく自分に気付いた。
落ち着いてきた。
私はもう一度、 彼女 を見た。

今度はすごく寂しげに見えた。
さっきと同じく微笑んでいるのだが、何故か寂しげに見える。
考えてみれば、どうして一人で食べているのだろう。
寂しさの原因はこれである。

彼女 が
微笑めば微笑むほど、
その微笑みを受けるはずである
家族の存在が気になるのだ。

扉が開いて、
学生風の若者がなだれ込んできた。
騒々しさの中に、私と 彼女 の存在は霞んでいく。
学生たちは、 多くの皿をテーブルに並べた。

スープもそれぞれ別々のものを頼み、 回し飲みしている。
色々な種類のメイン、 色々な種類のデザート、 色々な種類のお酒。
彼女 のテーブルに比べると、
華やかさの違いが歴然である。

私は 彼女 を見ていた。
彼女 は学生たちを見ている。
彼女 は終始、ニコニコしていた。
学生たちの賑やかさを楽しんでいるのだ。

ゆっくりとローストビーフを口に運ぶ。
グラスワインを喉に通す。
パンをちぎって、ローストビーフのソースを少しつけ、口に放り込む。
シンプルな上品さの中で、食事が進んでいった。

学生たちが豪快な食事を終えるころ、
彼女 もまた、最期のソースをパンですくっているところだった。
学生たちが去り、
店内はまた、私と 彼女 の2人になった。

彼女 はそっと、席をたち、
こちらに最期の会釈をすると店を出て行った。
ウィンドウ越しに見える 彼女 の顔は微笑んでいなかった。
彼女 のかえる場所が、さも寂しい所なんだと言わんばかりの表情である。

彼女 にとっ てはここが家族とのふれあいを感じられる場所かもしれない。
そう、この食事の一瞬、ここにいた我々は、 彼女 の家族だったのだ。
とすると、さきほどのときめきは久し振りに会った母親への甘えなのであろうか。
何だか、おふくろの声が聞きたくなり、スマホを手にした。


、「何だい、オレオレ詐欺かい」

​
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最終更新日  2021.02.25 12:54:26
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