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よろけた女がちらっと笑顔を我々に送ってみせたが、
それには答えずおかみさんと話し始めた。
「最期の一段はそんなに高くないのね」
「そうなのよ。どうしたのこんなに遅く」
「ちょっと、ビールだけ頂こうと思って」
私はその言葉に引かれるものがあった。
私の若いころ、若い女だけで酒場に入ってくる人はいなかった。
ましてこんなに遅く、お酒を飲むためだけにやってくる世代ではない。
『ちょっと、ビールだけ頂こうと思って』
何が彼女たちにそう言わせるのであろうか。
すでにお酒は入っているようだ。
顔がほのかにピンク色。とにかく陽気である。
どこで飲んできたのであろうか。
どこかの男
2
人と、2対2の飲み会をしてきて、
その相手が不作であったために口直しにきたのだろうか。
今はそんな時代である。
2人の女の内、もっぱらしゃべっているのは
ずっこけそうになった女である。
ずっこけ娘は、時々こちらに視線を送ってくる。
山幸
、
海幸
の品定めをしているのだろうか。
彼女たちは、流行りのキャミソールを着こなしている。
中年女性が見たら顔を背けてしまいそうなやつだ。
下着素材のミニスカートと、
胸のざっくり開いたブラウス。
ただ、嬉しかったのは、激やせでなく、
2人ともそれなりのボリュームを持っている。
席に座ると、ポンと足をテーブルの外に放り出して組んだ。
その悩ましさに男3人はしばらく眺めてしまった。
美味しい酒である。
肴も上々。
視線だけの会話を楽しみながら、
私は2杯目のロックをダブルでもらった。
女たちのテーブルにビールと刺身の盛り合わせが運ばれてきた。
「これ、私からの」
おかみさんが言う。
「わあー、ありがとう」
かんぱちの一切れを口に運ぶ。
箸使いは申し分ない。
口への運びも優雅だ。
向かえ口をほんの少し。
それに伴って上体がわずかに前に傾き、
胸の谷間が強調された。
視線を我々に送るのも忘れていない。
今度は気のせいか、笑顔の追加もあったようだ。
「こんなに露骨に眺めていていいのかな」
私は思わず声にだしてしまった。
「いいんじゃないですか」
隣に座っている山幸
も同じ体制である。
「彼女たちもそれを望んでいるんですよ」
対面に座る海幸は、
体をよじってみている。
ずっこけ娘も我々を咎めようとしない。
むしろ、喜んでいるようだ。
しかし、
それも5分と持たなかった。
2つのテーブルの視線による会話も跡絶え。
それぞれに盛り上がりをみせた。
30分後、我々は店をでた。
帰り際、ずっこけ娘ともう一度視線が交わった。
女は会釈しようとして、手元の箸を転がしてしまい、
大笑いしている。
それに気を取られた私は、階段の一段目でずっこけてしまった。
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